■車内の一等地にあり、重要な存在のカーオーディオ・ナビをGathersの35年で振り返る
クルマの運転席に乗り込んでまず目につくのが、スピードメーターなどがあるインパネ部分。
その次に目を向けるのがインパネセンターにあるナビなどのモニター類。という人が多いのではないでしょうか。
【画像】カーナビ「Gathers」の歴史は? 写真で振り返る!(95枚)
そのナビ・オーディオやカー用品全般を手がける、ホンダ純正アクセサリーの開発販売を担うホンダアクセスによると、ホンダのカーオーディオ・ナビのブランド『Gathers(ギャザズ)』を展開して35周年になるそうです。
それを記念して、過去・現在・未来に向けた展示・体験会を実施しました。
ホンダアクセスによると、「社内においても正確な資料が残っておらず、当時配られていたカタログやオプションカタログを探し出して、今回の展示会に向けての資料を作ったといい、若干の年数の誤差はあるかもしれません」と前置きがありました。
そんなことで始まった過去の振り返りでは、1981年初代「シティ」や1983年の3代目「シビック」の時代には、カーオーディオに力が入っておらず、カタログでもオーディオは1ページしか載っていなかったそうです。
しかし「それでは良くない、お客様がもっと車内で音楽を楽しめるようにしよう」と、音にこだわる開発を進めるようになり、2代目「CR-X」や4代目「シビック」では車両開発とともに専用設計を行うようになります。
1987年に「Gathers(ギャザズ)」ブランドが誕生し、3代目「アコード」や「シビック」、「CR-X」では、アルパイン、クラリオン、パイオニアが参画してそれぞれのオーディオメーカーの特色を生かしながら、ギャザズとして目指す方向性を決めて開発を進めるようになりました。
1990年から1991年の初代「インスパイア」や5代目シビックの時代には、Gathers ExpertとしてDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)を活用したセンタースピーカーなども装備していました。
その後カーナビの登場や、各社のオーディオなどさまざまなシステムをシームレスに接続する「GA-NET」と呼ばれる独自の通信インターフェースを構築してきました。
1997年から2000年では、当時人気を博していた「S-MX」用に、S-MXのイメージカラーであるオレンジに塗られたデュアルサイズCD/カセットコンポが登場したり、8個のスピーカーを搭載したボックスウーファーを登場させるなど、メーカーとしてこんなウーファーを販売していたのかと驚くような思い切ったことをした時代でした。
一方でGathers初のデュアルサイズナビコンポが登場します。いわゆる2DINサイズに収まったナビをメインにしたコンポの登場です。
そこからは現在の流れになる2DINサイズのナビが主流となり、オーディオは裏に隠れていきます。インターナビの通信が始まり、PNDの手のひらサイズのナビが登場したり、USB接続でオーディオを聞くタイプが登場していきます。
2011年から2012年ごろになると、ステアリングスイッチやバックカメラなどが使えるナビ装着パッケージが登場し、Gathersの装着率もグンとアップするようになります。
その後の2016年から2023年の現在ではドラレコ連携、運転支援オプション、車種専用設計となり9インチから11.4インチと言った大画面ナビが主流になっており、さらなる高付加価値をつけるようになってきています。
■開発における苦労も多々。オーディオ・ナビは他の機械との陣取り合戦を繰り返す
Gathers35年の歴史を振り返ると、「オーディオやナビは、当初はそれほど重要なものでも無かった。ゆえに設置場所も片隅に追いやられていた時代もあったが、現在ではインパネの一等地にあり、非常に重要なパーツとなっている」とホンダアクセスの大坪エンジニアは語ります。
昔はラジオが聞ける程度のオーディオしかなく、操作パネルもシフトレバーに下の方にあったりと、追いやられていた時代もあったそうです。
しかしナビが標準となり操作しやすいように徐々にインパネの真ん中に場所を移し、周囲の安全を確保するカメラによって映し出される映像を見るためのモニターとしても非常に重要で、今ではインパネの一等地にいます。
それでもエアコン表示パネルやスイッチ、ハザードスイッチ、シフトレバーがインパネから生える車種ではシフトレバーと、人が操作しやすい場所には限りがあり、視界や安全性などを考慮すると、それらのスイッチ群との陣取り合戦はつねに起きています。
インパネの表面的にはスイッチしかなくても、裏には制御系の機械があることもあり、裏側も含めての陣取り合戦があるそうです。
衝突安全の兼ね合いもあるので、そこも考えないといけません。現在の大画面ナビも裏面にはDVDやSDカードの読み取り装置があるため、薄くはなっているが結構のスペースが必要なのだそうです。
デザインでも苦労するところがあるといい、デザイナーを担当する加藤エンジニアは次のように話しています。
「車両開発が始まる時から、われわれホンダホンダアクセスも関わるようになり、車体開発とともにナビやオーディオを考えていく必要があります。
ホンダアクセスとしてはこの大きさのモニターを装備するための場所が欲しいとなっても、視認性や安全性などの観点から実現しないときもある。そこを考慮しながらデザインしています。
インパネの素材や表皮の使い方の工夫、エアコンや他のスイッチ類と押したり触ったりする触感の統一感なども考える必要があるので難しさはあるが、車両開発陣を一体となって開発できるからこその質感にもこだわっている」
※ ※ ※
今後に向けては通信などは現在も当たり前に行われているなかで、高付加価値をつけて行かなくてはならない。そのための開発も行っているようです。
■ナビ&オーディオに装備される高付加価値とは?
大画面ナビが当たり前になってきている現在においては、専用設計も当たり前になってきています。
専用パネルを最初から装着することで、9インチから11.4インチと言った大画面が最初から違和感なく装着されます。
さらにドラレコ連携が始まり映像をモニターで見たり、スマホ連携が行えるほか、インターナビやホンダコネクトでの通信機能はさまざまな情報を得ることやアップデートも定番化しています。
またリアカメラやサイドカメラも装着され始めより安全性に寄与しているなかで、カメラを活用したのが運転支援オプションの「リアカメラdeあんしんプラン3」です。
後退駐車時にカメラで駐車枠を確認してちゃんと止められるように支援、後退出庫サポートで人や物が車両の後ろを通過した際のアラート表示。
さらに、走行時の後方視覚サポートで、斜め後ろに接近車両がいることの注意喚起、後方車両お知らせサポートでは煽り運転の車両がいることをお知らせしてくれる。といった機能があります。
ホンダセンシングとして同様の機能を最近の車両には装備していますが、ホンダセンシングを選択されなかった場合や、中古で購入した場合など装備できない場合もあります。
それを補完するように、リアカメラを使ってサポートしてくる機能となり、センサーが無くてもカメラで後方車両や人物を検知してアラート。
ホンダセンシングとともに、モニターにこういうアラートを表示してくれるのは非常にありがたい装備です。
さらに音響としての付加価値は、パナソニック製ナビでは「音の匠」、DIATONE製ナビでは「DIATONE SOUND」として専用の音響セッティングをインストール。
オーディオオプションのハイグレードスピーカーを装着することでホンダ車専用セッティングを利用可能になり、標準の音響はまったく違う音楽を奏でてくれます。
聴き比べ体験もしましたが、音場の雰囲気、高音の伸びや低音の質感の良さなど、同じ音源を再生しても全然違うことを体験できるほどです。リアに大型モニターを付けてそのサウンドに浸れば立派なシアターになることも想像できます。
音響にこだわりをもって開発を続けてきたギャザズならではのこだわり部分です。
※ ※ ※
35年という歴史を振り返り、現在のギャザズを体験し、未来のオーディオ・ナビはどうなっていくのか想像するのが楽しい体験会でした。
また1998年にスーパー耐久で活躍していたシビックタイプRが、ホンダコレクションホールにこの体験会に合わせて展示を行っていました。
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