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【試乗】6代目パサートと4代目A4は「フォルクスワーゲンとアウディの違い」を示す縮図だった【10年ひと昔の新車】

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【試乗】6代目パサートと4代目A4は「フォルクスワーゲンとアウディの違い」を示す縮図だった【10年ひと昔の新車】

2006年に登場した6代目パサートヴァリアントと2008年に発表された4代目A4アバントは、フォルクスワーゲンとアウディの微妙な関係が見えるモデルだった。世代によって、パワートレーンを共有したり、独自路線を歩んだりと変化していた。Motor Magazine誌では特集「フォルクスワーゲンとアウディ」の中で、6代目パサートヴァリアントと4代目A4アバントの試乗をとおして、2008年当時の「フォルクスワーゲンとアウディ」の関係・志向を考察している。今回はその興味深いレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

生い立ちは異なるが、極めて濃密な文字通りの「血縁関係」
「歴史」の授業は好きではなかったけど、このページをスタートさせるにあたっては、ここに登場する自動車メーカーのヒストリーに話題が及ぶことはある程度避けられそうにない。あるいは釈迦に説法で退屈極まりないかも知れないが、まずはそうした「歴史」についての話題にしばしお付き合いを願いたい。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

というわけで、お馴染みのフォルクスワーゲンから。今やドイツを、いやヨーロッパを代表する自動車メーカーであるこのブランドの名称が、そもそもは「国民のためのクルマ」を表したものであるというのはよく知られている事柄。実際、かぶと虫の愛称で多くの人に親しまれ、それがこのメーカーの存在を世界に知らしめることにもなった初代ビートルというモデルが、かのアドルフ・ヒトラーが描いた「国民車構想」に基づいて、後にポルシェ社を創設するフェルディナント・ポルシェという自動車エンジニアの手により生み出された作品に端を発している。それは、少しでも自動車の歴史に興味のある人ならば耳にした経験のあるストーリーだろう。

そう、VWとは、そもそもは生粋の「実用車」を表す記号に他ならなかったのだ。言い方を変えれば、貴族階級のためのクルマ、あるいは趣味のクルマとは一線を画した生い立ちを持つのが、このブランドでもあるというわけだ。

そんなシンプルそのものの生い立ちを持つフォルクスワーゲンに比べると、アウディにまつわるヒストリーというのは、その難易度(?)がすこぶる高くならざるを得ない。

アウディの創業者が当初手掛けたのは、自らの名前である「ホルヒ」の名を冠したブランドが生み出す高級・高性能なモデル。しかし、後にそんな自らが設立した会社の役員会で経営陣と対立した氏は、そこを飛び出して新たなメーカーを興し、それをアウディと名付けることになる。

一方、そんなホルヒとアウディという2つのメーカーに、2ストロークエンジンを搭載する小型車づくりを得意としていたDKWと、自転車からモーターサイクル製造を経て4輪車へと進出したヴァンダラーという2社を加え、ドイツ自動車産業の強化を図るべく合同で結成したのが、アウトウニオンという民族系資本による連合会社。そして、そんな4社が1932年に合併して生まれたこのメーカーを礎として、そうした生い立ちを示す「フォーシルバーリングス」をブランドマークとして用いるのが現在のアウディだ。

こうして、一見するとまったく異なる道を歩んできたように思えるこの両社。が、しかし実は両社には極めて密接なる血縁関係があるというのも、ドイツ車の歴史に興味を持つ人ならばまた周知の数奇な事柄だろう。

前述のようにビートルの「原型」を生み出したのは、後にポルシェ社を創業するフェルディナント・ポルシェ。ところが、ポルシェ博士の長女の息子、すなわち孫にあたるフェルディナント・ピエヒが、まずはそんなポルシェ社でエンジニアとして活躍する。その後、氏はアウディに移籍してさまざまな先進技術を開発の後、最終的には会長職へと就任する。さらにその後にはフォルクスワーゲンの会長職まで務めたこともあり、それも含めて結果的に両社には、極めて濃密な文字通りの「血縁関係」が生まれるに至っているのだ。

フォルクスワーゲンとアウディのすべてをともに知り尽くすと同時に、今やその「親会社」となったポルシェでも実務を司ったピエヒ氏の影響力は、やはり現在でもとてつもなく大きいと考えるべきだろう。今ではフォルクスワーゲンの監査役という立場にあるが、少なくともここに登場の3つのブランドに対しては、現在でも十分に直接の支配力があると考えるのが自然であるはずだ。

別の道を歩むことになった両ブランドのDセグメント車
というわけで、ここでの題材として俎上に上げたのがフォルクスワーゲン パサートとアウディA4。そんな両車を並べると、同じDセグメントとしてカテゴライズされるモデルでありながら、なるほどそこには微妙な狙いどころの差というものを感じとることができる。

現行パサートが初公開されたのは、2005年春のジュネーブショーの舞台。それ以前のモデルに比べるとボディサイズが明確に大型化し、それも含めて弟分であるゴルフ/ジェッタシリーズとの間の、明確な差別化を意識したことが見てとれる内容で発表されている。

一方で、そもそもが実用車メーカーであったフォルクスワーゲンというブランドが、メルセデスに負けない上級モデルまでを含めた「フルラインアップメーカー」を目指すという野心を抱くようになると、パサートの狙いどころにも微妙な変化が見られるようになった。

前述のようにそもそものラインアップ内では「ゴルフ/ジェッタの上に位置するセダン/ワゴン」というのがパサートシリーズの位置づけ。ところが、そこで「高級」という2文字を意識すると、今度はアウディA4との競合を避ける必要に迫られる。

初代、そして2代目とアウディ車ベースのパワーパック縦置きレイアウトを採用したパサートだが、1988年にリリースの3代目モデルでは、FF車としてはより普遍的なパワーパック横置きレイアウトを採用。すなわち、「アウディとは異なる道を歩む」という姿勢が技術的にも鮮明になったのがこの時期と見ることもできる。

もっとも、1997年にフルモデルチェンジを行ったモデルでは、再びアウディ車の骨格と同様の縦置きパワーパックへと回帰しているから、先の説明はいささか説得力を失ってしまうことになる。あるいは、前出フェルディナント・ピエヒがフォルクスワーゲン会長へと就任した1993年というタイミングを鑑みると、当時の高級ブランド化構想に際して、氏が以前に自らの在職期間中に構築した「アウディの財産」を最大限に利用しようとした、というシナリオも想定できないではないわけなのだが。

一方のアウディが採ってきた商品戦略は、「メルセデスやBMWに追いつき、そして追い越すモデルを作り上げる」というもので、こちらは明確だ。それはモデルチェンジのたびのボディの大型化や内外装質感の大幅向上。そして、代を重ねるごとにその存在感を飛躍的に増してきたフロントマスクの造形にも象徴されていると言って良いだろう。

というわけで、そんなパサートとA4の最新モデルを、改めて横比較で乗ってみた。

心に響くA4アバントの洗練されたフットワーク
今回のテスト車であるパサートヴァリアント2.0TSIスポーツラインは、全長が約4.8m、全幅が1.8mオーバーという堂々たるボディに、ダッシュボード全面をウッドパネルが横断し、その要所に「光り物」が散在するというデコレーションが施されたインテリアの持ち主。すなわち、ルックス的にはA4アバント以上に一見してなかなかの立派さを放つのが、まずはひとつの特徴だ。

一方、日本に新着なったばかりのA4アバントは、駆動系レイアウトを大変更して手に入れたスラリと伸びた前足位置と、いかにもスタイリッシュなリアセクションのコンビネーションが、荷車とはほど遠いモダーンなイメージを全身のフォルムとして表現。インテリアは、ステーションワゴンとあっても質感の高さとデザインのこだわりでは定評あるアウディクオリティそのもので、例えばステアリングホイールの仕上がりひとつをとっても、パサートのそれとはやはり「身を置くクラスが異なること」を高らかにアピールする。

そんな両車で走り始めてみると、まずはA4アバントのフットワークの洗練度の高さが心に響く。実は今回乗った1.8TFSIには、本来は16インチであるところに18インチのオプションシューズを履かされ、それもあって路面凹凸に対する当たり感はそれなりに硬いものだった。

が、そこから先のサスペンションの動きのスムーズさは、パサートの比ではない。A4よりも1サイズ小柄な17インチのシューズを履くパサートだが、走り始めの瞬間から常に上下Gが強めな印象。さらに、路面にある大きな凹凸上を乗り越すと、時にボディが負け気味という印象に通じる、ボコッという強い振動感を伝えてきたりもする。エンジンの回転フィールやパーフェクトなシフトプログラムを備える6速ATの変速フィールが素晴らしくスムーズであるだけに、こうして足の粗さが少々目立つ結果となってしまったのがパサートの走りだ。

一方A4は、パサートがちょっと苦手とするそうした領域こそが、逆に大の得意という走りのテイスト。コーナリングシーンでトラクションの抜けと同時にアンダーステアの発生を実感させるパサートに対して、A4はハンドリングの自在度がずっと上で、追い込み舵もしっかり効く。もちろんそこには、今回はA4の方がエンジントルクが控えめな上に前述のようにオプションシューズを履いていたという理由も大きいはずだが、同時にやはりシャシシステムの新しさというのも明確に効いているに違いない。

ただし、動力性能という点になると、A4に採用されているCVTは必ずしも美味しさばかりを提供してくれるわけではない。効率重視であるA4のCVTは、可能な限りエンジンを低回転に保とうとするために、常にこもり音を発生させがちだし、エンジン回転数と車速がリンクしてくれないという感覚は、決してファンなものとは思えないのだ。

そうした現状を考えると、現在アウディ各車が採用しているCVTは、いずれDCT(デュアルクラッチトランスミッション)であるSトロニックに置き換えられるのではないか!?というのはあくまでも私見。しかしアウディには、すでにQ5のリリースとともに姿を現した、縦置きパワーパック用のDCTという選択肢がある。単なる実用車であればともかく、あくまでもプレミアムメーカーを目指すアウディたるもの、多少のコストアップを承知しても、よりドライバビリティに優れたものを採用することは、ある意味当然の流れであるとも言えるのではないだろうか。

ブランドの哲学が見える両車のクルマづくり
確かにパサートヴァリアントには、単なる実用的なステーションワゴンに留まらないゴージャスさが盛り込まれているし、A4アバントには見た目の流麗さに加え、最大で1430Lにも達する広大なラゲッジスペースが用意される。

けれども、そうした特徴を持つ両者のクルマづくりの根底には、やはり「誰からも愛される実用車づくり」に端を発したフォルクスワーゲンと、メルセデスやBMWという両雄が築き上げたプレミアムレンジというカテゴリーに果敢にも挑戦を仕掛け、それをある領域で確かにキャッチアップしたアウディというブランドに宿る基本的なフィロソフィというものが流れていることが感じられるのだ。「似て非なるもの」、そんなフレーズは、まさにこの2つのブランドにこそ相応しい一節なのだろう。(文:河村康彦/写真:永元秀和)

フォルクスワーゲン パサートヴァリアント 2.0TSI スポーツライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1820×1515mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:147kW(200ps)/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●10・15モード燃費:10.6km/L
●タイヤサイズ:235/45R17
●車両価格(税込):426万円(2008年当時)

アウディ A4アバント 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4705×1825×1465mm
●ホイールベース:2810mm
●車両重量:1560kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:118kW(160ps)/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・65L
●10・15モード燃費:13.4km/L
●タイヤサイズ:225/55R16
●車両価格(税込):437万円(2008年当時)

[ アルバム : フォルクスワーゲン パサートヴァリアント、アウディ A4アバント はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

4件
  • 良いレポートとは思うもののどこか食い足りない。と思ったら、ワゴンなのにラゲッジに言及していないからか。
    まあライターが車両評価ばかりで荷物を積むことはあまりないだろうから、そこに思い至らないのはやむを得ないけど。

    ラゲッジルームに対するスタンスの違いにこそ、両ブランドの違いが明確に現れているのでは。つまり、クラス最大の容量や使い勝手を追求したパサートヴァリアントと、質感や動力性能、ハンドリング、スタイリング等を重視しあくまでラゲッジルームは成り行きというA4アバントの違いが、本質的に実用車ブランドとプレミアムブランドの違いを表していると捉えることができる。

    だから、たとえ車格や価格が拮抗したとしても、両ブランドの購入希望者はあまりバッティングしない。車により高い実用性を求める層はアウディに目もくれないし、より高いプレミアム性やステイタスを求める層の検討リストからはVWは外れていってしまう。
  • 次期A4/A5がパサートと同じMQBプラットフォームへ「格下げ」されるのではないか、と心配です。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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