ボディカラーの人気トップ3は何といっても白・黒・シルバーといわれてきた。しかしメーカーは多様なニーズに応えるためにそのほかの色もラインナップに加えている。またカタログやWebなどに用いられるイメージカラーは、派手な明るい色が多い。
では、ディーラーではどのようにこれらのボディカラーを扱っているのだろうか。またリセールバリューの高い色、逆に不人気でセール価格で販売されている車などを、ディーラーマンはどのように考えているのかに迫る。
「いつかくる」なら知っておくべき!? 火山の噴火時 クルマは灰の上を走れるのか?
文/小林敦志
写真/ベストカー編集部、Adobe Stock(トップ画像=kimkimchin@Adobe Stock)
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■日本で人気なのはシルバーか白
トヨタ クラウン(3代目)。自家用車の人気カラーであった白を前面に押し出した『白いクラウンキャンペーン』を展開した
装着したいオプションを絞り込み、値引き交渉も順調に進み、いよいよ契約となると迷うのがボディカラー。
商談の最初の段階で、「お色などはお決まりですか?」とセールスマンが聞いてくることがあるが、ここで例えば「どれがいいかなあ」と悩んでいると、「シルバーメタリックなんかは無難ですね」などといきなりボディカラー決定に話をふってくることがある。
これはセールスマンが相手はどれぐらい買う気があるのか“探り”を入れてくる常套手段であり(どれにするか真剣に悩んでいるほど、新車を買う気満々ということ)、その後ボディカラーを絞り込ませることで買う気にさせるセールストークのひとつである。
1960年代後半、日本は“モータリゼーション”と呼ばれ、クルマがそれまでのタクシーやハイヤー、商用車などがメインのニーズから、自家用車としての普及がめざましくなっていった時期。
調度その時期となる1967年に3代目トヨペットクラウンがデビューしている。3代目クラウンはオーナードライバーへの販売促進を強化すべく、“白いクラウン”キャンペーンを展開した。
これは、ハイヤーや社用車でありがちな黒のボディカラーではなく、当時自家用車として人気の高かったソリッドホワイトをメインに押し出し、個人ユーザーの開拓をはかったのである。
古くから自家用車のボディカラーとして人気が高かったのがホワイトとなる。シルバーメタリックなどもあったのだが、まだまだ塗装面が弱く、その点ホワイトは塗装が強いとされていて人気を呼んだようだ。
それから半世紀あまりが経った令和の時代の販売現場では、「シルバーは無難な色で人気も高いですよ」といったことが商談でやりとりされることが目立つ。
ホワイトも依然として人気が高いのだが、雨が降れば黒い雨だれが発生し、その様子は“シマウマ”などともいわれ、その意味ではこまめな洗車が必要ともいえる。ただ塗装が強いということが広く伝わっており、相変わらず選ぶひとも多いようだ。
その点シルバーメタリックは、“シマウマ”化も目立たず、ボディ表面に砂ぼこりがのっていた状態での降雨や、晴れの日が続き大気中に砂ぼこりが多数舞っているなかでのにわか雨レベルの降雨などでのボディ汚れも、あまり気にならないレベルとなるので、“手間なし”という点でも人気があるようだ。
シルバーメタリックより暗いグレーメタリック系も人気が高いが、こちらは汚れが目立ってしまう。
白もシルバーも、日本らしいというか、「お通夜やお葬式にも乗って行ける」という点でも、日本人は選びがちな色とされている。
■ドイツ=シルバーメタリックはもう古い?
メルセデスベンツ Cクラス ステーションワゴン。モータースポーツではドイツのナショナルカラーだったシルバーだが、今ではすっかり「過去の色」となっているようだ
1980年代に青春を謳歌した世代では、“ドイツ車=シルバーメタリック”という、“鉄の掟”のようなものを覚えている人もいるはず。
当時日本車でもシルバーメタリックは当たり前のようにラインナップされていたが、当時の日本車はまだまだ塗装が弱く、乗り方次第では数年たつと塗装が剥げやすいといったことも珍しくなかった。
それに対し、ドイツ車は“鉄が厚い”ともいわれたボディに、しっかり塗装されたシルバーメタリックは、まさに別物のように映った。
しかし、令和のいま“ドイツ車=シルバーメタリック”は完全に崩壊しているとのこと。
あるメルセデスベンツ系新車販売ディーラー併設の認定中古車展示場では、「いまは白または黒系が圧倒的に人気は高く、リセールバリューも良いですね。シルバーメタリックの人気が高かったのは過去の話です」と聞いて筆者はがっかりした。
「実はシルバーメタリックですが、日本車でも、選ぶ人はまだ多いようですが、以前とは異なり車種によってはリセールバリューダウンになることも最近ではあるようです」とは事情通。白系もしくは黒系の人気が圧倒的に高いミニバンなどでは、その傾向が高いようである。
BMW系新車ディーラーでは、「ホワイトは女性ユーザーに人気が高いですね」という話も聞いたことがある。確かに街なかで見かけるドイツ車は白や黒が多い。しかし、単純に人気が高いだけではないようだ。
例えばBMW3シリーズでは、グレードによって選べなかったりもするが、全体で12色のボディカラーが用意され、そのうち11色がメタリックペイントとなっている。そしてオプションリストをみると、全グレードにわたりメタリックペイントがオプションとなっている(10万円高)。
BMW3シリーズ。用意された12色のボディカラーのうち11色がメタリックペイントとなっている
つまり標準ボディカラーはソリッドホワイトとなるアルビンホワイトしかないのである。ほかにメルセデスベンツCクラスステーションワゴンでも、ソリッドホワイト以外のメタリックペイントは有償オプションとなっている。
アウディA4でもS4を除けば標準ボディ色(有償とならない)はアイビスホワイトのみとなっている。
ちなみにVW(フォルクスワーゲン)では、ゴルフをサンプルとして見たが、オプションカラーは全8色(グレードにより選べないケースもあり)中、3色のみが有償色となっており、輸入車すべてが標準色はホワイトのみというわけでもない。ただ、白のみかどうかは別として、輸入車は在庫販売が前提となってくる。
生産地から船積みした段階から在庫となり、日本で購入希望者がいれば、船で海上輸送中から“売約済み”になるとされている。
船積みされるクルマの内容は日本からはリクエストは出せるが、基本的にはヘッドクォーターに“お任せ”となっており、お気に入りのオプションカラーが在庫にあったとしても、組み合わされるオプションが過剰であったりするとあきらめざるをえないこともあるようだ。
そうなってくると、比較的在庫に余裕のある、ボディカラーとオプションを装備した仕様に購入車種が落ち着くといったこともあるようだ。そうなれば、標準ボディ色の在庫比率が高まるのは自然の流れといえるだろう。
前出のメルセデスベンツ系の中古車展示場では、「新車で買う時の人気車と、中古車での人気車は異なります。例えばSクラスは新車として人気はありますが、中古車で乗りたいという人が少ないので、値落ちの早さはメルセデスベンツ車のなかでもトップクラスです。
さらに個性的なボディカラーですとなお値落ちが早くなります。セダン系全体についても新車では人気は高いですが、中古車では人気は低迷します。中古車人気を考えれば断然ステーションワゴンがおすすめです」と話してくれた。
シルバー系は有償色となるので、人気色と呼べるほど市中に流通していないとも話してくれた。
輸入車としては、筆者が大学生時代に初代VWゴルフ(ゴルフI)の後期モデル(ビッグテールと呼ばれたモデル)のなかでも、“モナコブルー”というボディカラーの中古車が気に入っていたのだが、モナコブルー以外のボディカラーとなる同年式車に比べてかなり中古車価格が高く手が出なかったことを覚えている。
このケースは新車ではあまり選ばれなかったものの、中古車では人気が高まったものの、台数が少ないことが影響したようだ。
■ボディーカラーで変わるリセールバリュー
トヨタ カローラ(9代目)
このような話では、全般的に黒系ボディカラーのリセールバリューが良いという話もある。アルファード&ヴェルファイアや、カスタム系ミニバンなど黒系ボディカラーが選ばれることが多く、新車販売時でも人気も高いが、筆者は以前9代目トヨタカローラで、カローラでは珍しいブラックマイカのボディカラーに乗っていた。
まわりの人からは「クルマそのものも立派になったけど、黒だからカローラとは思えなかった」といったことをよく言われた。
6年ほど乗ったあとにシリーズ10代目となる初代トヨタカローラアクシオに乗り換える時には、数が少ないブラックマイカということもあり、海外バイヤーが注目したとの話もあるが、最初の下取り査定額が55万円だったのだが、2カ月後に再査定したら77万円となった。
初代カローラアクシオでは有償色となるパールホワイトを選んだ。パールホワイトは日本国内では“鉄板人気色”とも呼ばれ。ほぼどのモデルでも有償色となるのだが、追加で払った分は間違いなくリセールバリューがアップするとされている。
トヨタ 初代カローラアクシオ(スーパーホワイト)
ただ、東アジアから中近東にかけては白系のボディカラーは“塗装されていない(下地の色との認識)”とする国が多く、これらの地域の国の中にはタクシーなどの営業車やはたらくクルマのボディカラーとされている。
インドでは一般的なタクシーは勝手にどんどん相乗りさせていくので、富裕層や外国人向けに“プライベートタクシー”というチャーター方式のタクシーがあった。だがいまはウーバー車両(アプリ配車サービス)として活躍しているが、それらの車両のボディカラーは白で統一されている。
日本仕様とアメリカ仕様のカローラセダンのボディカラーバリエーションは、ラインナップは多少異なるものの、数はほとんど同じとなっている。
しかし、アメリカではディーラーの展示場に並べられている在庫車から購入車種をセレクトし、気に入って購入すれば、その日に乗って帰ることができるので、新車ディーラーの多くは広大な展示スペースを持ち、どれだけ多くの展示車を並べることができるかが売り上げに直結するともいわれている。
その点では購入検討者としては実車を見て色味などをチェックできるというメリットも大きい。
■マイナーチェンジでカラバリが減る?
リセールバリューが伸びないといわれている赤系だが、女性が好む車種やカテゴリーの車はこの限りではないようだ
一方の日本では受注生産が大原則なので、ディーラーへ行っても実車で色味をチェックすることはできない。まずはカタログの配色表などで説明を受けるが、印刷物なので実際の色味とはかけ離れている。
カタログでは納得できないお客のためにセールスマンは、より実色に近い色見本を持っている。トヨタのショールームへ行くと、扱い車のミニカーがズラッと並んでいるが、これは色味を見てもらうものにもなっている。
現場のセールスマンは、「ボディカラーの選択で悩まれたり、こだわりのあるお客様については、弊社のストックヤードにお連れして実車をお見せすることもあります。
うやむやのなか受注しますと、納車の時に『イメージと異なった』としてキャンセル騒ぎにもなるケースがあります。とくに女性はこだわりを持たれるお客様が多いので慎重にご対応するようにしております」と話してくれた。
その女性ユーザーのなかには新車購入時に赤系のボディカラーを選択することが多い。先日街なかを歩いていると、某ドイツ系高級ブランドのソリッドレッド(真っ赤)のミドルサルーンが走ってきて驚いた。
赤系は同型車のなかでもリセールバリューのダウンが一般的には目立つとされている。ただ、軽自動車やコンパクトカーでは中古車でも女性が赤系を好んで選ぶケースも多いので、目立って値落ちすることはないとの話を聞いている。
流行色やパステル系など極端に個性的なボディカラーはこの限りではないようだ。「大ヒットした3代目プリウスでは、赤と同じぐらいにミントグリーンのボディカラーだと、下取り査定額が伸び悩み苦労しました」(現場セールスマン)とのこと。
「それでもボディカラーのラインナップを見ると、ソリッドブルーとか個性的なカラーがラインナップされている新車を見かけるが?」と疑問を持つ人も多いだろう。たとえ、世の中でシルバーやホワイトのクルマばかりとなっていても個性的なボディカラーのクルマに乗りたいという人は絶対数いる。
そして多様化する現代社会ではますますその数は増えているので、とくにそのモデルそのものが気に入って購入するケースの多い前期(マイナーチェンジ前)モデルではラインナップは多くなり、マイナーチェンジのタイミングなどで減らす傾向がある。
「塗料会社から購入する際は、最低量というものは250台分と聞いたことがあります。250台分単位で発注するので、特別限定車が250や500台となるのはそのためのようです。特別限定色ではなくとも、人気色との抱き合わせのように個性的なカラーを購入することもあるようです」とは事情通。
大人気のアルファードだが、高いリセールバリューを維持するのには、パールホワイトか黒系カラーが絶対条件となっている。赤系は海外への中古車輸出で人気があるともされているが、海外は移り気が激しいのでリスキーな選択といえる。
この赤系も含み、アルファードでは、パールホワイトもしくは黒系以外を選択すると、アルファードとしての恩恵は期待できないともいわれるほど、リセールバリューに差が出るようだ。
■選ばれる人気色には理由がある
現行型トヨタ カローラ(セレスタイトグレーメタリック)
新型車が出ると、“カタログカラー”とか、“イメージカラー”という、「変わった色だな」と注目されるようなボディカラーが設定される。筆者は2019年9月に現行カローラセダン及びツーリングの発売と同時に、カローラセダンを購入した。
その時選んだのは新規開発色となるセレスタイトグレーメタリック(薄いブルーメタリック)。個人的にも気に入っていたので選んだのだが、街なかで同じ色のカローラに出会うことは思ったより少ない印象を持っている。
現行カローラセダンは歴代モデルのなかでも個人的には造形美を感じる格好いいエクステリアだが、やはりシルバーメタリックが多い。
カローラを30年以上乗り継いでいる筆者が見ても、「シルバーメタリックだと映えるなあ」と思っているので、マイナーチェンジモデルに乗り換える時には、カローラなら目立ったリセールバリューダウンもなさそうなので、シルバーメタリックにしようと考えている。
最寄り駅まで利用する路線バスの通り沿いに、ブラックマイカの現行カローラセダンが置いてあるのだが、こちらも存在感はかなりあって魅力を感じる。だが、以前ブラックマイカに乗っている時には汚れが気になって洗車ばかりしていたので、「いいなあ」とは思うがなかなか触手は動かない。
また通算で11代目、アクシオで2代目の前期モデルでもブラックマイカを選んだ。
トヨタ カローラアクシオ(2代目)
当時はすでに気候変動が問題化されており、酷暑というような暑い日が続いていたある日の午後にエアコン全開で運転していたのだが、あまりの高温と強い日差しをボディが吸収したようで、なんかクラクラしながら運転したことがあったことをいまも覚えている。
それでも、カローラあたりでは新車購入時に黒系カラーを選ぶ人が少ないので、中古車では人気が出るそうである。
また、白系やシルバー系は修理時に色を合わせやすいのも魅力的とされている。輸入車ではアルミなど鉄以外の素材がボディでも多用されているので板金修理といった概念はなくなりつつある。
鉄の使用が圧倒的に多い日本車でもドアやフェンダーなどはパネル交換対応というケースも多くなってきているが、それでも色褪せも少なく板金修理やパネル交換をしてもよりチグハグになりにくいと考えて選ぶひとも多いようだ。
シルバー系は人気というよりは選ばれやすい色となっているようだが、当然世の中には溢れているので下取り査定額が特によくなるということはない。しかしいまだに多くの車種では極端に値落ちしない“無難な”色といえるのである。
新車で購入して乗り潰すのであれば、何も考えずに好きなボディカラーを選べばそれがベストと言えよう。ただし、いまの新車販売市場では残価設定ローンの利用が増えてきたこともあり、10年以上の長期保有と2回目車検ぐらいまでの短期保有の両極に分かれる傾向にある。
保有車に価値が十分残る間に乗り換えを考えているのならば、やはり下取りや売却に出すときに、より良い条件で手放すことを考えたチョイスが必要となるだろう。
「新車時の人気と、中古車での人気の傾向は明らかに異なる」、これはある中古車展示場スタッフの言葉だが、マイカーの価値をより高めるためにもボディカラーの選択は好みを重視しながら慎重な判断も必要となってくるのである。
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みんなのコメント
でも下取で値段が下がり難いボディカラーを選ぶ!って感覚は僕は薄いなぁ!
その時乗りたいカラーを選択しちゃってます。