冷やすべき主要パーツは3つ
「EV(電気自動車)は冷却が不要だからグリルレスのスタイルにできる」という声がある。たしかに、最新EVの象徴的ブランドであるテスラの各モデルは、グリルのないフロントマスクで統一することでEVらしい顔つきと認識させているが、はたしてEVは冷却不要なのだろうか?
とりあえず余裕のあるやつ買っとけば……は損! EVのバッテリーは「大は小を兼ねない」
結論からいえば、EVにおいても冷却(温度管理)は重要だ。
空調システムを除き、駆動系に限っても冷却を考慮すべき対象は大きく3つある。それは、バッテリー/インバーター/モーターだ。
ご存じのように、バッテリーの充電や放電は化学反応であり、その際に発熱を伴ってしまう。とくに急速充電や大パワーを発生するときに発熱量が増える。高温状態が続くと熱暴走してしまうこともあるので、バッテリーの温度管理は重要だ。また、バッテリーは低温すぎても十分に性能を発揮できないという特性がある。冬季などにはバッテリーを温める機能を用意しておくことも重要となる。
そうした冷やしたり温めたりというニーズから、バッテリーの温度管理を重要視しているモデルでは水冷式を採用していることが多い。水冷式であれば、ヒーターを使って温めることもコントロールしやすいからだ。同類の仕組みとしてエアコンの冷媒を利用して温度管理するタイプもある。
水冷式にするとコストがかかってしまう。そのため、発熱量が少ないと判断される場合にはブロワーで空気を送り込むだけの空冷式とすることもある。ハイブリッドカーのなかには後席の脇に小さな空気取り入れ口が設けられていることもあるが、あれはバッテリーに室内の空気を送り込んで冷やすためのものである。
水冷・空冷・油冷を適材適所で活用
パッシブ制御といって特別な冷却系統を用意せずに、走行風などにより成り行きで冷やす設計もある。いずれにしても、コストと性能のバランスを考えて冷却系は設計されているものだ。
しかしながら、急速充電での性能やバッテリー劣化を防ぐには、水冷式システムによってしっかりと温度管理をするというのが、昨今のEVにおけるトレンドだ。
さて、バッテリーから出ていった直流の電気は、インバーターを介して交流に変換されモーターに伝達される。そうした役目をインバーター内で果たしているのがパワー半導体であり、こちらも動作に伴い熱を発してしまう。そのまま放っておいてはオーバーヒートして正常に作動しなくなるので、やはり冷却することが求められる。もちろん、最終的に駆動力を生み出しているモーターも発熱してしまう。
モーターやインバーターの冷却において、主流となっているのが水冷式と油冷式だ。そして、バッテリーと違って温める必要はなく、冷やすことがメインとなるため、バッテリーとは異なる冷却系統となっていることがほとんどだ。
最近ではインバーターとモーターを一体化した「e-Axle」の採用が広まっているが、その場合においてはインバーターとモーターを同系統で冷却するといった設計として無駄を排することが求められる。その結果として油冷式を採用するケースが増えているようだ。
なお、小型EVなどでは、どちらも空冷式とすることで冷却系のコストや重量増を抑えているケースもある。どの冷却方式が優れているという話ではなく、必要な冷却性能と車両コンセプト(コスト、耐久性、メンテナンス性)のウェルバランスを実現することが重要と捉えるべきだろう。
とはいえ、総電力量の大きなリチウムイオンバッテリーになれば、温度管理によって加速性能といったパフォーマンスや急速充電の受け入れ性能が左右されるのも事実。バッテリーの冷却性能については愛車選びの段階でチェックすべきポイントといえそうだ。
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みんなのコメント
それでも充電料金は時間制定額で払ってね!
なEVだから、コスパ重視な方は温度管理のしっかりした車両を選ぶ必要がありますね。