■全長2.7m! スズキの「めちゃ小さいクルマ」が凄い!
スズキといえば、どちらかと言えば「小さなクルマ」を得意とするイメージの強いブランドで、実際に1979年から販売され続けている軽自動車「アルト」や、スポーティな走りと経済性の高さで人気のコンパクトカー「スイフト」など、小柄なモデルを数多くラインナップしています。
しかし、そのイメージすら上回るほどの「極めて小さすぎるクルマ」を過去に展開していたことがありました。
【画像】「えっ…!」 これがスズキの考えた「超極小クルマ」です!(20枚)
そのクルマの全長はわずか2735mm。ホイールベースも1800mmと極端に短く、一般的な軽自動車の全長である“3395mm”と比較すれば、いかに短いクルマであることが分かると思います。
同車は、この極小ボディに大人2名が乗車できる割り切った設計を採用したことから、車名を「ツイン」と定められました。
通常の軽自動車は、規格に収まるギリギリのサイズで設計することで、可能な限り広い室内空間を確保しようとしますが、スズキはそのような発想をあえて転換。
役割をシティコミューターに絞ったツインでは、リアシートや荷室などのスペースを大幅にカットし、そのぶん自由で大胆に丸い斬新なデザインを採用したほか、全長を縮めることで最小回転半径3.6mという驚異的な小回り性能を達成しました。
くわえてボディサイズの小ささは車重の軽さにも直結し、シンプルなベースグレード「ガソリンA(FF、5MT)」では実に“570kg”という驚きの軽量ボディも実現。
これは燃費の良さにも繋がり、先述のグレードは複雑なハイブリッドシステムなどを搭載しないにも関わらず、26km/Lという当時としては目を見張る低燃費性能も達成しています。
そんなツインの車両価格は49万円から139万円。(当時の表記に習い、消費税抜価格を記載)
スズキの市販車史上初となるハイブリッドシステムを搭載した上位グレードも存在したため、ベースグレードと最上級グレードとの価格の幅は約3倍と大きめですが、上記のベースグレードにおいては50万円を切ることから、発売当時はクルマ好きも巻き込み大きな話題となりました。
このように、小さく軽量なボディで燃費も良く、さらに5速MTを駆使すればキビキビ走ることも可能と、魅力的な特徴を持つツインの発売後の状況ですが、話題の大きさや安価なプライスにも関わらず販売は低迷。
無駄を省き機能を割り切るという発想は、環境意識の高まる現代を先取りした画期的なアイデアでしたが、なんと最安・最軽量のベースグレードは割り切りすぎたため「エアコン」も「パワーステアリング」も搭載されていませんでした。
一方、機能を満載しハイブリッドシステムまで搭載した上級仕様では、追加されるバッテリーがリチウムではなく「鉛バッテリー」だったことで出力の割に車重が増加。
さらに、ただでさえ小さなラゲッジルームがバッテリーで圧迫されてしまいます。
結果的に、ガソリン仕様と大差ない実用燃費とより不便になった荷室を備える“よく分からない存在”となってしまい、これを100万円近い差額を追加で払ってまで購入する人は稀でした。
こうしてツインは、ベースグレードも上級グレードも販売が奮うことなく、販売からわずか3年未満となる2005年には、ガソリン仕様・ハイブリッド仕様ともに販売終了。
話題に富み、記憶に残る挑戦的なモデルでしたが、これといった後継モデルも現在まで登場する様子はありません。
※ ※ ※
このツインですが、販売当時に「2人しか乗れずエアコンの無い軽自動車」ではなく「雨に濡れず2人が安全に乗れる4輪スクーター」としてユーザーに受け止められたならば、少し未来は変わっていたのかもしれません。
しかし現在ツインは、その個性的なデザインや小さすぎるボディによってカルト的な人気が高まり、中古車市場では価格も高騰。
また、エンジンを「アルトワークス」のターボエンジンに換装したり、屋根を切ってサンルーフを取り付けたり、さらには大経タイヤを履かせてオフロード仕様にしたりと、驚きのカスタムを施す“素材”として激しく愛されている個体も見られます。
このように時代を先取り、スズキの挑戦の歴史の1ページとなったツイン。
短期間で販売終了してしまったことは事実であるものの、その結果のみで“失敗作”と認識するのはいささか早計なのではないでしょうか。
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みんなのコメント
出たら遊びクルマにミゼットIIが欲しい。