73kWhのバッテリーで航続500km 先代から成長
選択肢が増え続けるバッテリーEVだが、7シーター級のSUVとなると選べる幅が狭い。現在はテスラ・モデルXとメルセデス・ベンツEQBの独壇場といえ、そこへキアEV9が加わったばかりという状態。ここへ割って入るのが、プジョーのE-5008だ。
【画像】クルマへ求めるモノを満たす次世代! プジョーE-5008 電動の7シーターSUVたち E-3008も 全126枚
プラットフォームは、ステランティス・グループのSTLAミディアム。5008を名乗る、1.2Lガソリンのマイルド・ハイブリッドと1.6Lガソリンのプラグイン・ハイブリッドに加えて、今回試乗したバッテリーEV版のE-5008という、3種類で展開される。
E-5008に載る駆動用バッテリーは、ニッケル・マンガン・コバルトを正極材に用いたユニット。容量は73kWhか96kWhが選べるが、後者は2025年に追加され、航続距離は659km(!)が主張される。
先行で提供されるのは73kWhで、シングルモーターでの航続距離は500kmと充分以上。急速充電能力は最大160kWとなり、最短10分で100kmぶんの電気を蓄えられる。
スタイリングは直線基調で端正。プロポーションが整い、モダンな印象を与える。幾何学的なホイールのデザインが、停止時の印象を引き立てている。
ヘッドライトはLEDで、かなり細身。放射状に広がるパターンのフロントグリルはボディと同色に塗られ、中央でライオンのマークが輝く。巨大なチーズおろし器のようにも見えるのは、筆者だけだろうか。
全長は4791mm、全幅は1895mm、全高が1694mmで、先代からひと回り以上大きくなった。EQBとEV9の間のサイズといえる。
印象的なほど広い車内空間 3列目でも大人OK
車内を後方から観察していくと、荷室は3列目を畳んで748Lと広大。ベビーカーや子供用の自転車なら、問題なく積める。床下には、充電ケーブルに丁度いい収納もある。
2列目を前方へスライドし折りたためば、2m以上の家具なども余裕。テールゲートのリリースボタンが奥まった位置で、指が汚れるのが気になったけれど。
乗員空間も印象的なほど。流石に3列目が広いとはいえないものの、多くの7シーターSUVより大人でも快適。2列目はスライドするから、乗降性も見た目ほど悪くない。カップホルダーもある。エアコンの送風口やSUBポートなど、快適装備は備わらないが。
2列目は広々。パノラミック・ガラスルーフを組むと、180cm以上の身長では、天井が若干近く感じられるだろう。前後長にはゆとりがあり、リクライニングさせれば昼寝にも丁度いい。
最前列は、ダッシュボードがE-3008と共有ながら、デザインは美しく素材も上質。BMWやメルセデス・ベンツ級ではないにしろ、ルノーやフォードを唸らせるほど、製造品質も高い。シートの座り心地も良いが、調整レバーにコスト意識が見える。
インフォテインメント用タッチモニターとメーター用モニターが一体の、21インチ・パネルがその上に載る。これは、エントリーグレードから標準装備。ダッシュボード下部にある、任意に設定可能なショートカットキーが便利だ。
インフォテインメント・システムは、最新のルノーほど直感的なデザインではないが、先代からアップデート。扱いにくいわけではない。
エンジンに近いパワー感 ステアは機敏で正確
試乗車は214psのシングルモーターで、動力性能は必要充分。0-100km/h加速は9.7秒だから速いわけではないが、35.0kg-mの最大トルクで滑らかに2218kgのボディを動かす。普段使いで、不満を感じることはないはず。
徐々に力強さが増していくパワー感は、ガソリンエンジンに近い印象。初めてのバッテリーEVでも、戸惑うことなく運転できそうだ。
テスラへ試乗したことがあるなら、もっと鋭い加速を期待するかもしれない。そんな人には、ツインモーターのE-5008が好適だろう。0-100km/h加速を、ファミリーSUVとしては必要以上といえる、7.0秒以下でこなすそうだ。
運転席からの視界は広々。着座姿勢はSUVライクで、高い座面の位置から、交通状況を良く見渡せる。
回生ブレーキの強さは、ステアリングホイール裏のパドルで調整できる。1番強力にすると、ワンペダルドライブへ近い制動力が得られる。高速道路では慣れるまでギクシャクしがちだが、利用されることが多いであろう市街地では扱いやすい。
ブレーキペダルの感触や反応も悪くないが、積極的な運転中は、踏み初めに少し曖昧な場面もあった。それでも、回生ブレーキと摩擦ブレーキの協調性は褒められる。カックンブレーキなしに、そっと止まれる。
ステアリングホイールは重めで、反応は理想像より少し機敏かも。高速道路では、直進を保つため、修正舵を当て続けているように感じる人もいるだろう。しかし、気にすれば、という程度。反応は正確で、カーブを気持ちよく旋回できる。
クルマへ求めるモノをくまなく満たす
スポーツ・モード時はステアリングがさらに重くなり、手のひらへ充分なフィードバックが伝わってくる。操る自信は抱きやすいだろう。プジョーには、もう少しのスポーティさを期待するファンもいるとは思うけれど。
タイヤは、ミシュランe-プライマシー。20インチと大きめだったが、速度抑制用のバンプを越えても、サスペンションはしなやかに入力を処理していた。ボディロールは小さくないが、しっかり抑制されている。
細かな凹凸が連続する区間では、揺れとともに足回りからノイズが聞こえてきた。荒れたアスファルトのグレートブリテン島では、小刻みな振動が気になりそうだ。とはいえ、乗り心地や操縦性はまとまりが良く、全体的に落ち着いていると評価できる。
英国価格は19インチ・ホイールを履くアリュール・グレードで、約4万8000ポンド(約960万円)からが見込まれている。決して安くはないが、EQBよりはお手頃だ。
装備は充実し、バックカメラやアダプティブ・クルーズコントロール、キーレスエントリーなどが標準。英国では8年間か16万kmの保証も付帯され、ディーラーで整備を受けている限り、駆動用バッテリーもカバーされる。
モダンなスタイリングで、素晴らしい実用性を包み込んだ、E-5008。高級感の漂うインテリアに、7シーターの広い空間、運転のしやすさなど強みは多い。このクラスの平均的なユーザーがクルマへ求めるモノを、くまなく満たすといっていい。
◯:実用的で魅力的な車内空間 運転しやすく滑らかな操縦性 優れたエネルギー効率
△:スタイリングは、見る角度で冴えない部分も スポーティとはいえない操縦性
プジョーE-5008 GT 73kWh(欧州仕様)のスペック
英国価格:9万6313ポンド(約1926万円)
全長:4791mm
全幅:1895mm
全高:1694mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:9.7秒
航続距離:500km
電費:5.7km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2218kg
パワートレイン:ハイブリッド同期モーター
駆動用バッテリー:73kWh
急速充電能力:160kW
最高出力:214ps
最大トルク:35.0kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
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