6気筒エンジンに24kWhのバッテリー
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
BMW X5のプラグイン・ハイブリッド(PHEV)に搭載されるエンジンが4気筒から6気筒へとスイッチ。ミュンヘンの魔法なのか、燃費は良くなり、英国の場合税制面でも有利となった。
この恩恵は主にバッテリーの容量が増やされたため。従来のX5 xドライブ40eのバッテリー容量は9.2kWhだったのに対し、新しいX5 xドライブ45eでは24kWhと倍以上になっている。結果、電気のみで走行可能な距離が増え、税金の優遇率も高くなった。
2020年4月から英国の場合、PHEVの会社からの貸与車両はWLTP値での二酸化炭素排出量に加えて、電気のみで走行可能な距離でも税額の分類が分かれる。毎月のガソリン代だけでなく、税金面を考えてもライバルとのメリットは小さくない。
多くのライバルはバッテリー容量が小さく、EV状態での走行距離は32km以下なのに対し、新しいX5 45eなら82kmも走れる。英国ではPHEVで64km以上走行可能な場合、福利厚生に対する(BIK)税率が8%となるが、64km以下の場合は14%。それ以下ならもっと税率は上がる。
比較する車種にもよるが、このBIK税だけでも200ポンド(3万円)前後の節税効果がある。ディーゼルエンジンの貸与車両と比較すれば支払額は倍近い差が出るだろう。
2019年にBMWはPHEVモデルの刷新を幅広く行ったが、このX5 45eもその一つ。第4世代のハイブリッドバッテリー技術と呼ばれるものが導入された。
システム総合で394psと60.9kg-m
BMW 530eや330e、X3 30eなどと同様にエンジンは縦置きで、電気モーターは8速ATとエンジンの間にマウントされる。だが530eや330eとは異なり、X5 45eに搭載されるのは3.0Lの6気筒ターボ・ガソリンエンジン。最高出力は286psで、745eと同じユニットだ。
そこへ112psの電気モーターがアシストすることで、システム総合では394psと60.9kg-mを発生。ポルシェ・カイエン Eハイブリッドとは差があるが、ボルボXC90 T8ツインエンジンに迫るパワーを得ている。
蓄電容量は大きく増えたが、バッテリーはフロア下部などに収まり、パッケージングは従来から変更はない。クルマの構成としては、基本的に4代目X5と共通。ただし、燃料タンクはPHEVではないX5とは若干位置が異なり、荷室空間がわずかに狭く、7シーターは選択できない。
運転席の着座姿勢は快適で理想的。モニターによるデジタルメーターとインフォテインメント・システムは、どちらも可読性に優れている。インテリアの質感も高い。
着座姿勢は大型SUVとしてははやや寝そべる姿勢となり、車内も若干ライバルよりは狭い。だが最新技術が満載の、高級感に溢れた現代のラグジュアリー・ファミリーカーとして、不満はないだろう。
一度試乗はしているが、走行性能の高さや運転のしやすさ、スムーズさ、上質感など、明確に進化を感じ取れた45e。それは英国の道でも変わりない。
2.5tの車重を感じさせない軽快な加速
40eはモーターで発進する際の滑らかさや、踏み初めのスロットルレスポンスで劣っていた。そこへ4気筒エンジンが目覚めると、突然強力さが加わる印象だった。
対象的に、45eはハイブリッドに求めるような電気的な力強さを感じることができる。街中での移動だけでなく、郊外の道を交通の流れに合わせて走らせてもエンジンを始動する場面は少ない。
ペースを上げようとアクセルペダルを踏み込むと、明確な待ち時間の後に6気筒エンジンが目覚める。エンジンノイズは明確に聞こえるが、加速は違和感なくレスポンスも良い。このEVモードからハイブリッド状態への切り替わりは、ATの変速時に及ばないほどに滑らかだ。
さらにペダルを踏み込むと、豊かなトルクが湧き出し、最小限のキックダウンでスピードを高めていく。2.5tの車重とは思えないほど軽快に感じられる。流麗さと力強さは、速度域を問わず変わらない。
通常のX5と異なり、ドライブモードはスポーツ、エレクトリック、ハイブリッド、アダプティブの4種類が用意される。加えてステアリングやパワートレイン、サスペンションを好みに合わせて変更できる、スポーツ・インディビジュアルというモードもある。
センターコンソールには、バッテリーホールド・モードのボタンが配され、通常に走行しながら、バッテリーの充電量を100%に維持することも可能だ。
自動的にエネルギー効率を最大化
聞き慣れないアダプティブ・モードは、ナビで目的地を設定している場合、バッテリー残量を管理しながら、エネルギー効率を最大化するように自動的にEVモードとハイブリッドモードを切り替えてくれるもの。目的地によっては、到着時にちょうどバッテリーが空になるように調整してくれる。
エレクトリック・モードでの航続距離は、公称値で84kmとなっているが、試乗で確かめてみたところ実際は50kmから65km程度になるようだ。だとしても、PHEVのライバルモデルよりも航続距離は充分に長い。
スポーツ・モードはエンジンとモーターを積極的に常時稼働させ、かなり説得力のある走行性能を味わえる。ステアリングホイールに取り付けられたパドルで8速ATを変速させれば、スロットルレスポンスは爽快。エンジンの低回転域から、力強い瞬発力を叶えている。
4000rpmを超えると、モーターのアシスト感は明確に弱くなる。モーターもエンジンも同じATの入力シャフトにつながっており、常に同じ回転速度で稼働することになるから、理由はわかりやすい。高回転域ではモーターのトルクは先細りとなるのだ。
BMW X5 xドライブ45e Mスポーツは、アダプティブ・エアサスペンションに20インチアルミホイール、ランフラット・タイヤの組合せが標準。インテグラル・アクティブ4輪操舵はオプションとなる。
Mスポーツプラス・パッケージを選べば、ホイールサイズは22インチまで選べる。税率の低さに影響はない。
45eの総合力に不満を抱くことはない
試乗車には22インチのホイールが装備されていた。硬さが中間程度のサスペンション設定のおかげで、良好な路面なら乗り心地も良く、ハンドリングの正確性も高い。だがステアリングホイールの操舵感はやや軽過ぎると感じられたし、傷んだ路面ではボディの落ち着きは弱くなる。
特に強い入力が連続で加わりリバウンドするような場面では、横方向へ進路が乱されそうになることも。全般的に上手に丸め込まれてはいるが、軽くない車重は、コーナリング時に隠すことはできないようだ。
ドライバーに対する訴求力を弱める部分かもしれないが、この手の大型SUVに興味を示す層にとっては些細な欠点ではあるだろう。優遇税率に惹かれて選んでも、バランスに優れた滑らかな走り、運転のしやすさ、扱いやすくたくましいパワートレインなど、X5 xドライブ45eの総合力に不満を抱くことはないはず。
充電環境さえ整っていれば、非常に優れた燃費も得ることができる。4気筒エンジンだったX5 40eは、おすすめしにくいハイブリッドSUVだった。しかし、X5 45eは間違いなくクラスで最優秀の実力を持っている。
BMW X5 xドライブ45e Mスポーツのスペック
価格:6万6675 ポンド(933万円)
全長:4922mm
全幅:2004mm
全高:1745mm
最高速度:234km/h
0-100km/h加速:5.6秒
燃費:71.4km/L(WLTP複合)
CO2排出量:31g/km(WLTP複合)
EVモード航続距離:82.0km(WLTP複合)
乾燥重量:2435kg
パワートレイン:直列6気筒2998ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:394ps(システム総合)
最大トルク:60.9kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック
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みんなのコメント
煽らることはないだろ