市販車の性能と法定速度
ドライバーが注意すべき交通違反のひとつに「最高速度違反」がある。2024年の「交通安全白書」によると、2023年に発生した448万4894件の道路交通法違反のうち、最高速度違反は88万8500件で2位にランクインしている。
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また、高速道路では26万1523件で、交通違反の
「71.8%」
を占め、最高速度違反が1位となっている。
このデータから、ドライバーが注意していてもつい速度を出してしまい、高速道路では特にその傾向が顕著であることがわかる。過去には、日本国内で時速235kmや時速280kmで摘発された例もあり、これらは外国車やカスタムされた国産車によるものだが、市販車でも簡単に法定速度を超える速度で走行できてしまう。
ここで疑問が浮かぶのは、そもそも
「なぜ法定速度を大きく上回る速度が出せる車が市販されているのか」
という点だ。国産車のスピードメーターを見ると、一般的には「時速180km」まで表示されている。もし車両が法定速度以上の速度を出さないように設計されていれば、速度違反はなくなるのではないだろうか。
そこで、本稿では、なぜスピードメーターが時速180kmまで表示され、実際に車両が法定速度を超える性能を持って販売されているのかを解説していく。
制限速度を上回る性能があるワケ
まず、大前提として、販売される自動車の最高速度を規制する法律は存在しない。スピードメーターが時速180kmまで表示されているのは、日本自動車工業会や各自動車メーカーによる「自主規制」だ。実際に、輸入車には時速180kmを超えるスピードメーターが装備された車両が多く見られる。この自主規制により、自動車には時速180kmでリミッターが設けられているのである。
次に、法定速度を大きく上回る性能を持つ理由について説明しよう。まずひとつ目の理由として、法定速度が時速100kmであっても、条件によってはそれ以上の性能が求められる点が挙げられる。
例えば、平らな道では時速100kmを出す性能であれば問題ないが、坂道ではそれ以上の性能がなければ、時速100kmに到達することができない。同様に、乗車人数や荷物の積載量が多い場合も、性能に余裕がなければ制限速度に達することは難しい。つまり、どんな状況でも制限速度に達するためには、余裕のある性能が必要なのだ。
さらに、スピードメーターが国内の最高制限速度を超える性能を持つ理由として、エンジンの負担を軽減する効果もある。もしアクセルを目いっぱい踏んでやっと時速100kmに達するような性能では、自動車は常にフルパワーで走行しなければならなくなり、その結果、車両の劣化が早くなり、耐用年数が短くなってしまう。
制限速度を上回る性能は、安全を脅かすように見えるかもしれないが、実際にはさまざまな状況下で安全に、かつコストパフォーマンスを維持したまま制限速度で走行するためには、少し余裕のある性能が求められるのだ。
「時速180km表示」の謎
では、なぜスピードメーターが時速180kmまで表示されているのか。自動車が法定速度を超える性能を持っている以上、スピードメーターもその性能に合わせて、対応する速度まで表示する必要があるのは当然だ。実際、メーターを見ていると、思っていたよりもスピードが出ていることに気づくこともある。
もし時速100kmまでしか表示されていないと、自分が時速130kmや150kmで走っているのかを知ることができなくなってしまう。そのため、スピードメーターはドライバーに過度な速度を警告し、自制を促す役割も果たしているのだ。
また、ときには災害や事故から身を守るために、制限速度を超えることも考えなければならない場面がある。例えば、落石があった場合、急加速で回避できることもあるし、自動車事故においても、急ブレーキでは間に合わず、スピードを上げることで回避できる状況があるかもしれない。
こうした命の危険から自分を守るために、時速100km以上出せる性能が必要になるのだ。また、世界中でその自動車が使われることを考えると、各国の法定速度は異なるため、世界基準に合わせて時速180kmに設定されたという説もある。
「速度」に明確な根拠なし
安全性やさまざまなケースを考慮して、法定速度を超える速度が表示されているスピードメーター。しかし、筆者(喜多崇由、フリーライター)が感じたのは、メーターや速度性能の設定基準が曖昧だという点だ。
一般的には、日本自動車工業会や各自動車メーカーの自主規制がその根拠とされ、時速180kmという数字も
「6%の上り勾配を100km/hを維持するには、平坦路で180km/h相当の出力になる」
というものだが、これがいつ、どのように決められたかは明確ではない。
自動車の性能は向上しており、この数値が安全を保ちながら実用的な性能を維持するために本当に必要なものかどうかは不明確だ。損保ジャパンの2024年3月号のマンスリーリポートによると、速度超過による死亡事故率は、超過しない場合の
「9.2倍」
に達し、車の衝撃力はスピードの2乗に比例するとしている。
「速度は命に直結する」
だけに、安全を確保しつつ、十分な性能を発揮できる速度性能についての検証が必要だ。もちろん、ドライバーが法定速度を守ることはいうまでもない。
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みんなのコメント
要するに、それを扱う人の問題。