2017年12月25日にマイナーチェンジを施したトヨタのアルファード/ヴェルファイア。2017年の累計販売台数は、“アル/ヴェル”合わせて8万台超と、今やクラウンの2倍を優に越える人気車だ。改良では、デザインも一新されたが、注目は進化版の緊急自動ブレーキシステム「セーフティセンス」の搭載だ。今までスバルや日産、マツダに先を越されていたトヨタの緊急自動ブレーキは、どこまでライバルに迫っているのか?
文:国沢光宏、編集部/写真:編集部、TOYOTA
ベストカー2018年2月10日号
ヘッドライトが黄ばんできた時の「新」対処法がすごい【クルマの達人になる】
出遅れたトヨタの自動ブレーキ 改良版はライバルに追いついたか?
カメラの性能が相対的に低かった「従来型」を一新し、新世代の自動ブレーキを搭載した新型アルファード/ヴェルファイア
性能でスバルや日産、マツダに引き離されていたトヨタの自動ブレーキシステムながら、アル/ヴェルのマイナーチェンジモデルから大幅にレベルアップした。
スペックを見るかぎりアイサイトver.3を凌ぎ、ボルボの新世代自動ブレーキに勝るとも劣らず。世界トップクラスといってよさそうだ。自動ブレーキの開発に出遅れたトヨタながら、今や追いつき追い越した。以下、詳しく紹介したい。
まず自動ブレーキの基本性能だけれど、ふたつある。停車している車両に対しノーブレーキで接近した時の「停止可能速度」と、車両の陰から歩いて出てくる「歩行者の認知&停止可能速度」である。
このふたつを高いレベルで達成すれば、走行中のうっかり事故低減にすばらしい効能を発揮するのだった。ちなみに現在トップの性能は、対車両で50km/h、歩行者45km/hです。
現在このスペックを達成しているのは、日産とマツダの新世代モービルアイのシステムを使っているモデルだけ。
トヨタの高機能型セーフティセンスP(レーダー+カメラ、プリウスなどに搭載)だと、対車両こそ50km/hながら、対歩行者は30~35km/hといった程度。しかも子供の歩行者を検知することができない。トヨタのシステム、カメラの性能低かったからだ。
「夜間も歩行者を検知」はトヨタとボルボだけ
夜間でも歩行者に対応する点が、新世代セーフティセンスの特長
アル/ヴェルから採用される新世代のシステムは、対歩行者で45km/hを達成しているという。しかも子どもも検知可能。ここまでは日産やマツダの新世代自動ブレーキと同じ。
決定的な差が、夜間も歩行者を検知して自動ブレーキをかけること。あまり話題に上がらないことながら、夜間の歩行者に対する自動ブレーキ対応を行っているの、ボルボの新世代システムだけ。
日産もマツダも、ある程度暗くなった時点で歩行者の検出をキャンセルしてしまう。なぜか? ロービームで見える歩行者は、上半身が認知しづらく動物などと判別できないからだ。
こう書くと「動物も検知して自動ブレーキをかければいい」と思うだろうけれど、動物に対し自動ブレーキをかけたら後続車に追突される可能性出てくる。歩行者なら追突されても仕方ないが、動物だと、ということ。
トヨタの新しいシステムは、カメラの性能を大幅に向上させてきた。ロービームでカットされても、人間だと判別できるという。夜間の歩行者も識別可能なボルボの新世代システムと同等の性能持つ。カメラやレーダー性能で出遅れていた日本の部品メーカーながら、トヨタに叱咤激励された結果、世界トップレベルになったワケ。やはり部品メーカーの協力は不可欠だ。
国産メーカーはトヨタに追いつけるか?
“自動ブレーキ”の先駆者といえば、アイサイト。スバルを筆頭にライバルはトヨタに追いつけるか?
さてさてトヨタのシステム、新しい機能を持たせている。歩行者だけでなく、自分の前を横切ろうとする自転車に対しても反応し、自動ブレーキをかけるという。試験動画見ると、右から20km/hくらいで走ってくる自転車を検知し、見事に自動ブレーキをかけ停車している。Aピラーの死角に入っているような自転車にも対応してくれるからすばらしい。
現時点では見通しのいい交差点という条件ながら、やがて一般的な交差点での自動ブレーキ対応もできるようになるかもしれない。また、試験動画を見ていて気づいたのだけれど、自動ブレーキがかかる前のタイミングで警報を出している。その時点で反応して自分でブレーキ踏めば、横切り歩行者に対し50km/hでも停止可能だと思う。自転車に対しても早いタイミングでブレーキかけられそうだ。
トヨタの新しいシステムにライバルは追いつけるだろうか? マツダと日産は、モービルアイのバージョンアップを待たなければならない。ただ夜間の歩行者検知は必要になる。2018年中に対応してくると思う。遅れそうなのがスバル。現在使っている日立のカメラだと、横切り歩行者の検知性能が低いという。ホンダはしばらく厳しいと思っていいだろう。
【国沢光宏】
ルックスは迫力満点!! 新型アルファード/ヴェルファイア
新型アルファード。従来はフォーマル路線だったアルファードも大迫力のルックスに
進化したトヨタ セーフティセンスを初搭載するアルファード/ヴェルファイアは、内外装のデザイン変更、クオリティアップ、使い勝手向上、3.5Lに新開発直噴エンジンを搭載。このエンジンに新開発のダイレクトシフト8ATを組み合わせ、最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」を設定するなど盛りだくさんの内容となっている。価格帯は335万4480円からで、ハイブリッドZRは511万9000円となる。
これまでトヨタの緊急自動ブレーキは「セーフティセンスP」、「セーフティセンスC」と、機能によって異なる名前が付けられていたが、今後はセーフティセンスに名称を統一し、アル/ヴェルから搭載される新世代システムを、順次新型車に搭載していく予定だ。
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