6年ぶりに会場を薬師寺に変えて復活
奈良県にある世界遺産『薬師寺』の境内を舞台に、『コンコルソ・デレガンツァ・ジャパン2025』が3月15~16日に開催された。
【画像】世界遺産薬師寺の境内に国宝級クラシックカー約60台が集結! 全118枚
2016年12月に京都は元離宮二条城で『コンコルソデレガンツァ京都2016』を開催したのを皮切りに、2018年、2019年と続けて行われてきたコンクールデレガンスだが、コロナ禍により中断。そしてついに6年ぶりに会場を薬師寺に変えて、その名もコンコルソ・デレガンツァ・ジャパンとして、国際レベルのコンクールデレガンスが復活を遂げた。
約60台が薬師寺の境内に展示された光景は日本ならではのものであり、世界遺産の会場を使ったコンクールデレガンスは、世界に類を見ない特別なシチュエーションといえる。
今回のコンクールで特徴的だったのは、特別公開として行われた17時から22時までの『ナイトタイムスペシャルセレブレーション』と翌朝5時30分から8時30分までの『モーニングタイムスペシャルセレブレーション』だ。
前者は日没後のマジックアワーを経て、夜間は通常非公開である薬師寺白鳳伽藍 (はくほうがらん) に、エントリー車両が集結。幻想的な空間でクラシックカーとの競演を味わえ、後者は同じ場所で日の出前のマジックアワーを楽しめるものだ。
日本で歴史を刻んできたクラシックカーたち
さて、これまでこのコンクールデレガンスの出展車両は欧米からのエントリーが中心であったが、今回は日本にも素晴らしいヒストリックカーやクラシックカーが存在することを世界に発信しようと、日本からのエントリーをメインにし、1921年のフィアット501SSテスタシルバーニをはじめとした戦前モデルだけでも14台が出展。
40年以上前から日本にあるアストン マーティン・インターナショナルや同じくアストン マーティンの中でも5台しか製造されなかったCタイプ、コンクールデレガンスらしいエレガントなSS1ライトサルーン、ドラージュD6-70。そして日本らしいクルマとして、カーグラフィック誌名誉編集長であった故小林彰太郎氏が愛し、いまは30代のオーナーに引き継がれたオースチン・セブンタイプBクーペなどがその美しい姿を観客に披露した。
戦後ではイタリアのバルケッタだけでなく、1947年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステのオープンカークラスで優勝した経歴を持つワンオフのフィアット1100Cヴィラデステや、トヨタ博物館からトヨタ2000GT(ザ・ボンドカー)などが並べられ、大いに注目を集めていた。
同時にカロッツェリア・ザガートのクルマたちもフィーチャーし、ザガートの手になるクルマが9台も集結。本国からカロッツェリア・ザガートの3代目となるアンドレア・ザガート氏も来日し、大いに会を盛り上げていた。
話題の中心はストラトス・ゼロ!
しかし、なんといっても今回の話題をさらったのは、アメリカからエントリーされた『ストラトス・ゼロ』(エントリー名はランチア・ストラトスHFゼロ)だ。
カロッツェリア・ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニ氏の手により描かれ、1970年のトリノ・ショーでデビューしたストラトス・ゼロは、全高840mmという低さやフロントウインドウを開閉することで乗り降りする奇抜さとともに、その際にはステアリングがトラックなどのようにアップライトになることで乗り降りをしやすくするという、実用性も備えてもいた。
さて、そういったクルマを審査する審査員もそうそうたる顔ぶれだ。かつて日産のデザインを率いた中村史郎氏、カロッツェリア・ピニンファリーナでマセラティ・クアトロポルテやエンツォ・フェラーリなどをデザインした奥山清行氏、アンドレア・ザガート氏、ティエリー・ブーツェン氏をはじめ、FIVA会長のティド・ブレスター氏などが厳正なる審査を行った。
その結果、コンコルソ・デレガンツァ・ジャパン2025のウイナーがストラトス・ゼロとなったのは、当然の結果ともいえる。
グローバルレベルのコンクールデレガンス
初日の午後から雨足が徐々に強くなり、朝夕のマジックアワーを楽しむことはできなかったが、それでも境内に並んだ宝石のようなクルマたちを眺めているだけで幸せな時間を過ごすことができた。そしてそのほとんどのクルマが、実際に走らせることができるコンディションを保っていることも魅力だ。
コンクールコンディションというと、どうしても磨き上げて飾ってあるクルマと思ってしまうが、近年ではペブルビーチのコンクールデレガンスや、イタリアはコモ湖で行われるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステでも、実際に公道を走らせることを評価項目に挙げているほど、実走は重要視されている。
コンコルソ・デレガンツァ・ジャパンでも、これは搬入のためだが、可能な限り集合場所から実際に走らせて境内に乗り入れる方式がとられたのも、その一環ととらえていいだろう。
このようにグローバルレベルのコンクールデレガンスを日本で見ることができるのは、幸せ以外の何物でもない。ぜひ来年以降も継続して開催してほしい。
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