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アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラが実現した「スポーツカーの理想」【Playback GENROQ 2018】

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アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラが実現した「スポーツカーの理想」【Playback GENROQ 2018】

Aston Martin DBS Superleggera

アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラ

ランボルギーニ ウラカン EVO RWD & マクラーレン 720Sを試乗! ミッドシップの神髄を味わう

スーパーGTを名乗る、美しくも獰猛な“DB”

次の100年も成長し続けるために、アストンマーティンが策定したセカンド・センチュリー・プランに基づき誕生した最新作がDBSスーパーレッジェーラである。最高出力725ps、最大トルク900Nmという圧倒的な性能のスーパーGTを国際試乗会で試した。

「スーパースポーツとグランドツアラーの性能を持ち合わせる最高峰のDB」

超高性能を謳い文句にした、フロントエンジン&リヤ駆動モデルに対して、実際に購入を検討するカスタマーは何を望んでいるのかと、考えさせられることが多い昨今。スパルタンかつダイナミックな走りを求めるのか、それともパフォーマンスはそこそこにラグジュアリーで高い快適性を優先したいのかなど、メーカーにとっては技術の発展とともに如何様にもアレンジできるようになったこともあり、今やその選択肢の多さも重なるだけに明確な基準を見出すことすら難しくなっているように思う。敢えてそれを分かりやすく二分するなら“スポーツ”と“GT=グランドツアラー”とカテゴライズできるが、最新モデルのやっかいなところは(もちろん、良い意味で)、そのいずれも併せ持っているという点だろう。

アストンマーティンの最新モデル「DBS スーパーレッジェーラ」がデビューした時、疑問と現実に挟まれたような思いだった。というのも、従来のDB11が“GT”、そしてDB11 V8は“スポーツGT”という肩書を与えているのに対して、このDBSスーパーレッジェーラは、“スーパーGT”と位置づけているうえ、ヴァンキッシュSの後継車にもあたるとアストンマーティンは重ねたからだ。即ち、スーパースポーツとグランドツアラーの性能を持ち合わせ、さらに2シーター&ショートホイールベースのヴァンキッシュSをも超越する、最高峰のDBだと豪語する。

「プレゼンでは事あるごとにフェラーリを引き合いに出して優位さを主張」

その性能は凄まじい。最高出力は725ps、最大トルクに至っては900Nmと、同じ5.2リッターV12ツインターボエンジンを積むDB11 AMRに対して、86ps&200Nmもの出力アップを図っている。しかも、プレゼンテーションでは事あるごとにフェラーリを引き合いに出し、「我々のDBS スーパーレッジェーラのほうがすべてにおいて上回っている」とまで主張した。

そこまでいうなら相当な自信作なのだろうと、乗る前から期待は高まるのは当たり前。主張があまりにも強烈だったこともあり、こちらも応戦するつもりで、今回行われた国際試乗会に参加した。場所は、ドイツのミュンヘンとオーストリア・ザルツブルクを境にしたワインディングが中心でサーキットテストはなし。自己主張したわりには峠だけか!と少々肩透かしをくらった印象だったが、そのコース設定をみて納得。約7割がワインディングで残りは市街地と高速道という、なかなかハードな1日を強いられたからだ。

「これまでないような加速感がたまらない」

まず、最初に従来型と大きな違いを実感するのは、フロントミッドに搭載される自社製V型12気筒ツインターボエンジンのレスポンスだ。パワー&トルクの数値もさることながらその瞬発力は桁違い。GTモード(ノーマル)ではわずかな違いを感じる程度だが、スポーツ、スポーツ・プラスと上げていくと、本当にDBの名を冠したモデルなのかと疑いたくなるほど。ブースト圧を2.0barに上げていることも影響しているだろうが、むしろ内部構成パーツを改良したことによる効果のほうが大きく感じられる。

それにプロペラシャフトはカーボン製、ZF製8速ATのファイナルもローギヤード化していることもあるため、まさに胸のすくような加速フィールで魅了する。しかも、常にトルクは図太い! それでいて軽快感が得られるという、これまでないような加速感がたまらない。さすが、ボディパネルにカーボンを使用していることもあって72kgの軽量化が効いているのも間違いないだろう。

「コーナー出口付近の俊敏性は、もはや4シーターモデルの域を脱している」

特にスポーツ・プラスモード時、3500rpmを超えたあたりからのパンチ力には惚れ惚れする。アストンマーティンが最大のライバルと評する、V12搭載の2+2“フェラーリ GTC4 ルッソ”と比較しても十分に魅力があるどころか、DBS スーパーレッジェーラのほうが明らかに一枚上手だ。さすがにエンジンサウンドだけは敵わないものの、それでもターボユニットしては悪い部類には入らないだろう。

そして、今回もっとも感心したのは、実のところDBS スーパーレッジェーラが見せた優れたハンドリング性だった。コーナリング中のステアリング・レスポンスは従来型の比ではない。電動パワーステアリングの設定を見直したことにより、スポーツ性を優先させていることを深く実感した。中でもタイトコーナーが連続するようなシーンでは、とても“DB”とは思えないほどリズミカルに攻めることが可能で、アクセル開度とのバランスもとりやすく、実にコントロールしやすい。しかも出力アップに伴い、トラクション性能も高いだけにコーナー出口付近の俊敏性は、もはや4シーターモデルの域を脱していると思えるほどだ。

「725ps&900Nmのスーパーカーだが不思議なほどに不快感を感じさせない」

それでいて乗り心地が悪くないから見事というほかない。フロントにダブルウイッシュボーン、リヤにマルチリンクという従来のDB11と基本は同一ながらもアダプティブダンパーの設定を改善し、パフォーマンスに見合うようにセットしているが、725ps&900Nmをもつモデルとしては、攻めている最中でも極度な硬さも感じず、ほとんど不快に思わせないのは、不思議なくらい。DB11のデビュー当初、リヤ周りの剛性不足を指摘されていたが、今では完全に払拭したどころか、他車と比較しても強靭さが際立つまでに至っているから、もはや不安要素すら見当たらない。

だから、こうして攻めていても、意外なほど疲労感なく高いペースをキープできてしまうから恐ろしい。そう思うと、アストンマーティンがいうところの“スーパーGT”というコンセプトには説得力が増す。もちろん、その気になれば、専用セッティングされたトルクベクタリングやスタビリティコントロール、そして機械式LSDなどによって、テールスライドを実行に移すのもたやすいだろう。しかし、ここが悩ませる要因でもあって、基本は超高性能グランドツアラーとしたうえで、獰猛な面をどこまで見せるのかというのが肝となるから、このDBS スーパーレッジェーラは、実に巧みなところに落とし所を見い出したと思う。そうしたうえでエクステリアを見ると、その性格が確かに表現されていることにも気づく。ジェントルな気質にちょいワル風味を加えたこの仕上がりは、今後のGTの在り方を再定義させる可能性すら匂わせる・・・。

REPORT/野口 優(Masaru NOGUCHI)
PHOTO/ASTON MARTIN LAGONDA

【SPECIFICATIONS】

アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラ
ボディサイズ:全長4712 全幅1968 全高1280mm
ホイールベース:2805mm
車両重量:1693kg(Dry)
エンジン:V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5204cc
最高出力:533kW(725ps)/6500rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1800-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35ZR21(9.5J) 後305/30ZR21(11.5J)
最高速度:約340km/h
0-100km/h加速:3.4秒
環境性能(NEDC):285g/km

※GENROQ 2018年 10月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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