ムダの少ないスタイリングの2シーター
1950年代のアメリカ車は、過剰なほど派手で巨大だった。その頃の英国人には、相容れないようなスタイルだったといえる。だが、1955年のフォード・サンダーバードも当時の代表的なモデルといえるが、そんなイメージとは少々異なるところが面白い。
<span>【画像】初代サンダーバードとXK140 同時期のライバル、C1コルベットも 全64枚</span>
フォードが上流志向のパーソナルカーとして生み出したのは、豊満なボディを沢山のクロームメッキで飾ったモデルではなかった。ムダの少ないスタイリングが与えられた、2シーター・コンバーチブルだった。
スタイリッシュでコンパクトなボディに、パワフルな4.8L V型8気筒エンジンによる楽しい走り。企業の経営層やビバリーヒルズのご婦人へ、優れた性能を提供した。Tバードという愛称も付けられ、すぐに広い支持を集める存在になった。
ミシガン州ディアボーンを拠点とするフォードが、上級モデル市場への足掛かりとしたのが、このサンダーバード。ブランドのイメージを高めつつ、富裕層へ迎え入れてもらえるモデルを生み出すことに成功したといえる。
1940年代後半、フォードの上級ブランドに当たるリンカーンでは、大型サルーンのコンチネンタルに空白期間が生じていた。フォード系のモデルは、裕福なドライバーの相手にはされなくなっていたのだ。
ソフトトップすらオプション設定
当時のフォードといえば、手頃で信頼性は高いものの、クルマとしての興奮度は低いというイメージがつきまとっていた。それを振り払おうとしたのが、コンチネンタルMkIIより一足先に登場した、初代サンダーバードだ。
上品なコンバーチブルがベースとしたのは、一般的な既存のモデル。スタイリングも同時期の平凡なフォード車に似ていたものの、ずっとハンサムに仕上がっていた。
2シーターのサンダーバードは、オープンであることが前提。グラスファイバー製のハードトップだけでなく、ソフトトップすら75ドルのオプション設定だった。
華やかな見た目のコンバーチブルは、ショールームに客足を向ける花型モデルにもなる。サルーンのフェアレーンやステーションワゴンのカントリー・スクワイヤへ興味を抱いてもらうきっかけになることを、フォードは理解してもいた。
ちなみに車名に用いられたサンダーバードとは、アメリカの先住民族に伝わる、ワシのような大きな鳥の神。自由自在に雷を落とせると信じられていた。北米で支持を集める欧州製のスポーツカーに対する、フォードなりの反発だったのだろう。
同時に、フォードとシボレーとの駆け引きで生まれたモデルでもあった。その頃の2社は次期モデルをスパイすることで、お互いに牽制し合っていた。シボレーがスポーツカーを開発中だという噂を耳にした、フォードによる回頭でもあったのだ。
V型8気筒エンジンに3速MTを搭載
初代サンダーバードが発表されたのは、1954年初頭。その年の秋に、1955年モデルとして販売が始まっている。ライバルの初代シボレー・コルベットへ寄せられた不満へ対応するように、スチール製ボディと開閉できるサイドウインドウを備えている。
シャシーは、フォード・メインラインやカスタムラインなどに用いられていた、ボックスセクション・タイプを利用。フロント・サスペンションはボールジョイントの独立懸架式で、同年式のサルーンより車高は抑えられている。
エンジンは292cu.in、4785ccのV型8気筒で、専用のデュアル・ヘッダーとエグゾーストを採用。圧縮比やギア比などが相乗し、最高出力204ps、最高速度185km/h以上と、当時のアメリカ車としては高い性能を誇った。
トランスミッションは、フォードOマティックと呼ばれた3速MTで、6気筒エンジンを積んだ生ぬるい初代シボレー・コルベットを余裕で負かす走りを披露。車重1500kgのグラマーな2シーターは、当時の多くの欧州製2シーター・モデルをも凌駕した。
1955年の新車価格は2692ドルからと、かなり強気。スイフト・シュアと呼ばれたアップグレード・ブレーキや、マスター・ガイドとフォードが名付けたパワーステアリング、パワーウインドウなどを装備すれば、4000ドルに限りなく近づいた。
それでも発売初日、全米のフォードには合計3500台のオーダーが集まったという。だが年間では伸び悩み、合計の販売台数は1万6155台。悪くない数字だったが、1958年から4シーターへの変更を決めるのには不足ない、低調な売れ行きではあった。
同時期に英国で作られていたジャガーXK140
初代のモデルライフは3年間と短かったが、レーシングドライバーのファン・マヌエル・ファンジオや女優のマリリン・モンローまで、少なくない著名人もサンダーバードへ恋に落ちている。セカンドカーとして、富の象徴にもなった。
1956年には、ハードトップのリアピラーに丸い窓がオプションで追加。スペアタイヤは、コンチネンタル風にリアバンパー上へ載るように変更された。そのおかげで、荷室空間には更に余裕が生まれた。前後の重量バランスも改善されている。
V8エンジンには、排気量312cu.in、5.1L版も登場。218psから228psまで、仕様で異なる最高出力が与えられている。
最終年の1957年には鋭いテールフィンと肉厚なバンパー、新しいメーターパネルなどを獲得し、全長は約140mm成長。スペアタイヤは広くなったトランク内へ戻された。
エンジンにも手が加えられ、4.8Lで215psへ向上。5.1Lでは、カムシャフトの違いで248psから273psまで選べるようになっている。
2基の4バレル・キャブレターを積み、スーパーチャージャーを組めば304psまで高めることも可能だったが、オーダー数は少なかった。フォードが、サンダーバードをスポーツカーではないと強調してたことも理由かもしれない。
ちょうど同じ頃、ジャガーは淡々とXK140を作り続けていた。XK120を初代とする2代目に当たる、生粋のブリティッシュ・スポーツカーだった。北米市場を強く意識したモデルで、サンダーバードと比べるのも的外れではないだろう。
この続きは中編にて。
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