まったく新しいボディシェル
text:AUTOCAR UK編集部
【画像】メルセデスの軽量スポーツカー【次期SLを現行モデルやAMG GTとじっくり比較する】 全118枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
メルセデスAMGは、新型SLの公開に向けて準備を進めているようだ。新たに発見されたプロトタイプはカモフラージュも少なく、クルマの最終的なスタイリングを見ることができる。
メルセデスは最近、SLに採用するアルミニウム複合材のボディシェルの詳細を公開したばかりだ。先代のSLや現行のAMG GTとはまったく異なる構造で、アルミニウム製のスペースフレームと「自立構造」を組み合わせている。
メルセデスは、この新型SLが2+2のシートアレンジを採用し、より多様なパワートレインのオプションに対応するため、開発プロセスは特に困難だったとしている。「横方向と縦方向のダイナミクスに重点を置いた、ブランドの特徴であるドライビング・パフォーマンスを提示するとともに、快適性と安全性の面でも高い期待に応える」ことを優先したという。
軽量化と剛性のバランスを考慮して、アルミニウム、スチール、マグネシウムの複合材料を使用し、剛性は現行モデルに比べて18%向上している。横方向の剛性はAMG GTロードスターと比較して50%向上、縦方向は40%向上したという。
ドア、ボンネット、トランクリッドなどの外装部品を除いたボディシェルの重量は270kgとなる。
この生まれ変わったオープンカーは、ハイブリッド化された直6とV8エンジンを搭載し、ポルシェ911カブリオレと対決することになる。
また、SLはAMGブランドでのみ販売され、完全可変式の4マチック+が採用されることも確認している。開発の大半はシミュレーションで行われたが、最終的にはニュルブルクリンク北コースでの走行テストが予定されており、SLのスポーツ性を示唆している。
快速グランドツアラー
これまで得られたプロトタイプの画像から、複数のバリエーションがどのように差別化されるかが見えてきている。円形のエグゾーストを持つプロトタイプは、エントリーレベルのハイブリッド(SL 450 EQブースト)と考えられ、よりアグレッシブなエグゾーストと大型リアスポイラーを持つタイプは、最上位モデルのSL 63 AMGと予想されている。
デザインは、丸みを帯びたリアエンド、長いボンネット、スリムなテールライトなど、メルセデスAMG GTと明らかにファミリー的な類似性が見られる。
SLは、メルセデス・ベンツのルーツであるモータースポーツからインスピレーションを得て、より軽く、より速く、より魅力的なモデルとして復活する予定だ。これまでの7世代にわたり続いてきたSLの歴史の中で、AMGが開発を統括するのは初めてのことだ。
昨年、AMGのトビアス・ムアースCEO(当時)は、SLが次期AMG GTと「連携」することを認めた。この2つのモデルは、モジュラー・スポーツ・アーキテクチャー(MSA)と呼ばれるアルミニウムを多用したプラットフォームを共有することで、メルセデスの最も高級なモデルラインである2台のスケールメリットと収益性を高めることができる。
ムアースは次のように述べた。
「わたし達は、SLの歴史的なDNAを取り戻します。今回は、はるかにスポーティになっています。ドライビング・ダイナミクスと快適性を完璧に調和させた、クルーザーのようなモデルになるでしょう」
また、8代目SLは、先代と同様にロードスターのみの設定となることも明らかになっている。英国での販売開始は2021年末頃を予定している。
SLとGTの共通化
メルセデスの高級スポーツカーであるSLとGTは、プラットフォームを共有するだけでなく、アクスルアッセンブリー、サスペンション、ステアリングシステム、48V電気系統、ハイブリッド・ドライブトレインなどを共通化し、コスト削減と生産効率の向上を図る見込みだ。新型SLおよびGTは、ドイツのジンデルフィンゲンにあるメルセデスの工場で並行して生産される。
SLCの後継モデルを同じプラットフォームで開発するという初期の計画は、販売台数が減少していることから断念することになった。
新型SLの初期プロトタイプは、Sクラス・クーペを短縮したボディの下に新しいプラットフォームを使用してサーキットでテストされていた。このクルマは、GTのようにデュアルクラッチ式の自動変速機をリアアクスルに内蔵したトランスアクスル方式を採用すると噂されている。
しかし、プロトタイプの寸法を見る限り、全長4630mm、全幅1870mm、全高1310mmの現行モデルよりもわずかに大きいサイズになると思われる。
MSAプラットフォームの採用は、新型SLのスタイリングにも好影響を与えていると言われている。そのプロポーションは、Cクラス、Eクラス、CLS、Sクラスなどのセダンモデルとプラットフォームを共有する現行モデルよりも、クラシックなロードスターの初期型に近いものになるとされている。
メルセデスの関係者は、AUTOCARに対し次のように語った。
「新しいプラットフォームのおかげで、自由度が高まりました。フロントアクスルとフロント・ファイアーウォールの間の距離が長くなり、これにより、伝統的なプロポーションを実現しました」
また、現在のSLの折りたたみ式ハードトップを、よりコンパクトな布製に変更したことで、リアのスタイリングにも幅が出たと言われている。
「ハードトップルーフのパッケージングにより高さや幅に縛られることがなくなったため、特にリアははるかにシェイプアップされています」
SLにハイブリッドモデルを設定
メルセデスはSLに、直列6気筒およびV型8気筒のハイブリッドを設定し、標準モデルとAMGモデルの両方をラインナップする計画だ。
3.0L直6ターボ搭載し、約370psを発揮する「SL 450 EQブースト」と、スターターモーターとの組み合わせで22psアップする「SL 450 EQブースト」がエントリーモデルとなると思われる。
SL 450 EQブーストのマイルド・ハイブリッドをAMGチューニングした「SL 53」では、約435psと電動アシストによる22psアップが期待できる。
V8搭載モデルの中には、「SL 500 EQブースト」も含まれる。4.0L V8ターボを搭載し、出力はSL 53と同等だが、トルクは大幅に向上するだろう。
最上級モデルは「SL 63」で、4.0L V8ターボが搭載され、600ps以上の出力と30ps以上の電動ブーストが可能となる。V12エンジン搭載モデルが継続されるかどうかは不明だが、SL 63のパワーを考えると、その可能性は低いと思われる。
各エンジンには9速ATが組み合わされ、AMGモデルにはシフトタイムを短縮する電子制御パッケージ「スピードシフト」が採用される予定だ。
標準の後輪駆動に加えて4マチックの四輪駆動を設定するのではないかとの憶測もあるが、これはまだ確認されていない。
市場におけるSLの立ち位置は再定義されようとしているが、ラグジュアリー志向を放棄するわけではないので、インテリアは他のメルセデス車と同様に豪華なものになると予想される。
Sクラス・クーペのようなモデルよりもドライバー重視のクルマになるだろうが、半自動運転のドライブパイロット機能をはじめとする、メルセデス最新の運転支援システムがふんだんに盛り込まれている可能性も高い。
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