ビッグマイナーチェンジを受けた新型レクサス「IS」に、渡辺敏史が試乗した。トヨタが誇るテストコース「Toyota Technical Center Shimoyama」での印象はいかに?
モデルチェンジ並みのマイナーチェンジ
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ISはレクサスのラインナップにおいて最もコンパクトなセダンだ。とはいえブランドのエントリーモデルとしてはよりコンパクトな「CT」があり、SUVスタイルの「UX」もくわえられた。
そんな中、2016年のフェイスリフト以来4年ぶりに施されたISのビッグマイナーチェンジの目的は、小さくてお手頃というだけではない魅力の増し盛りだ。それを言い換えれば“RWDスポーツセダン”としての資質をより鍛え上げるということになる。
時期的にはフルモデルチェンジでもおかしくないところをマイナーチェンジと銘打っている理由は、主力の米国市場でISが若いユーザーにスポーツモデルとして支持されていることにあるという。つまり新しいアーキテクチャーで大きく重いクルマにするよりも、現行のアーキテクチャーを磨き込んで軽さや買いやすさを追求することがユーザーの望む方向性だろうと読んだわけだ。
とはいえ、アウターパネルがまるっと変更を受けたスタイリングはイメージを大きく違えている。まもなく日本へ導入されるフォルクスワーゲンの新型「ゴルフ」は、先代の車体骨格を継承しながらも車内の電子・通信環境を先駆けて全刷新しているが、今回のISのビッグマイナーチェンジも言ってみればそれに近いだろう。
最大のウリとなる運動性能を徹底的に鍛える場として、新型ISが活用したのは2019年に運用開始されたトヨタの「Toyota Technical Center Shimoyama」(愛知県豊田市下山地区)だ。現在も開発が続くその地には、地形を活かしてアップダウンの連続するカントリー路コースがある。
独・ニュルブルクリンクやその周辺に広がる郊外路はレクサスの車両開発においても重要なステージとなっているが、このカントリー路コースは、それらへの行脚の積み重ねで得られた知見でデザインされ、サスペンションへの路面からの入力パターンが豊富に再現されている。
また、一部の路面は東富士のR&D内にあるテストコースとシンクロしており、得られたデータの再現や確認も容易になっているという。これらは主に開発のアジャイル(迅速)化に貢献するものであるが、こと新型ISの場合は開発の熟成期に思わぬコロナ禍となり人や物の移動が困難となった状況で、このコースが果たした役割が相当大きかったのは想像に難くない。
僕自身、走行を経験した世界の自動車メーカーのテストコースの中でも、クルマを虐めるそのえげつなさでは屈指ともいえる下山のカントリー路を、新型ISで走る機会に恵まれたのは10月のことだ。一応プロトタイプという体ながら、クルマとしてはもう完成していないとおかしいタイミングゆえ、言い訳は通じない。それをわざわざ下山で乗せるというのは、この地から発信される初のレクサスであることと、このマイナーチェンジに対する相当の自信のなせるわざなのだろうと受け取った。
上質さに磨きをかけた!
新型ISの改変ポイントの多くは、シャシーまわりに寄っている。ラジエターサポート補強やフロントサイドメンバーのスポット打点増し、Cピラーやルーフサイドなど車体後半部の構造最適化など骨格まわりの強化にくわえて、軸回りではハブとホイールの締結方式を一新し、ナットではなくボルトを使用することによってバネ下の剛性向上と軽量化を両立している。
生産現場での取付工程に負荷が掛かるこの方式は、トヨタ系のクルマでは初採用になるという。これに合わせてタイヤサイズは拡大、サスペンションの設定は全面的に見直され、固定レートダンパーは微入力域からしっかり減衰力の立ち上がるスゥイングバルブ型を新たに採用した。そして装備面ではADAS=先進運転支援システムの大幅なアップデートが主なトピックとなる。
以上をもって、新型ISの走りは限りなくフルモデルチェンジに近い進化を遂げていた。特に限界域での操作に対する応答の緻密さや接地感の豊かさ、後輪の粘り強さといった項目の向上は既にサーキットで確認している。
気持ちよく流しているだけでも不穏な動きがすぐにあらわれる、つまり低い速度域でもクルマのアラが拾いやすい下山のカントリー路では乗り心地やスタビリティに注目してみたが、転がりの滑らかさや連続する凹凸への追従性など、やはりタイヤ&ホイール起因の雑味が抑えられ、すっきりしたライドフィールを実現している。
コーナーの中にわざわざ据えられた逆バンクやギャップでも進路を乱されることはなく舵の収まりはいい。
坂を下りながら2つのジャンピングスポットを超えた直後に大きくまわり込む、姿勢を乱さんがためのシチュエーションでも操縦安定性はしっかり確保されているし、サスの底づき感も穏やかに丸められていた。
ちなみに試乗したのはスポーティグレードのFスポーツだ。最終的に公道を走ってみなければわからないが、18インチタイヤにノーマルサスの標準グレードであればより乗り心地の良さが期待できるはず。動的な質感はライバルと同級に引き上げられているとみて間違いはないだろう。価格的にも前型からほぼ据え置きに設定されたとあらば、実質的に割安だったライバルとの距離も大きく縮められたはずだ。
それにしても、ハードパンチャーに袋叩きにされるようなこのコースで、新型ISはこうもしっとりとしなやかな乗り味をよく実現できたものだと思う。一歩間違えれば、ガッチガチに締め上げられた筋肉自慢があらわれそうなところで、諸刃の剣を巧く使い分けながら上質さにきちんと磨きをかけている。
新型ISはレクサスブランドの動的性能構築の新たな指針として、ほかのモデルにも前向きな影響を与えることになるだろう。
文・渡辺敏史
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みんなのコメント
これが欧州車だったら日本の自動車メディア、V6モデルなんかは1,000万円でも、「これはバーゲンだ!」って絶賛してるはず 笑
余計なラインがなくなって、プロポーションの良さが際立ったと思う
nx,lcに加えて今回のisのスタイリング…ホントにレベル高い
イタリア人が悔しがってるんじゃないだろうか
レクサスというだけで貶してるアナタ
ブランドに目が眩んで
本質が見えていないのでは?
(個人の感想です)