■進化する「ヘッドアップディスプレイ」
クルマの先進装備として、近年「ヘッドアップディスプレイ」がさまざまな車種に設定されています。
「Head Up Display」の頭文字を取って「HUD(ハッド)」と呼ばれることもありますが、これは視野のなかに情報を表示するシステムのことで、クルマの速度などの車両情報をフロントウインドウや投影板に映し出す装置・機能のことを指します。
【画像】後付けできるヘッドアップディスプレイってどんなもの? どんな風に見えるか写真で確認!
ヘッドアップディスプレイのメリットは最小限の視点の移動で情報を目視できることや、情報表示の焦点を「無限遠」とすることでウインドウの向こうの景色から表示へ、あるいはその逆へと視点を切り替える際にピントを合わせ直す必要がないことです。通常のメーターやナビを見るのに比べ素早く安全、そして疲労も少ないとされています。
もともとは超高速で飛行する戦闘機などを中心に発展した技術で、国産車への搭載は1988年に登場したS13型の日産「シルビア」にオプション設定された「フロントウインドウディスプレイ」が最初。ただ、近未来的と当時話題にはなったものの、表示されるのが速度だけだったこともあり普及には至りませんでした。
トヨタでは1991年発売の初代「クラウン・マジェスタ」が初で、近年ではBMWやマツダ、レクサスを筆頭に多くのメーカーが積極的に採用。ヘッドアップディスプレイを標準搭載する軽自動車も存在するほど浸透してきています。
当初は速度のみだった表示内容もエンジンの回転数や水温などの車両情報が追加され、表示されるスペースも徐々に拡大。現在はナビゲーションや前走車との車間距離、制限速度や標識を読み取って表示するなど多機能なものが増えています。
さらには、フロントウインドウ越しに見える景色に重ねて情報を表示する「AR(拡張現実)ヘッドアップディスプレイ」も登場。たとえばナビゲーションの右左折の案内の矢印を実際の曲がり角に重ねあわせて表示したり、夜間の見えにくい歩行者を目立つようにマーキングしたりなど、先進運転支援システムとの相性の良さから幅広い車種への採用が期待されています。
その先進性や未来感といったメリットがあるヘッドアップディスプレイですが、もちろんデメリットもあり、常に視界に入る表示を煩わしく感じる人もいます。そのため、ほとんどのヘッドアップディスプレイは非表示にすることができたり、表示内容の変更が可能になっています。
また、車体側との連携の必要性から標準装備ないしはメーカーオプションでの設定で、価格も高めだったことも不満点とされていましたが、機能こそ絞られるものの、近年は格安な社外品も販売されるようになり、あらためて注目を集めています。
社外品のヘッドアップディスプレイは、安いものでは2000円程度、高いものは約5万円と価格に大きな幅があります。いったいどのような製品があるのでしょうか。
表示方法は大きく分けると2種類あり、人気なのはメーカー純正と同じフロントウインドウに投影するタイプ。文字や図が明確に見えるようにウインドウの投影される位置にフィルムを貼り、本体はダッシュボードに設置します。
もう一種は、専用の投影板(コンバイナー)に映すタイプで、手軽なことから社外品の主流になっています。
多くは本体と一体で、本体と投影板の距離が最適化されていたり、フロントウインドウのように傾いていないため、表示がハッキリ見やすいというメリットがあります。その一方で、ウインドウタイプに比べ、見るときにしっかりと焦点を合わせる必要があります。
ちなみに、もっとも安い2000円クラスのHUDは本体がなく、投影板とスマホホルダーの組み合わせ。ホルダーに置いたスマホの画面を反射という簡素な仕組みになっており、5万円クラスの高価格なものも投影板+スマホという形式ですが、こちらは本体(投影機)とスマホをワイヤレス接続して、「CarPlay」や「Android Auto」の画面を投影します。
表示方法を問わず、スマホやカーナビを利用しないHUDは、OBD2(車載式故障診断装置)を通じて得た車両情報を表示するものと、GPSから速度を割り出して表示するもの、その両方の機能が備えられているものがあります。
■ヘッドアップディスプレイをDIYで後付け!
社外品のヘッドアップディスプレイは簡単に装着できるというのがセールスポイントのひとつでもあります。今回は大手インターネット通販サイトで「ベストセラー」に選ばれていたヘッドアップディスプレイを購入し、実際に取り付けて使用してみました。
購入価格は約3000円で、表示はフロントウインドウに投影するタイプです。OBD2接続もできますが、OBD2がないクルマ向けにGPS機能も搭載。付属品は、「本体」、「OBD2ケーブル」、「USBケーブル」、「反射フィルム」、「クッション粘着シート」、「取扱説明書」の6つです。
本体と車両のOBD2コネクタをケーブルで繋いで、ダッシュボードの上に本体を設置し、フロントウインドウに反射フィルムを貼るだけ。
OBD2接続は電源供給もされますが、OBD2のないクルマの場合はGPS機能のみで使うことになり、付属のUSBケーブルを使用して電源を確保する必要があります。また、こちらの製品は24Vには対応していないためトラックなどではUSB接続で利用するようにという注意書きが取り扱い説明書に書いてありました。
装着したテスト車両にはOBD2コネクタがあるので、さっそく本体をケーブルで接続して動作確認し、本体をダッシュボードの上に仮で設置、フィルムを貼る位置と見え方のチェックをします。接続自体は本当に簡単ですが、この設置と貼付の位置決めが非常に難しいのです。
ダッシュボードもウインドウも傾いているし湾曲しています。本体を置ける場所も角度も限られ、常識的な位置にフィルムを貼ると、表示がフィルムからはみ出して全然見えなかったり、あるいは本体の光源が直接見えてしまったり。位置だけでなく、本体を留めるクッション粘着シートの位置や厚さも変えるなど試行錯誤が必要でした。
ようやく位置が決まり、ケーブルを外して仮留めから本設置へ。そこで気づいたのが、ケーブルが短いことです。ダッシュボードに通してケーブルを隠すには倍以上の長さが必要で、通販サイトで「こちらを買った方はこちらも買われています」と延長ケーブルがお勧めされていた理由がわかりました。
幸いテスト車両はメーター上部のカバーだけを簡単に外せ、ケーブルを隙間から落としてOBD2コネクタまで最短距離で通すことができました。
取り付けが完了したので実際に使用してみます。取り扱い説明書に従い、最初にOBD2で使うかGPSで使うかのモード選択をします。
今回はOBD2接続なのでそちらをチョイス。GPSモードでは車速、電圧、衛星数が表示され、OBD2モードでは車速、エンジン回転数、水温、電圧、エンジン停止後運転距離が表示されるとのことです。
実際に走って試してみると、夜間はもちろん昼間でもまずまずハッキリと見えるので視認性は問題なし。焦点については、ウインドウ越しの景色と一体とは言わないまでも近いものがあり想像以上に見やかったです。
近ごろ目が衰えてきたという知人にもテストドライブしてもらったところ、「個人差はあるけれど、ピントあわせが楽。高速道路などでずっと外を見ていると視点が固定されて逆にピントがズレてしまうときがあるけど、そんなときピントを合わせ直すのに一度HUDの表示を見てから外を見たほうが速くピントが合うと思う」と使用感を教えてくれました。
不満点は、人によって座高が違うため、見る人によっては表示が見えづらくなってしまうことでしょう。
なお、OBD2は常通の電源のため、たとえ自動パワーオフ機能が付いていてもバッテリーがあがってしまう可能性があり、長く乗らないときは接続を外す必要がある点には注意が必要です。
※ ※ ※
手軽な後付けヘッドアップディスプレイは機能が限定的ではあるものの、未来感を体験できるという意味では面白い商品です。
将来的にヘッドアップディスプレイはボタンやスイッチ、タッチパネルなども映像化されたり、ジェスチャーで操作できるようになるともいわれており、今後の進化が楽しみです。
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みんなのコメント
信号見ろ
スマホいじるな
運転に集中しろ
車検NGでプレートタイプに変更されたんよね
今はそこそこの車なら標準装備だから
後付け感なくなるのは良いね