3列シートの大型SUVがメーカーのフラッグシップモデルに位置づけられる時代がやってきた。走り、居住性、先進装備、電動化をハイクオリティーで実現した最新SUVの完成度はかなり高い。今回はそんな2台を比較試乗した。
本当はクルマ1台で行きたい!
フォルクスワーゲンの「ID.4 Lite」を実用的で使い勝手のいいEVとして推したくなる理由
家族を連れて実家に帰省し、両親と一緒に食事に出かける時、家族4人と両親の計6人になると、2列シート5人乗りのクルマでは定員オーバーになってしまう。本当はクルマ1台で行きたいのに。そんな経験をお持ちの方もいるのではないだろうか。そんな時、3列シートのクルマがあると当然、便利だ。しかもドライビングポジションが快適なSUVがあれば運転もラクに違いない。
このジャンルではこれまで、三菱が2005年に初代『アウトランダー』を発売。2013年にはPHEVモデルを投入したが、目につくのはこれぐらいだった。そこに2024年10月、マツダがフラッグシップSUV『CX-80』を発表。2.5Lのガソリン+モーターのPHEVや3Lディーゼルエンジンを搭載した3列シート、7人乗りを発売した。ほぼ同時期に、三菱は『アウトランダーPHEV』のモーター航続距離を従来モデルより約20km伸ばして102kmにした最新モデルを発表。既存の3列シートSUVに加え、新型車が2車種投入されたことで、このクラスの注目度は上がり、ユーザーの関心も高まっている。
マツダ『CX-80 PHEV』と三菱『アウトランダーPHEV』はどちらも両社のフラッグシップモデル。最近は3BOXセダンが販売不振により次々と販売を中止。このクラスのSUVがフラッグシップカーになった。マツダ『CX-80』はそれを意識し、大型なボディーと余裕のあるパワーユニットを用意。全モデルが3列シートで、定員は2-3-2の7人乗りと2-2-2の6人乗りだけ。現時点で2列シートモデルは用意されていない。PHEVは後輪駆動ベースの4WDのみの設定になっている。価格帯はPHEVが639万1000円~、ディーゼルハイブリッドは596万7500円~、ディーゼルは394万3500円~と幅広い設定となっている。
一方、三菱『アウトランダー』は4グレードすべてがPHEVで、ベースグレードのみが2列シート5人乗りで、他は2、3列シートの5人乗りと7人乗りが設定されている。車両本体価格は526万3500円から最上級のエグゼクティブパッケージ668万5800円までというこちらも幅広いレンジで、最上級車はレザーシートと上級オーディオが標準装備されている。
大切な人を乗せて遠出したくなるSUV
マツダ『CX-80』
Specification
■全長×全幅×全高:4990×1890×1710mm
■ホイールベース:3120mm
■車両重量:2240kg
■排気量:2488cc
■エンジン形式:直列4気筒2.5Lガソリン+モーター
■最高出力:188PS/6000rpm
■最大トルク:250Nm/4000rpm
■変速機:8速AT
■燃費:12.9km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:719万9500円
※「PHEVプレミアムモダン」
デザインコンセプトは〝タフなSUV〟。フラッグシップカーにふさわしい優雅さも表現している。大型のフロントグリル、周囲のクロームメッキ、薄いヘッドライトはマツダ車の新しい顔。
ホイールベースは3mオーバー。2列シートのSUVは、スポーティーさを強調したクルマが多いが、3列シートを強調する手法としてDピラー部のメッキを太くしている。
水平基調のデザインで落ち着きを表現。特徴としては、バンパー部分にエキゾーストパイプなどを露出させずにバンパーの中に隠して上品さを演出。他車では見られない手法だ。
テクノロジーの力でPHEV市場をけん引するSUV
三菱『アウトランダーPHEV』
Specification
■全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm
■ホイールベース:2705mm
■車両重量:2120kg
■排気量:2359cc
■エンジン形式:直列4気筒2.4Lガソリン+ツインモーター
■最高出力:133PS/5000rpm、116PS+136PS
■最大トルク:195Nm/4300rpm、255Nm+195Nm
■変速機:6速AT
■燃費:17.2km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:640万5300円
※「P」グレード
ヘッドライト周りの太いクロームと、ボディー幅まで寄せたヘッドライトは三菱車の新しいデザインの象徴。マイナーチェンジでフロントグリルのアッパー部分の造形を滑らかに改良した。
サイドウインドウはボディーの幅に対して小さめにし、クーペライクなスポーティーさを演出。リアゲートとDピラーの間は太めにして3列目シートを使用しない時のプライバシーを保っている。
リアランプは細長く高い位置に配して、スモークレンズを採用。ターンランプとバックランプはLED化している。リアゲート開口部の高さは『CX-80』よりやや高めで、テールパイプが露出している。
長距離移動にも適した居住性、走行性能は輸入車に匹敵するほどレベルが高い
マツダ『CX-80』
エンジンルーム
エンジンは直列4気筒2.4Lガソリン+2基のモーターを搭載。今回は電池容量を約10%増にし22.7kWhで一充電当たりの航続距離は102km。
運転席と各種装備水平基調のインパネとスリムなセンターコンソールが特徴。スマホと連動するナビは9インチから12.3インチに拡大し機能も充実。
シートスペース座席と座面の中央にワンポイントアクセントを入れたデザインがユニーク。着座位置はやや高めだが、ヘッドスペースは確保されている。
ラゲージスペース3列目シートは左右2分割の可倒式でフラットになる。着座は低めで床面はフラットだが、足元はやや狭め。乗降時は体勢が少し苦しい。
【 ココがポイント!】暑い時も寒い時も温度を調節できる2列目シート3列目に身長170cmの人間が座れる広さを確保。2列目にはシートヒーターだけでなくシートクーラーも装備。座席のリクライニングは電動式で快適。
【 ココがポイント!】充電ケーブルやトノカバーを収納可能!車体最後部のラゲージスペースは蓋付きで深さは約150mmある。充電ケーブルだけでなく、2、3列目に使えるトノカバーがそのまま収納できるスペースが設けられており使い勝手がいい。
三菱『アウトランダーPHEV』
エンジンルームエンジンは縦置きで直列4気筒2.5Lガソリンに電池容量17.6kWhのバッテリーとモーターを組み合わせて8速ATで4輪を駆動する。
運転席と各種装備幅広のセンターコンソールで前席のセパレート感を演出。ドア側のアームレストも幅広く快適。液晶は12.3インチを採用。
シートスペース前席のホールド性は良好。2列目のシートはスライドするが可動幅が小さく、3列目への出入りは足元が狭いため乗り降りがやや大変。
ラゲージスペース背もたれが低く折り畳み式のヘッドレストが長い。座面は小ぶりで左右一体型で可倒。シートは床下収納だがトノカバーは入らない。
【 ココがポイント!】本格的なオフロード走行に対応したダイヤルスイッチ三菱のオフロード技術が十分生かされた走行性能はレベルが高い。EVモードはプッシュスイッチで4モード、ドライビングはコンソールのダイヤルで7モード設定されている。
【 ココがポイント!】ヤマハのオーディオシステムを搭載オーディオは三菱自動車の工場に近いヤマハ製。楽器製造で培った技術で音の本質を追求。三菱との協業体制を構築し、モデルごとにサウンドコンセプトを具現化している。
居住性なら『CX-80』、走行性能なら『アウトランダー』に軍配
マツダ『CX-80』
爽快感〈17点〉
車体の大きさと重さに対してエンジン+モーターの出力がやや非力。爽快感はさほど感じない。
デザイン〈19点〉
マツダのデザインをこのサイズまで昇華させたのは見事。フラッグシップモデルとしての存在感はある。Bピラーも上質な印象。
装備の充実度〈18点〉
外部機器連携、充実の便利機能、先進安全装備など、1列目から3列目まで行き届いた装備は評価に値する。
居住性〈18点〉
1列目から3列目まで快適性は保たれているが、試乗したモデルは2列目のセンターコンソールが固定式でスライドは手動だった。
運転性能〈18点〉
2.5Lのガソリンエンジン、8速AT、モーターのマッチングは改良の余地あり。もう少し全体にスムーズさが欲しいところ。
【評価点数】90点
三菱『アウトランダーPHEV』
爽快感〈19点〉
2.4Lガソリン+ツインモーター+7ポジションドライブモードを操るのは楽しい。ターマック、グラベルなどのモード選択も秀逸。
デザイン〈18点〉
最近では似たようなヘッドライトのクルマが登場しているが、ほかにはない個性的なスタイリングを楽しませてくれる。
装備の充実度〈18点〉
ツインモーター4WDと4輪制御技術「S-AWC」を採用。ヤマハとタッグを組んで開発したオーディオシステムも新しい。
居住性〈17点〉
この全長で3列シートは厳しい。あくまで+2と考えたほうがいい。エンジン音が車内に侵入するが、耳障りではない。
運転性能〈19点〉
太めの握りのハンドルと4WDの走りはつい3列シートのSUVであることを忘れてしまいそう。特にダートは強い。
【評価点数】91点
文/石川真禧照 撮影/望月浩彦
※本記事内に記載されている商品の価格は2025年1月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
59万円で「3人」乗れる! 全長2.2m級の「コンパクトマシン」がスゴイ! 普通免許で乗れる“高コスパトライク”「VIVEL TRIKE」とは
免許更新時に勧誘される「交通安全協会」って何者? 年会費数百円だけど、入会メリットあるの? しかも「任意」なのになぜ強制っぽい雰囲気?
新車65万円! 斬新「めちゃ小さいクルマ」に反響殺到! 「高齢者にちょうどいい」「可愛い」 全長2.4m「普通免許」で乗れる“おひとり様モデル”「アントレックスEV-eCo」とは
まさかの1000馬力オーバー!? 株価も急騰!!! [BYD]が6分で満タンになるEVを発表ってマジか!?
海自の最新ステルス艦が「世界で最も美しい街」に到着!日本からはるばる南半球へ
もはや絶望!? 「羽田空港」駐車場“破滅の混雑”問題… 途方にくれる「予約合戦」で攻略法はある? 受付開始後「ソッコー満車」対策方法は?
まさかの1000馬力オーバー!? 株価も急騰!!! [BYD]が6分で満タンになるEVを発表ってマジか!?
「あ、間違えた!」 高速道路で「目的地出口」を通り過ぎたらどうすれば… 急な「Uターン」絶対ダメ! とるべき行動とNG行為とは
究極の高効率エンジン「SKYACTIV-Z」+ハイブリッドは驚くべき環境性能の予感! マツダの「これから」は絶対面白い
中国人男性「オービスが光りました」と出頭し、逮捕! 高速道路を“時速144キロ”で爆走で!? オービスが速度違反を検知か
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
アウトランダーは、2.7mそこそこのホイールベースしかないから3列乗車は厳しいのは当然であるが、子供用として空間を確保した努力は凄い。
CX-80は、全長も比較にならない程、長いがアウトランダーより車重が100Kg以上」重い。
PHEVの燃費は、アウトランダーの17.2km/Lに対し、CX-80は12.8kmと劣り、技術の格差を感じる。