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アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオ試乗 SUVらしからぬ運動性能

掲載 更新
アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオ試乗 SUVらしからぬ運動性能

もくじ

どんなクルマ?
ー 夢想していたクルマが現れた
ー 曲線美のボディにフェラーリ譲りのV6を搭載

初試乗、ボルボXC40 制約多くも工夫で克服 小型SUVをリードできると判断

どんな感じ?
ー イタリア流の洒落たインテリア
ー 輝くシャシーバランスとエグゾーストノート
ー 思わずDNAを「レース」にしたくなる

「買い」か?
ー ステルヴィオほど運転を楽しめるSUVは希少

スペック
ー アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオのスペック

どんなクルマ?

夢想していたクルマが現れた

少し前に、500ps以上の最高出力を持つSUVがアルファ・ロメオから発表されると予想していたことがあったが、あくまでも夢想に近いものだった。そんな予想をした理由は、世界的なSUV人気の高まりに加えて、ハイパワーなドライバーズカーを提供すれば、アルファ・ロメオ自身の若返りも見込めるから、ということだった。

そんな身勝手な考えが現実になったクルマが、今回のステルヴィオ・クアドリフォリオとなるだろう。

ステルヴィオには、前輪を駆動するドライブシャフトと、高いグランドクリアランスが追加されているが、基本的には4ドアサルーンのジュリア・クアドリフォリオを仕立てたレシピに近いもの。

曲線美のボディにフェラーリ譲りのV6を搭載

つまり、ジュリアと同じく、510psにまでチューニングされたフェラーリ製のツインターボV6を搭載する。さらに、オーバーフェンダーやボンネットに開けられたエアベントが加わり、美しい曲面構成ながら、挑戦的なエクステリアデザインをまとう。

全体的に外側に突っ張ったスタンスは、ディーゼル仕様のキャシュカイなど一般的なSUVが持つイメージと比較すると、かなりの迫力を持っていると思う。

通常、高められた車高はハンドリング面では不利となるのだが、アラブ首長国連邦でテストした際のガラスのように平滑な路面では、優れた印象を残してくれた。

一方で、融雪剤が撒かれ轍が目立つ、英国ウェールズ州ブレコン・ビーコンズの峠道では、どんな振る舞いを見せてくれるのだろう。ジュリア・クアドリフォリオと同様に滑らかで懐の深いハンドリングを得ているのか、興味が高まる。

どんな感じ?

イタリア流の洒落たインテリア

クルマの雰囲気は、明らかにドイツ車とは異なる。

ダッシュボードやドアなどのインテリア化粧パネルには、溢れんばかりに光沢仕上げのカーボンファイバーが用いられ、いつでも自分の顔を映して確認することができる。おしゃれ好きのイタリアっぽい。

ステアリングホイールは、カーボンファイバーのパネルとアルカンターラで覆われている。

レザーもふんだんに用いられてはいるが、目線より下の足元の部分には、プラスティックが露出した箇所も多い。7万ポンド(1050万円)に迫る価格のクルマなのに。また、レザーに並ぶステッチのコントラストは美しいが、そのピッチは完璧に整然としているわけではない。

操作スイッチ周りのデザインも、標準モデルのステルヴィオと同様に新鮮味には欠ける。

しかし、組み立て品質は確かなもので、個性も豊かだと思う。全体的に快適で魅力的な車内ではあるが、シート表面の滑りがより少なく、着座位置ももう少し低ければ、さらに素晴らしい仕上がりになるだろう。

背が高く車重のかさむクルマの通例とは異なり、ステルヴィオの運転感覚はとてもコントローラブルなはず。車内観察はこれくらいにして、走り出してみよう。

輝くシャシーバランスとエグゾーストノート

今回のテスト車両はゴツゴツしたウインタータイヤを履いていたものの、後輪駆動ベースによるシャシーバランスの高さが光る。今までのSUVで、ステルヴィオほどの走りを見せたクルマはあっただろうか。

基本的に、幅が285もある太いリアタイヤが滑り出すまでは後輪駆動となり、変化する路面状況に応じて、61.1kg-mに達するトルクの最大で50%がフロントタイヤへ伝達される。

アルファ・ロメオによると、0-100km/h加速は3.8秒で、ポルシェ911GTSのPDK仕様より0.1秒遅いだけ。不足はない。

そして、このドライブトレインこそ、ステルヴィオを特徴づけるものと言える。

見事に制御される4輪駆動システムと、暴力的なまでに強力なエンジンが組み合わさることで、国境をまたぐような長距離移動も、驚異的なスピードでこなすことが可能なのだ。

しかもこれに美声が加わる。

確かにダウンサイジングターボ・エンジンには違いない。しかし、ドライビングモードを選択するDNAスイッチを「ダイナミック」にすればアグレッシブさは増すし、電子制御が介入しなくなる「レース」にすれば、シフトアップの度に笑顔が溢れるような咆哮が響き渡る。そして、不自然に作った感じがしない音質も、とても好印象なところ。

ウェールズ州のカーブが続く道を走れば、軽快で俊敏なステアリングフィールに心が躍る。フェラーリ譲りの、巨大なパドルシフトが付いたステアリングホイールを操っていると、このクルマが巨体の持ち主だということを、思わず忘れさせてくれる。

リア・ディファレンシャルの左右に備わる電子制御クラッチを制御して、トルク配分を左右で自在に調整するトルクベクタリング機能も備わる。リアサスペンションも確かな駆動力を発生させる充分なしなやかさがあり、ステルヴィオの見た目とは裏腹に、コーナリングマナーは優れていると言えるだろう。

偽りなく、秀逸なドライブトレインだと思う。

思わずDNAを「レース」にしたくなる

アルファ・ロメオによれば、一般道を走行する場合のDNAスイッチのポジションは、アダプティブダンパーが柔らかい設定になる「ナチュラル」が良いとのことだった。

だがこのシャシー特性のおかげで、「レース」を選択せずにはいられないのだ。

レースモードにすれば、8速ATの変速スピードはキビキビとしたものになり、スロットルレスポンスも鋭く変化。このエンジンのターボラグの小ささを実感し、満喫できるようになる。さらに、アクセルペダルを操って、交差点程度のコーナーでも比較的穏やかなスピードで、スムーズにドリフトを決められることにも気付けるだろう。

1845kgもあるSUVに期待するような運動性能ではないかもしれないが、フェラーリ458スペチアーレのシャシー技術者が手を加えるとどうなるか、よく理解できる仕上がりではないだろうか。

そんな美しいアルファ・ロメオの盾に傷が付いているとするなら、標準装備となる、鋳鉄製のブレーキディスク。しっかり効き初めるまでのブレーキペダルのトラベル量が多すぎるのだ。今回はウインタータイヤだったことを加味しても、感触は良くなかった。

さらに、特に低速域での乗り心地も、段差を超えた際などでのラフさが目立っていた。これが、スピードの増加に比例して大きく改善するなら、多少目もつぶれるのだが。

最後に燃費にも触れておこう。実際は、高速道路のペースでも10.2km/ℓ程しか走らない。ファミリーカーの候補として、選択肢から外れてしまう数値かもしれない。

「買い」か?

ステルヴィオほど運転を楽しめるSUVは希少

このステルヴィオより、運転が楽しめるSUVを見つけることは難しい。

路上に出れば、ポルシェ・マカン・ターボをつまらなく感じさせ、BMW X5Mの努力も無駄に感じさせてしまう存在だと思う。ステルヴィオ・クアドリフォリオは活力に溢れており、重量級の野獣の一員とは一線を画する。 さらに、英国においては俊敏性と安全性能も大きな魅力となる。

もしダイナミック性能がここまで秀でていなければ、ボンネットに穿たれたエアベントや四葉のクローバーのロゴは、少しパロディめいて見えてしまったことだろう。

これから予定しているポルシェ・マカンとの比較テストでは、明確なコントラストを生むことになりそうだ。

ただし、もしステルヴィオ・クアドリフォリオを考えているなら、改めて自身に問い正してほしいのが、背の高いクルマである必要性がどれほどのものなのか、という点。

ステルヴィオの最速仕様に乗って笑顔になれるのなら、ジュリア・クアドリフォリオに乗れば、もっと大きな笑顔をつくることができるはずだから。

アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオのスペック

■価格 6万9500ポンド(1042万円)
■全長×全幅×全高 4702×1955×1681mm
■最高速度 283km/h
■0-100km/h加速 3.8秒
■燃費 11.1km/ℓ
■CO2排出量 210g/km
■乾燥重量 1830kg
■パワートレイン V型6気筒2891ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 510ps/6500rpm
■最大トルク 61.1kg-m/2500rpm
■ギアボックス 8速AT

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