新車試乗レポート [2022.01.07 UP]
レクサス新型NX公道試乗【2】グレード別詳細試乗&結論
新世代レクサスのファーストモデルとも言うべき新型NX。従来型でも高く評価されていた走りはどのように磨かれていたのか? 多くのユーザーが注目する新型の実力のほど、そのすべてを明らかにしたい。
最新版・人気SUVトップ10【番外編】2022年の注目SUV×8
●本文:川島 茂夫 ●写真:澤田 和久
NX350h バージョンL
価格:608万円(FF)
力強いパワーフィールが印象的
幅広い走行シーンで良質な走りを体感できる
アクセルの踏み込みに瞬時に応えてくれる豊かなトルクや鋭い立ち上げは、電動走行を主体とするモデルらしい魅力の一つ。力感に関しても申し分がない。それでいて加減速時の滑らかさも備わっており、速度によるドライバビリティの変化も少ない。幅広い状況で余力とキレのいいドライブフィールを楽しむことができるだろう。据わりとしなやかさを備えているなど、ワインディング路も力まずこなせる。素直さと重質な乗り味を両立するフットワークも印象的だ。
2.5ℓ直4+モーターというシステム構成は、ハリアーやRAV4、カムリに搭載されるTHS IIと同構成だが、NX用はモーターやPCUなどを高性能化することで、1ランク上の出力特性を手に入れている。
主要諸元(NX350h バージョンL)
●全長×全幅×全高(mm):4660×1865×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1760 ●パワーユニット:2487cc直4DOHC(190PS/24.8kg・m)+モーター(134kW/270N・m) ●トランスミッション:電気式無段変速 ●WLTCモード総合燃費:20.9km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F/R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R)●タイヤ:235/50R20
NX450h+ Fスポーツ
価格:738万円(FF)
力感溢れるパワーフィールと重厚な乗り心地
最上位らしい風格が魅力
PHV化により車両重量は2トン超えになったが、動力性能のハンデはなく、むしろモーターに負荷がかかる高速走行時は、システム出力の高さと大容量駆動バッテリーの恩恵もあって、350hよりもパワフルだ。ドライバビリティの基本特性は350hに近いが、重みが増したことや剛性アップにより重質な乗り味が深まった印象。静粛さが増したキャビンもあって、上級車らしい動的質感の高さも体感できる。
前後のモーター出力は350hの4WD車と同数値だが、高負荷時のEV駆動の長さが大きく異なることもあって、走りの力強さは450h+の方が明らかに上。エンジン+モーターのシステム最大出力は、450h+が227kW(309PS)、350hは179kW(243PS)になる。
450h+のPHVシステムは大出力リヤモーターを配置するE-Fourが組み合わされる。駆動用バッテリーは18.1kWhの電力量を持つ大容量タイプを搭載。88kmのEV走行(WLTC総合モード)も可能だ。
主要諸元(NX450h+ Fスポーツ)
●全長×全幅×全高(mm):4660×1865×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):2010 ●パワーユニット:2487cc直4DOHC(185PS/23.2kg・m)+フロントモーター(134kW/270N・m)+リヤモーター(40kW/121N・m) ●トランスミッション:電気式無段変速 ●WLTCモード総合燃費:19.8km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F/R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R) ●タイヤ:235/50R20
NX350 Fスポーツ
価格:599万円
操る楽しみがあるツアラー
Fスポーツの魅力を一番体感できるモデル
実用型ターボらしい低中回転域の扱いやすさや余力を持ちながらも、高回転域の加速感も淀みなく発揮するなど、バランスが取れた制御が特徴。荒れた路面でもしなやかな接地感と安定性に飛んだハンドリング性能を持つ。サスチューンも収束性に富んでおり、神経質な修正なしで思い通りにラインをコントロールできる。荒さの少ない乗り心地もあって、心地よく過ごせるツアラーに仕上がっていた。Fスポーツのために開発されたモデルと言ってもいい。
2.4ℓ直4ターボは高効率を重視した新開発ユニット。低回転域から分厚いトルクを発生させながらも高回転域まで気持ちよく回りきる、スポーツドライブも楽しめる特性が与えられている。
主要諸元(NX350 “F SPORT”)
●全長×全幅×全高(mm):4660×1865×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1780 ●パワーユニット:2393cc直4DOHCターボ(279PS/43.8kg・m) ●トランスミッション:ダイレクトシフト8速AT ●WLTCモード総合燃費:12.2km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F/R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R) ●タイヤ:235/50R20
NX250 バージョンL
価格:543万円
ベーシックモデルと侮るなかれ
素性の良さがキラリと光る
2.5ℓエンジンのトルクと8速ATの組み合わせが生み出す動力性能は、ミドルSUVとしては十分すぎるほど高性能。特に低中負荷域でのコントロール性のよさと豊かなトルクは、ハリアー&RAV4を含めたライバル勢を凌駕している。排気量以上に悠々としたドライブフィールも楽しめる。登坂時の加速力や乗り心地の質感などでは、上位モデルとの差を感じてしまうが、NXが持つプレミアム感は十分すぎるほど味わえるはずだ。
従来型の2ℓNAエンジンに比べて排気量アップ。上位パワートレーン車には及ばないものの、力強さとリニアな特性を併せ持つ味付けは、新型にふさわしい実力を見せてくれる。
主要諸元(NX250 バージョンL)
●全長×全幅×全高(mm):4660×1865×1660 ●ホイールベース(mm):2690 ●車両重量(kg):1650 ●パワーユニット:2487cc直4DOHC(201PS/24.5kg・m) ●トランスミッション:ダイレクトシフト8速AT ●WLTCモード総合燃費:13.9km/ℓ ●ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F/R) ●サスペンション:マクファーソンストラット式(F)ダブルウィッシュボーン式(R) ●タイヤ:235/50R20
バリエーション&価格/主要装備
新型NX【最終結論】
4モデルとも魅力は十分
価格よりもキャラの違いを
しっかりと見極めるべし
「特別な存在」を強く主張する見せ方は、プレミアム系モデルではありがちだが、NXは必ずしもそれだけのモデルではない。むしろレクサス車の中では地味に映るほどだ。そう感じてしまうのは、ミドルSUVの基本を押えたバランスのいいパッケージングや、際どい主張を抑えたデザインの影響と考えていいだろう。
だが、この控えめな自己主張こそがNXの魅力。基本性能に優れ、かつ優れた道具を感じさせる適度な魅せ方が、他のレクサス車とは違った魅力を引き出している。
新型は「良質な実用車」という部分を全体的にアップグレードしている。実際、トヨタ系のGA-Kプラットフォーム車と乗り比べれば、レクサスが目に見えない部分の質にこだわっているのが容易に理解できるし、従来型以上にその魅力が深化していることが分かる。
新型の凝縮されたプレミアムを実感させてくれるのがパワートレーンだ。ベーシックなガソリン車が2.5ℓエンジンとなり、ハイブリッド車もRAV4やハリアーに対して電動系を強化したTHS IIを採用している。その上位モデルとしてPHV車まで展開し、専用エンジンのFスポーツ専用のターボ車もある。ボトムアップしつつさらに上も伸ばしたグレード展開は、従来型以上に多くのユーザーからの視線を集めるのは間違いない。
コンセプトや性能のまとまりではNX350hが代表モデルといえるが、新型の素の良質を味わえるNX250、ツアラーモデルとして魅力的なNX350Fスポーツ、電動化をさらに進めたNX450h+と、それぞれのモデルが価格やグレードコンセプトに見合った魅力を備えている。掘り出し物とはいえないが、ハズレもなし。粒揃いの構成は新型のセールスポイントになっている。
グレード選びのガイドラインとしては、ハイブリッド車として正常進化を果たしたNX350hを標準的な選択として考えるのがいい。これを基準にして、プレミアムとコスパのバランスを重視するならばNX250バージョンL、ツーリング&スポーティ路線ならNX350Fスポーツ、最高のプレミアム感を求める場合はNX450h+バージョンLと選んでいきたい。
無闇に予算内の最高価格の仕様を狙うのではなく、目的や嗜好を明快にして絞り込むことが極めて重要。結果的に新型NX選びの正解にたどり着くことができるはずだ。
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