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甦った伝説のマシン!トムスがKP47スターレットに込めた想いとは?

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甦った伝説のマシン!トムスがKP47スターレットに込めた想いとは?

去る2月17日、18日にパシフィコ横浜で開催された「Nostalgic 2days(以下、ノスタルジック2デイズ)」会場に展示されていた1台のKP47スターレット…。ノスタルジックヒーロー(Nostalgic Hero)誌の連載で、レストアされていく模様をチェックしていた方もいるはずです。

この個体を出展していたのは、株式会社トムスのデザインセクションであるトムスデザインセンター。2016年10月から、同社のファクトリーでスタートしたというKP47スターレットのレストアプロジェクト。ノスタルジック2デイズ会場での取材を通じて、このクルマや、同社が秘めている想いをより詳しく伺ってみたいと感じ、インタビューをお願いしたところ、快く応じていただきました。

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同社がクルマ好きに向けて伝えたいこととは?そして、旧車オーナーにとっては朗報となるかもしれない情報を伺うこともできました。

今回、お話しを伺った方


株式会社トムス デザイン事業部 営業課 課長 大岩 芳彦さん

御社が取り組んでいる事業内容についてお聞かせいただけますか?

トムスとしては、主にレーシングチームの運営やレース用のクルマのパーツの開発を行っています。そこで得た経験や知見をもとにして、エアロ、マフラー、ホイール等のアフターパーツ用の企画・製作・販売を行っています。さらに、レーシングカーを開発した経験や知見を、どのようにして他の分野にアウトプットしていくか?また、製品作りに活かしていくかを考えています。

他の分野にアウトプットしていく…ということは、クルマ以外もジャンルも視野に入るのですか?

はい。現時点ではクルマに注視しています。クルマ好きにもいろいろなベクトルがありますよね。トムスとして、できることを常に模索しています。

また、他の分野という点においては、将来的にドローン、ジェットスキー、スノーモービル等のデザインなども視野に入れています。

KP47スターレットがレストアされることになったきっかけは何だったのですか?

当社で保管していた3K-Rエンジンを復活するにあたり、会長である舘からのアイデアでKP47スターレットとしてレストアしようということになったんです。それが2016年でした。使えるパーツは再生する形で使用し、欠品しているパーツの一部は3次元測定器で計測し、社内で製作しました。

トムスというとトヨタ自動車との結びつきが強いイメージがあります

そうですね。事実、トヨタ自動車さんとの繋がりは長く、深いものがあります。しかし、他メーカーさんとの取り引きも多少はあります。

株式会社トムス創業のきっかけを教えていただけますか?

1964年に開催された東京オリンピックの頃から、日本におけるモータースポーツが盛んになっていきました。しかし、1973年に起こったオイルショックによって、レース活動を自粛せざるを得ない状況になってしまいました。その結果。多くのレーシングドライバーやレースカーの活動の場が奪われていったんです。

そんなオイルショックの真っただ中だった1974年に、トヨタのファクトリードライバーだった舘信秀と、トヨタディーラーのスポーツコーナーの責任者であった大岩湛矣の2人がタッグを組み、当社が設立されました。

「日本のモータースポーツの火を絶やさず、将来性に掛けたい」という情熱があったからこそ生み出された企業といえます。

トヨタ自動車とつながったきっかけを教えていただけますか?

自動車メーカーが手掛けるレーシングカー(ワークスマシン)が製作されていましたが、オイルショックが起こったことでお蔵入りとなってしまったんです。トヨタさんも例外ではありませんでした。

当時は、日産のサニーやチェリーX1-Rが強かった時代。トヨタさんはこれらを駆逐したいという思いから、当初OHVであった3Kエンジンをツインカム化した3K-Rエンジンをスターレットに載せて勝負を挑み、成功した訳ですが、オイルショックでこのハイパフォーマンスマシンがお蔵入りとなってしまったのです。

1974年に設立したトムスとしてレース活動を行ううえで、このスターレットを使わせていただけないかと、トヨタさんに打診したのです。トヨタさん側にも理解のある方がいて、結果として素晴らしいマシンを手に入れることができたのです。

それが、今回レストアしたKP47スターレットというわけです。

現在にいたるまで、御社がどのようにしてノウハウを築いてきたのですか?

ただひたすら「トライアンドエラー」の繰り返しです。

また、ライバル車の研究も重要だと考えています。なぜポルシェがあれだけ強いのか?そしてフェラーリが速いのか?ライバル車のすごさをじっくりと研究して、いかに自分たちのクルマづくりにフィードバックさせていくかも重要だと考えています。

日本車とヨーロッパ車の違いを実感することはありますか?

国としての文化の違いを実感しています。例えばドイツにはアウトバーンがありますよね。速度に対する認識が、日本とは根本的に違うなと思います。

アウトバーンでは、日本の高速道路ではありえないような速度で走っていたとしても、市街地ではきちんと減速できる仕組みが確立されていますね。住宅街も通りから少し奥にあったり。日本だと、国道の目の前に住宅があるケースも珍しくありませんし…。

日本車に新たな時代の到来を感じたことはありますか?

時代ごとに振り返ってみると、初代ソアラ~初代セルシオ~初代プリウスでしょうか。それぞれのクルマが、社会変化とともに新たな価値観を創造して、一段上のステージにあげたように思います。初代セルシオのスムーズさには感激しましたし、初代プリウスが発売されたときは「果たしてこのクルマが売れるのか?」と思ったものです。しかし、2代目にフルモデルチェンジしてからは爆発的に売れましたよね。

私自身、プリウスを運転するときは燃費ばかり気にして走っていました。パワーやスピードを出したときには得られない、燃費を追求する走りは、それはそれで楽しいことだと気づいたことは大きな収穫だったと思います。

今後、日本の自動車業界はどうなっていくと予測していますか?

電気自動車の流れが今後加速していくと予想されます。アフターパーツメーカーにとっては、新車をベースにした、いわゆる「クルマいじり」は厳しい時代になるかもしれません。それなら、旧車をベースにして楽しんでも良いのではないかと考えています。

長年にわたり、御社が蓄積してきたノウハウが活かせることもありそうですね

当社には1970年代からこれまで、あらゆるレーシングカーを造ってきたという、蓄積されたノウハウがあります。それはつまり「クルマ本来の性能を上げていく」ということに集約されます。性能といっても、パワーやスピードだけではありません。堅牢さ、耐久性、デザイン…。そのクルマが秘めているあらゆるポテンシャルを引き出すことに注力しなければなりません。

当社の技術を活かして旧車と呼ばれるクルマの楽しさをご提案もできることはもちろんですが、「次世代の若い人に対して技術の伝承をしていく」ことも重視しています。このKP47スターレットも、若いスタッフがこつこつとレストアしてここまで完成させてくれたのです。

旧車の楽しむ際、パーツの欠品という問題に直面してしまいます

できることとできないこと、パーツの単価、自動車メーカーとの調整などのハードルはありますが、トムスとしてご相談に応じることができるかもしれません。

例えば、オーナーズクラブさんや有志の方々など、ある程度まとまった数を造った方がパーツの単価も抑えられます。パーツの部位としては、板金できるものは可能性があります。その代わり、ゴム類は難しいかもしれませんが…。まずは、詳細をていねいに伺って可能性を探れたらと思います。

今後のトムスに期待できることは何ですか?

前述の旧車の楽しみ方のご提案もそうですが、「オーナーさんが所有していて胸を張れるようなクルマを創りたい」ですね。以前より、クルマ熱が冷めてしまった感じが否めないんです。憧れの存在、格好いいと思えるようなクルマを世に送り出していきたいと考えています。

ちなみに…、大岩さんがお好きなクルマは何ですか?

ジャンルを問わずクルマが好きなんですよ(笑)。スポーツカーなら走る楽しみがあります。新型スープラのようなクルマも出て来ましたし。また、ハイエースのようなワンボックスカーなら、カートを積むためにどうカスタマイズしていくかを考えてみるのもいいですよね。個人的にはBMWのような「意のままに操れるクルマ」ですね。

取材を終えてみて

ノスタルジック2デイズ会場で見掛けたKP47スターレットに感銘を受けたことで実現した今回の取材。静岡県御殿場市にある、かつてはフェラーリ美術館として存在していたオフィスに訪れてみて感じたことが、そこはまるで工房、いわゆるカロッツェリアでした。

オフィスはもちろん、工場内は整理整頓が行き届いています。筆者の姿を見掛けると、仕事の手を止めて挨拶してくださいます。そんなことはあたりまえかと思うかもしれませんが、事前に「取材のときだはきちんとしておいて」とアナウンスがあったときの対応って、案外分かることがあります(かつて、筆者自身がお迎えする側だったこともあるので…)。

トムスがKP47スターレット復活に込めた想い。それは単に、過去の栄光を現代に甦らせただけではありません。次の世代に技術の伝承させるための役割も担っているのです。当時の活躍を知らない若い世代にとっても、自分が勤めている企業の歴史を振り返るまたとない機会になったはずです。

現行モデルを手掛けるトムスに、そして旧車・絶版車の部品欠品問題の駆け込み寺として期待をいだくユーザー。人それぞれだと思いますが、今回、トムスが仕事に対して、ユーザーに対して誠実な企業であることは間違いことを強く感じた取材となりました。

お問い合わせ

トムスデザイン
〒412-0026 静岡県御殿場市東田中3373-7
TEL:0550-70-1707/FAX:0550-70-1706
http://www.toms-design.jp/728887610

[ライター・撮影/江上透]

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