運営元:外車王SOKEN
著者 :木谷 宗義
「旧車」とカテゴライズされるのは19○○年~?その定義づけを考えてみた
“らしさ”というのは難しい問題で、かつて「プリウスらしさ」といえば、「エコカーの代表」であることでしたが、今は「ハイブリッド車の先進形」であることがプリウスらしさとなっています。
そう考えたとき、“らしさ”とは一体なんでしょうか? メルセデスらしさ、フェラーリらしさ、シトロエンらしさとは……?
そんな中でも、一貫した“らしさ”を持ち続けているメーカーがあります。「駆けぬける歓び」のスローガンのもと、質感高い走りの楽しさを追求するBMWです(読み方はビーエムダブリューです、念のため)。
今でこそFF(前輪駆動)モデルがラインナップされていたり、4WDの「X Drive」が主力になりつつあったりしますが、基本はエンジン縦置きのFR(後輪駆動)。そして、かつてシルクのように滑らかであることから「シルキーシックス」と呼ばれた6気筒自然吸気エンジンに代表される、スムーズなエンジン(今は電動モデルも増えたけど)が、BMWの真骨頂とされてきました。
中古車マニアーズ的には、この「FR+6気筒」で「らしさ」を堪能できるモデルに注目したいもの。そうなれば、小排気量化やターボ化が進む前、年代でいうと2000年前後がおいしそうに見えてきます。3/5/7シリーズ、それぞれに魅力はあるものの、コンパクトで身のこなしも軽い3シリーズを今回の“マニアーズ対象”といたしましょう。
■ライトウェイトスポーツサルーン
2000年前後のBMW3シリーズといえば、1998年~2007年にかけて生産された3シリーズとして4代目にあるモデル。コードネーム「E46」が該当します。
全長4470mm×全幅1740mmのボディは、現行「カローラセダン」とほぼ同じ。もっといえば、S14やS15世代の「シルビア」にも似たサイズです。車重はもっとも軽い318i(4気筒ですが)で、1330kg。今の水準で考えれば、コンパクトなだけでなくライトウェイトなクルマといえるでしょう。今の「GR86」が1260~1290kgですから、“ハチロク並み”といっても過言ではないかもしれません(ちょっと過言かも……)。
ボディバリエーションは、4ドアセダン、2ドアクーペ、ツーリング(ステーションワゴン)、そしてカブリオレと多彩。さらに1シリーズがなかった当時、BMWのエントリーモデルとして2ドアクーペのテールを切り落としたようなコンパクトハッチの「ti」も、追加されました(日本でも299.8万円~と安価だった)。
■「らしさ」は全車に詰まっている
エンジンバリエーションも多岐にわたり、4気筒1.8リッターから、最強スペック「M3」の6気筒3.2リッター(343ps!)まで。ドイツ車の常で、マイナーチェンジによりエンジンの世代交代も行われたため、数え切れないほどのタイプが存在しました。
主力の6気筒も、初期のころは320i/323i/328iだったのが、徐々に入れ替わり320i/325i/330iとなるなど(しかも、320iが2.2リッターになったりするからややこしい)、実に多くの仕様が販売されたのです(もちろん欧州にはディーゼルの320dなども)。
BMWマニアに聞けば「これこそ至高!」というエンジン型式もあるようですが、どれを選んだとしてもシルキーシックスの味は十分(だと筆者は思います)。FRならではの後輪から押し出される加速感と前後重量配分のよさ(50:50がBMWのこだわり)からひらりひらりとワインディングをドライブする様は、まさに“駆けぬける歓び”。また、カチっとしたタッチのブレーキも、“駆けぬける歓び”を支える要素のひとつです(止まりゆくときも歓び?)。
ちなみに、今回は6気筒にフィーチャーしていますが、4気筒エンジンでも回せば回すほどスムーズになり、シルキーなフィーリングが味わえることを付け加えておきましょう(筆者、所有歴あり)。鼻先の軽さによる軽快感もまた、“ならでは”の良さがあります(F30の3気筒もいいらしいですね)。
■悩むべきM sportの存在
E46型3シリーズは、どの年式のどのモデルを選んでも、BMWの風味は十分に味わえると考えます。だから、あまりエンジン型式のこだわらず、程度と内外装の仕様でカジュアルに選ぶのが中古車マニアーズ的ビーエムライフといえるでしょう。
ボディタイプはもちろん、年式やグレードによっては左ハンドルやMTも選べるので、「左MTで!」というディープマニアーズな方にも安心(?)。超絶希少ではあるものの、グレー内装やベージュ内装も存在します(tiにはブルーやグリーンもあった!)。
もっとも悩むところは、エンジンよりも足回りかもしれません。この時代のM sportのサスペンションはガッチガチに固く、ルノーでいえばシャシースポールではなくシャシーカップのほう(わかりづらい)。また、前後異サイズのファットなタイヤを装着することもあって、しっかりステアリングを握っていないと轍でハンドルを取られるほどハードな仕様なのです。M sportの“運転してるぜ感”の強さは格別ですが、好みがわかれるところでしょう。
■なぜ、E90ではなくE46なのか?
冒頭で「“らしさ”というは難しい問題で……」と書きました。6気筒の自然吸気エンジンを条件とするなら、E46の次の世代となるE90型も当てはまるからです。では、なぜ今回、E46としたのか? それはE46がすでにクラシックの領域に入ってきたから。
E46のデビューは、1998年。おおげさにいえば、20世紀のクルマです。スタイリングも、ボディをぐるりと一周する黒いモールや、明確にヘッドライトとわかれるオレンジ色のウインカーなど、現代のクルマにはなくなった1990年代までのエッセンスが散りばめられています。カーナビ装着を前提としない低く構えたインストルメントパネルも、もはやクラシックの域でしょう。
E90になると電子制御のアクティブステアリングやiDriveインフォテインメントシステム、ランフラットタイヤなどが採用され、一気に21世紀的になります。当時はこの進化に驚いたものですが、今あえて乗るならアナログチックな部分を感じられる E46を選んでみては?と思うのです。
加えて、1998年デビューのE46は、20世紀に登場した最後のBMW車でもあります。そう考えると、E46型3シリーズは20世紀BMWの集大成といえないでしょうか。E90がBMWらしくないかといえば決してそんなことはなく、むしろBMWらしさド直球。だからこそ、“らしさ”というのは難しいものであり、また奥が深いものなのです。
[画像/BMW・ライター/木谷宗義]
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2004年式 E46 330i Mspですが、いつかMTに換装し、駆け抜けるまでは乗り続けたい…