2026年から導入予定の新レギュレーションでは、F1マシンのベンチュリ効果の重要度が削減される予定であり、現在のように路面に近いところを走ることを求められる”敏感”なマシンとは一線を画すものになりそうだ。
2022年のレギュレーション改訂によりグラウンド・エフェクトカーが復活して以降、F1のエンジニアたちはそのパフォーマンスを最大限に引き出す方法を考え出すのに頭を悩ませてきた。
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特に難題だったのは、空力と足回りの柔軟性の妥協点を見つけることにあった。
現在のF1マシンは、路面の非常に近いところを走らなければいけない。グラウンド・エフェクトカーは、車体下と路面の間で発生する”ベンチュリ効果”でダウンフォースを発揮する仕組みになっており、路面に近ければ近いほど、このベンチュリ効果が大きくなるのだ。
ただそのためには、足回りを固くすることで、車体下と路面の間に生じる隙間は一定に保たなければいけない。マシンが上下に動くと、それだけ発生するダウンフォース量が変動してしまうということになり、車体がさらに上下に激しく跳ねるように動くポーパシングに悩まされることになる。ただ足回りが固くなると、サスペンションによって路面からの入力を受け止めにくくなるということに繋がり、それはそれでまた問題が生じるということになるのだ。
今年の初め、メルセデスのテクニカルディレクターであるジェームス・アリソンは、F1が現世代のマシンの特性に苦労していると語っていた。
「これは私の悩みの種だから何度も言っているが、個人的には良いことではないと思う」
そうアリソンは語った。
「ガレージから出る時に、マシンが路面からそれほどの隙間…… 数ミリしか空いていない状態で走るなんて、良いことだとは思わない」
2026年から施行される新たなレギュレーションに関する作業が進み、先日行なわれた世界モータースポーツ評議会で、レギュレーションの最新版が承認された。それによれば、今のようにマシンが路面の近いところを走らなければ、最大限のパフォーマンスを発揮できないという特徴は、変更されることになるようだ。
「現在の世代のマシンよりも、ベンチュリ効果ははるかに少ない」
FIAのシングルシーター担当責任者のニコラス・トンバジスはそう語った。
「現在のマシンほど、路面に近いところで走る必要はない車両を作りたかったんだ。だから、空力のメカニズムを少し緩めてみることになるはずだ」
アリソンは、アメリカGPの舞台となったサーキット・オブ・ジ・アメリカズのように、幅広い速度域のコーナーが点在するサーキットでは、車高の調整が特に難しくなっていると示唆していた。
「以前のルールでは、比較的単調な特性のコースでは、それに比較的特化したマシンを使うことができた」
「速度域が広くない場合には、コーナーと得意な部分が一致するようにマシンをセットアップすれば、どこかで失ったとしても酷い目に遭うことはなかった」
「しかしオースティンのように、マシンのパフォーマンスが試される範囲が広いサーキットに行くと……高速コーナー、低速コーナー、その中間、そしていくつかのストレートやバンプがあるサーキットでは、パフォーマンスが落ち込む部分(にどう対処するか)が試されることになる」
「つまりストレートエンドでダウンフォースが不足する症状にも悩まされるし、高速コーナーでの強さも維持しなければいけない。基本的に路面に近づくこと以外何もできないというこのルールで、マシンにこれら全ての条件をクリアさせるのは難しいんだ」
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