ホンダ初の量販EV(電気自動車)である「ホンダe」に今尾直樹が試乗した。
販売絶好調!
見た目も中身も若々しくなった! 新型メルセデス・ベンツEクラス試乗記
10月30日に発売となるホンダ初の量産EV、ホンダeの試乗会が9月下旬、横浜みなとみらい地区で開かれた。静かで、乗り心地がよくて、運転しやすい。しかも、運転していてかなり楽しい!
これは傑作である。と、ほかのかたがたもおっしゃっているだろうけれど、筆者も申し上げたい。
これは傑作です!
Hiromitsu Yasuiホンダ「N360」以来、あるいは初代のホンダ「シビック」以来の旋風を巻き起こすにちがいない。いや、すでにその旋風は起きている。もともとEUのCAFE(企業別平均燃費効率)対策で生まれたこともあって、日本国内の販売計画台数は年間わずか1000台。8月から始まった注文受付によって予定台数は埋まり、現在は休止状態。次回の受付は11月からとされる。それも受付台数は数百台ぽっきり。年間1000台なのだから致し方ない。
グレードは、単にホンダeと表記される最高出力136psのスタンダードと、同154psのホンダeアドバンスの2種類がある。価格は、前者が451万円、後者は495万円。
Hiromitsu Yasui高性能版の後者は、タイヤ&ホイールが16インチから17インチになり、パーキングパイロットなる自動駐車システムやセンターカメラミラーシステム、マルチビューカメラシステム、プレミアムサウンドシステム等、家電系の装備の充実が図られている。
冒頭に記した筆者の印象は、後者のホンダeアドバンスで、みなとみらい周辺の首都高速を走ってのものでありまして、ボディ色には白、黄、青、赤、黒、銀、いわゆるガンメタ、と7色あるのに、GQに割り当てられたのは渋い銀色で、地味だぁ、と思ったけれど、シックなおとな(私のことです)にはいい色だと思い直した。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui驚くほど静か
走り出す前に専用アプリをダウンロードしたスマホが渡され、アプリでもってドアのロックをオン/オフしたり、フロントのボンネットの中央に設けられた充電口のフラップを開けたりして、未来な感じをちょっと味わう。スマホ・アプリで、カギがなくてもパワーをオンにすることもできる。はずだけれど、この日のように調子の悪いときもあることをIT社会に生きる私たちは知っている。そういう場合に備えてカギというものがある。これまた電波式ではあるけれど。
リビング・ルームを意識したという室内は、シンプルな霜降り風の織物のシート表皮と、木目の印刷フィルムを貼ったパネルがぬくもりを感じさせる。ウッド(調)のテーブルの上には居間のテレビよろしく、横長のスクリーンが端から端まで。その両端は、ドア・ミラーに代わって、カメラが後方を映し出すスクリーンになっている。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui最近のホンダの例に等しく、P、R、N、Dのセレクターのスイッチがセンターコンソールに平面上に並んでいる。Dを押す。ブレーキ・ペダルをゆるめると、クリープでもってゆっくり走り出す。アクセルを踏んでも静かである。静かである。静かだ。超静かだよ~。EVのなかでもことさらに静かなのは、モーターがリアにあるからだ。
ボディ・サイズは、ホンダのベスト・セラー「フィット」より100mm短い。全幅は55mm広いけれど、1.8mを切っており、全高は5mm違うだけなので、ほとんどおなじ。2530mmのホイールベースはフィットと同一だけれど、フィットの場合は、普通のFF車同様、壁1枚隔てたバルクヘッドの向こうにエンジンと電気モーターある。なので、EV走行時もモーターの気配がある。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiRRのホンダeの場合は、2.5mよりは短いにしても、ドライバーから2mは後方のリア・アクスルのさらに後ろに電気モーターだけが潜んでいる。街中を走行していて聞こえてくるのはエアコンのファンと、かっちゃんかっちゃんというウィンカーの音ぐらいだ。
フィット・サイズなので、横浜の街もたいへん走りやすい。その一方、妙な高揚感もある。デジタル・スクリーンに囲まれていると、リアルとヴァーチャルの境があやしくなる。フロント・ガラスのスクリーンは現実だけれど、カメラがダッシュボードの両サイドのスクリーンに映し出す後方の画像は、みなとみらいの赤煉瓦倉庫とか、観光地のテレビ中継か、あるいは絵はがきを見ているようでもある。現地に居ながらにして、別の私が観光地にきているような感覚。
と、思っているところに、2本スポークのステアリングホイールをふと見て、懐かしいなぁ、初代シビックに似ている。兄貴が乗っていたよなぁ、黄色い初代シビック。あれ、おばあさんが買ってくれたんだったなぁ。と、過去が交錯したりもする。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiどうしてこんなに乗り心地がよいのか?
信号待ちのとき、エアコンのファンを切って耳をすますと、う~ッというごく小さなうなり音を発していることがわかる。バッテリー冷却用のラジエター・ファンの音らしい。
これまた冒頭に記したように、乗り心地がいい。しなやかで、まろやかなといっていい。今年乗った国産車のなか、いや、輸入車を含めても、これほどけっこうな乗り心地のクルマはないのではないか。ホイールの大きなSUVが花盛りということもある。であるにしても、ホンダeアドバンスのタイヤ・サイズは前205/45、後225/45という前後異形の17インチ で、タイヤ銘柄はミシュランのパイロット・スーパースポーツ、それもZR規格(240km/h超)が選ばれている。225の45はもはや超扁平ともいえない、ということか。元町の石畳の路面を低速で走っても、よき時代のヨーロッパ車を思わせるやさしい乗り心地でもって何気に通過する。
Hiromitsu Yasui首都高速にあがってもしなやかさは変わらず、目地段差でもドッシンバッタンしない。ボディもたいへんしっかりしている。
どうしてこんなに乗り心地がよいのでしょう?
それを質問できるのがメーカー主催試乗会のよいところで、ホンダのエンジニアによると、第1にサスペンションが4輪独立のストラットだから、という答が返ってきた。
もちろん、リチウムイオン電池をフロアに敷き詰め、リア・アクスルのちょっと後ろに電気モーターを積んでリアを駆動するRRレイアウトを採用していることも、乗り心地に大いに貢献している。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui重い電池をフロア下に敷き詰めているから、現行シビックよりも重心が低く、フロントのボンネットの下には配電盤的な役割を果たす補機がビッシリ積まれており、前後重量配分50 : 50を実現している。FFだと、こうはいかない。試乗車の車検証を見ても、フロントが770kg、リアが770kgとピッタンコ。低重心で、前後重量配分50:50だと、ピッチングもローリングも起こりにくい。そもそも姿勢変化が小さいから、バネを柔らかくできる。ミドシップのアルピーヌ「A110」のフランス人のエンジニアが語っていたのと同じことを、RRのEVであるホンダeのエンジニアは語るのだった。
みなとみらい周辺の高速道路を走っただけだけれど、ハンドリングもよさげだ。ハンドリングがいかにもいい、というのではなくて、何気によい。というのが筆者の印象で、たいへんまろやかで、カドが立っていない。FFのハッチバックみたいに前輪の左右どっちかに荷重がかかってコーナリングしていくというより、4輪全体で受け止めている、みたいな感じ。フル加速を試みても姿勢変化が小さい。驚くほど、フツウにこなしてしまう。フツウじゃないことに気づかないほどのフツウさなのだ。
いや、おなじホンダでも、初代フィットと「N-ONE」しか知らないウチのおくさんとか、ホンダeに乗ったら驚愕するだろうなぁ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiフツウの小型車をEVでつくってみせたホンダ
リアに搭載する電気モーターは、アコードのハイブリッド用を流用している。前述したように、ホンダeアドバンスの最高出力は154psで、最大トルクは315Nmもある。それを0~2000rpmの範囲で生み出す。後輪駆動なので、自然吸気のガソリン・エンジンでいうと、3.0リッターV6並みのトルクがいきなり後輪に押し寄せる。
走行モードにはノーマルのほかにスポーツがある。ノーマルでも十分速いけれど、スポーツにすると、もっと速い。アクセル・ペダルのストロークはけっこうあるけれど、軽く踏み込んだだけで、バビューンと加速する。それも、ほとんどノー・モーションで。その際、モーターだかギアだかの、ムオーッというノイズがごくたまに聞こえるけれど、たまにしか聞こえてこない。筆者は忘れていたけれど、単にEVだからではなくて、RRのEVだから、EVのなかでもいっそう静かなのだ。
Hiromitsu Yasuiその分、ロード・ノイズが、路面によっては気になる。いくらアクセルを踏んでも、ゴーッとかドガチャカドガチャカだとか、聴こえてくるのはゴムのタイヤがアスファルトを叩く音だけなのだ。
ちょっと虚しい。EVには、いまさらながら、ガソリン自動車にあったエキサイトメントというものがないのである。こんなにいいクルマなのに……。
電気モーターの特性は、最初の回転からいきなり最大トルクを発揮できることである。ホンダeはその特性をかなり抑えて気味にして、ガソリン・エンジンみたいに、後半も伸びるような味付けにしている。スポーツにすると明瞭に最初のトルクの出方、盛り上がりが大きくなって加速する。でも、あまりに速く制限速度に達してしまうので,公道ではそれ以上試せない。ペダルのストロークは余っているというのに。
ああ、ちょっと虚しい。
もっと後半で盛り上がるようにすることはできないでしょうか? パワーユニットのエンジニアに質問すると、パワーとトルクの出方はいかようにもできる。とはいえ、モーターというのは0-30km/hがとくに速い。そこを抑えると、タイムが出なくなってしまう、ということだった。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiとはいえ、ホンダeの走行モードがノーマルのときのパワーとトルクの出方は、乗り心地同様のまろやかさが感じられて、EVのなかでは飽きないような気もする。けれど、本当に飽きないのかどうかは、少なくともロング・ドライブをしてみないとわからない……。
ロング・ドライブ!?
都市型コミューターのホンダeはそれを想定していない。一充電走行距離は、136psのホンダeで、JC08モードだと308km、WLTCモードで283kmである。ホンダeアドバンスだと、それぞれ274kmと259km。
ああ、その手があったか!!
これはEVの抱える根本的な問題、筆者が問題であると考える、ガソリン・エンジン車のようなエキサイトメントがない、ということだけれど、都市内での移動にちょこちょこと使うという用途に限定するのであれば、エキサイトメントはむしろ不要だから、その問題は表面化しないわけだ。パワーユニットの担当者は、航続距離にはこだわらなかった、と、明言していたけれど、これこそEV普及の方向のひとつの手であることは疑いない。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui運転に飽きてきたら、シングルペダルモードをあれこれ調整するのも退屈しのぎになる。アクセル・ペダルをオフにすると、急激な減速Gが立ち上がり、みるみる速度が落ちて停止する。あまりに、みるみる速度が落ちるのが好ましくない場合は、減速Gを6段階でコントロールするステアリングの、右プラス、左マイナスのパドルで調整すればよい、というEVならではのシステムである。
内燃機関の自動車は、気候変動というもっと大きな問題をつくりだしている。ということになっている。なので、なにもしないわけにはいかない。
Hiromitsu Yasuiホンダeは、EVに懐疑的なクルマ好きにも手が出しやすい、フツウの小型車をEVでつくってみせた。航続距離の短い、SUVではない、RRの都市型コミューターEV。その最初のコンセプトがホンダe最大の○だと筆者は思う。
ウチのおくさんはいま、いちばん近い駅まで往復4kmとか、近所への買い物とかにN-ONEを使っているのですけれど、ホンダe、買うって言わないかなぁ。カタチはたぶん好きそうだし、今度試乗に行こう、と誘ってみよう。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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