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たった1本を回すだけでホイールの脱着可能! 便利なハズの「センターロックナット」が量産車に普及しないワケ

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たった1本を回すだけでホイールの脱着可能! 便利なハズの「センターロックナット」が量産車に普及しないワケ

 レースの世界では素早いピット作業に貢献する

 1秒の遅速が優劣を分けるレーシングカーの世界では、車両そのもののスピードが重要な要素となることは言うまでもないが、ピット作業を伴うカテゴリーのレースでは、車両のサービス性も勝敗を分ける大きなカギとなる。作業の種類にもよるが、たとえばピット作業で10秒切り詰めることができれば、これは大きなプラス材料となる。コース上を走って10秒縮めるのは、車両の性能差がない場合、10ラップ、20ラップあるいはそれ以上の周回数を費やしないと挽回できないタイム差となるからだ。

トラック・バスのホイールにナットの数が多い理由とは

 また、そうした走りが可能だとしてもマシン、ドライバーに対する負担は大きくなり、トラブルやアクシデント(スピンも含めて)を引き起こすリスクを一気に高めてしまう。走りではなく、ピット作業で時間を稼ぐことができれば、これほど有利にレースを進められる要素もない。

 こうしたピット作業時間短縮のために使われるレースメカニズムのひとつが、センターロック式のホイールだ。一般の量産車は、ホイールハブとタイヤ/ホイールを4本ないし5本のナット(あるいはボルト)で固定するが、レーシングカーではタイヤ交換時間を短縮するため、ホイールの中央1個所のみでハブと固定する方式が使われている。

 レーシングカーのホイール取り付け方式として使われるだけに、先進的な印象を受けるセンターロック方式だが、その歴史は思いのほか古い。1900年代初頭、イギリスのラッジ・ホイットワース社によって実用化されたもので、ワイヤースポークホイールをノックオフナット(ロックナットの2個所ないし3個所に設けた翼状の部分を銅製ハンマーで叩くことにより締め/緩めを行う方式)で固定する方式だった。ボラーニ製のワイヤースポークホイールもこの方式を採用するホイールだった。

 このセンターロック方式は、着脱が素早く行えることからQD(Quickly Disconnectable=素早い取り外しが可能)と呼ばれ、レーシングカーやスポーツカーのホイール固定方式として広く普及したが、ロックナットに突出した翼状の部分を持つことから、1960年代に入るとアメリカ、ドイツの安全基準に抵触することになり、代わって大型6角ナットに形状が変更された。1960年代から1970年代初頭にかけてのポルシェ一連のレーシングカー(910、907、908、917)がその代表的な使用例と言えるだろう。もちろん、F1もこの例にならったが、レース中のタイヤ交換作業が必須となる耐久レースの車両では、センターロック方式が持つ作業性のよさはより効果的だった。

 今では、レーシングカーのホイール固定方式として先進的なイメージが定着したセンターロック方式だが、レーシーな雰囲気が大きな付加価値となる市販高性能スポーツカーでは、フェラーリ・テスタロッサや288GTOといった歴史的なモデルで採用され、ポルシェは911GT3、ケイマンGT4-RS、ランボルギーニはアヴェンタドールといった世界を代表する高性能スポーツカーで、好んでこの方式は採用されてきた。

 量産車では安全面や締め付けトルクなどがネックに!

 では、量産車でセンターロック方式が使われないのはなぜなのか、という点だが、やはり信頼性の問題がいちばん大きな要素と考えられる。道路運送車両法の保安基準に照らし合わせれば、センターロック式も合法なのだが、メンテナンスも含めた信頼性の点で、やはり4~5個のナット(あるいはボルト)を使って固定する方式のほうが安全係数は高い。

 ナット固定の方式なら、4個あるいは5個のナット(ボルト)のうち、仮に1個が緩んでも、ホイールはハブに固定されたままで何事も起きないが、ナット1個で固定するセンターロック方式では、ホイールは外れてしまうことになる。

 また、ホイール脱着のためのレンチも大型のものとなり、適正トルクで締め付けなければならないことまで考えると、量産車のレベルでセンターロック化することはリスクのほうが大きくなってしまう。複数個のナットで固定するのは、こうした意味も含まれている。

 ところで、モータースポーツの世界では、その優れたサービス性が重視され、専用設計で対応できるほとんどのカテゴリーでセンターロック方式は採用されてきた。唯一、例外的だったのがNASCARで、長らく15インチのスチールホイールと5個のナットで固定する方式が採用されてきたが、さすがにレースカーとしては非論理的、非現実的ということになり、18インチのセンターロック式アルミホイールが使われることになった。

 市販車の延長メカニズムであること、車両コストを抑えることがNASCARレギュレーションの骨子だが、ほとんどの個所にレース専用設計のパーツが使われる現状を考えると、18インチのセンターロック式アルミホイール化は必然の帰結だったのかもしれない。

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みんなのコメント

27件
  • センターロックなんて普通の人には現実的ではない。
    つか90年代は、センターロックタイプのホイールがあったよな
    ナットをプレートで隠してセンターロックタイプのキャップをするやつ
    あの手のデザインは今どきじゃないのかな。。。
  • バイクの片持ちスイングだと、リアホイールはセンターロックの物も有りますね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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