ウーブンシティとプリウス
text:Kenji Momota(桃田健史)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
次の次の世代、6代目プリウスはどんなクルマになっているのだろうか?
トヨタの先進的な技術開発をおこなう、ウーブン・プラネット・グループのオープニングイベントをオンラインで視聴しながらそう思った。
TRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティチュート・アドバンスド・デベロップメント)が持ち株会社制となり、統括会社のウーブン・プラネット、ソフトウエア開発のウーブン・アルファ、自動運転の開発を主体とするウーブン・コア、そして投資を担当するウーブン・キャピタルという布陣となった。
一般ユーザーにとって、こうしたクルマのソフトウエアを中心とする研究開発に興味がある人はあまり多くないだろう。
だが、ウーブン・プラネットは、いわゆる先行開発部隊ではなく、あくまでも量産(トヨタ用語では、号口:ごうぐち)の開発が前提であり、なおかつ高級車からエントリーモデルまで幅広く影響を与えるような、クルマづくりのベースとなる技術革新をおこなっており、結果的にユーザーが近未来に実体験する技術が満載だ。
今回のオンラインイベントで「プリウスの未来」について具体的な技術の提示があったワケではないのだが、トヨタの技術革新の象徴として、ウーブン・プラネットがプリウスに与える影響は大きいと思う。
具体的にどういうことか?
2035年電動化の影響
まず、電動化についてだ。
これまでの世界の流れを振り返ると、90年代から米カリフォルニア州のゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)法が、世界で最も厳しい電動化施策としての知られてきたが、そのなかで大量生産型の電動車として、プリウスの存在感は極めて大きかった。
ハリウッドの有名俳優などセレブリティが「地球環境へのやさしさ」からプリウスを日常移動のクルマとして選んだことから、ハイブリッド車に対する消費者のイメージは大きく変わった。
実際、1990年代から2000年代にかけて、筆者は全米各地で各種の取材しながら、プリウスがもたらした社会の変化を肌で感じた。
一方で、一般的なアメリカ人は日常利用での走行距離が長いため、ガソリン小売価格が一気に上昇すると燃費を気にして、プリウスなど販売実績が上昇するという因果関係が明確になった。
こうした、カリフォルニア州が主導する電動化の流れに加えて、2010年代からは欧州全体でのCO2規制強化と、フランスやドイツなど欧州各国の電動化施策の打ち出し、さらに2010年代後半からは中国の新エネルギー車(NEV)規制と、電動化の流れが一気に加速。
日本では2020年12月、国がグリーン成長戦略を表明し、それをもとに菅義偉総理大臣は2021年1月の通常国会で「2035年の電動化義務化」を明言した。
そこでプリウス……。
プリウスの必要性?
日本を含めた世界での電動化シフト大波は、これまで電動車の筆頭として高い実績のあるプリウスには、とくに問題ないように思える。
だが、見方を変えるとプリウスには新たなる電動車時代のけん引役として、これまでと違う魅力が必要になってくるはずだ。
2035年のプリウスは、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(トヨタでのPHV)、そしてEVという3種類になることは、ユーザーから見て自然な進化に見える。しかし、それだけでは、電動化が当たり前の時代にプリウスとしての商品価値としてインパクトに欠ける。
こうしたなか、「2035年想定プリウス」が、富士山麓に生まれるトヨタの近未来型実験都市ウーブンシティで実際に使われることが考えられる。
キーポイントは「ユーザーがどのように使うのか?」だ。
ウーブンシティには、公共交通としてオンデマンド型自動運転車eパレット、超小型モビリティのシーポッド、さらにトヨタが歩行領域EVと呼ぶ立ち乗り式小型EVや電動くるまいすなど、さまざまな電動車が混在することになる。
そうしたシティ内移動で、2035年プリウスの必要性はどこになるのか?
シティ内とシティ外を行き来するために、水素を燃料とする燃料電池車と2035年プリウスとのすみ分けをどうするのか?
次世代トヨタの象徴に
次に、自動運転だ。
今回の会見で、ウーブン・プラネット・グループCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)である鯉渕健氏は、乗用車(オーナーカー)ではトヨタがチームメイトテクノロジー・アドバンスドドライブと呼ぶ技術を2021年内に発売することを明らかにした。
また、クルマのシステムが運転の主体となるレベル3の実用化に対して、社会需要性と技術面でさらなる開発と検証が必要という発言が鯉渕CTOからあった。
つまり、2021年内に発売チームメイトテクノロジー・アドバンスドドライブは、ホンダがレジェンドで採用する、運転が主体がクルマのシステムとなるレベル3ではなく、運転の主体がドライバーであるレベル2の高度な領域にとどまる可能性がある。
トヨタとしては、レベル3またはレベル4の自動運転は、レクサスLSをベースとした車両での公道実験を続けているものの、こちらはあくまでも公共交通(サービスカー)での導入を念頭としている。
こうした現状を踏まえて、2035年プリウスの自動運転レベルがどうなるのか?
電動化、自動運転、さらに通信によるコネクテッドサービスを含めて、2035年プリウスがウーブンシティの中を走ることになるのだろう。
2035年プリウスは、次世代トヨタ/レクサスを象徴するクルマとして登場することが大いに期待される。
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みんなのコメント
プリウスにはハイブリッド(E-fuel)、EV、FCEVのラインアップがあります。航続距離はどの車種も2000キロ超えています。全車レベル4自動運転搭載です。他社はレベル4で事故を起こしまくりですが、幸いトヨタのレベル4は無事故です。
トヨタの世界販売台数は2670万台です。2位はヒュンダイ3位VWですがいずれも1000万台を下回っています。2025年あたりの電池革命で大きな差が開きました。
しかし残念ながらEVもFCEVも商用車以外では全世界で全く普及していません。商用車も含めてシェアは全世界でEVが7%、FCEVが3%です。残りはすべて。。。