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【ヨコハマタイヤ アイスガード7 /SUV試乗】走りを“愉しめる”スタッドレス、20年以上も支持されるには理由がある…中三川大地

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【ヨコハマタイヤ アイスガード7 /SUV試乗】走りを“愉しめる”スタッドレス、20年以上も支持されるには理由がある…中三川大地

大小問わずSUVがメインストリームとして闊歩する時代になり、紆余曲折ありつつもEVだって増えてきた。それらはおしなべて高重量であり、特にBEVとなれば内燃機関ではなし得ないトルク特性を含めたハイパワー車両ばかり。モビリティとしての進化は歓迎するいっぽうで、そこに苦しめられるのが“タイヤ”である。

たとえシティユースであっても、常に厳しい負荷をかけられながら、それでも絶対的なグリップ力と長期的な信頼耐久性を満足させなければならない。さらに人間の果てなき欲望で、やれ乗り心地だ静粛性だ、またはコスパまで求められて。タイヤって本当にタイヘンだ。

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スタッドレスタイヤと称される冬用タイヤもまた同じ。刻一刻と路面状況が変わる日本の積雪地帯をフルカバーしながら、ドライ、ウェットも満足させる…と、要求性能は果てしない。そこに応えてきたのがニッポンのタイヤメーカーであり、その1つが横浜ゴムだ。同社のスタッドレスタイヤブランドは、20年以上の歴史を持つ「iceGUARD(アイスガード)」シリーズである。

◆北海道で磨かれた氷上性能、SUV専用スペックをとるかバランス感を取るかは好み次第
初期から一貫して貫くのは「氷上性能」へのこだわり。冒頭で述べた昨今の自動車トレンドに対する回答としては「アイスガードSUV G075」「アイスガード7 IG70」がある。

前者はブランド初のSUV向けスタッドレスタイヤとして2016年に発売された。後者は2021年に登場したヨコハマスタッドレスの第7世代である。搭載される技術をみればアイスガード7のほうが新しいが、アイスガードSUVだって負けてはいないという。優劣ではなく性格に違いがあるのだ、と。その両者の違いを、北海道・旭川にある横浜ゴム 北海道タイヤテストセンター(TTCH)で実際に比較することができた。

トヨタ『RAV4』を用いて、225/65R17サイズのアイスガード7およびアイスガードSUVを比べる。屋内試験場で常にー3.6度に保たれたツルツルの氷上において、定常円旋回による旋回性能と、急制動能力を試みた。旋回性能や制動距離など、絶対的数値が優れていたのはアイスガード7のほう。アイスガードSUVのグリップ力だって過不足ない仕上がりだが、アイスガード7はより短い時間(高速度)で難なく旋回し、制動距離も短い。感触としても、常に氷をがっちり掴むかような安心感がある。

続いてテストコース屋外に場所を移し、氷の上に踏み固められた雪が乗る圧雪路で、同じRAV4を使って急制動とスラローム走行をする。氷が顔を覗かせる部分では先述した通りアイスガード7に分があるものの、しかしアイスガードSUVだって負けてはいない。

深い雪などではしっかりとトラクションがかかり、コントロール性が高いので安心して走れる。アイスガード7よりも溝面積が多く、そして深いので、雪に食い込み排出する能力が長けているからだろう。

アイスガードSUVの溝は10.5mm、アイスガード7は8.8mm。踏み固めた雪の柱を排出する雪柱せん断力がアイスガードSUVのほうが勝り、深雪やシャーベット路面に優れるという。溝が深いということは、長期的な耐久性(耐摩耗性)でもメリットがある。

氷上性能に重きをおくのならアイスガード7だが、路面を問わず日常からレジャーまでグランツーリスモ的なSUVとして考えたら、アイスガードSUVも魅力的だ。サイズによるが、アイスガード7の2/3程度という価格帯も無視できない。

こうしたアイスガードSUVのタフさを活かしたかのような存在が、次に乗ったトヨタ『ハイエース』だ。同銘柄にはハイエース用純正サイズを用意するものの、カスタム&ドレスアップ文化を汲み取ったチューナーサイズとして215/65R16Cを新設定したという。

今回はアドバン・レーシング「RG-D2」とともに装着されており、大人3人分のウェイトを載せた状態でスラローム走行をする。車両重量をものともせずにしっとりとした乗り味を出しながら、あらゆる路面を難なく走ってくれた。

◆スタッドレスもここまで走れる、コントロール性がよく、ドライビングが楽しめるタイヤ
ポルシェ『マカン』などのプレミアムスポーツSUVとされるジャンルでは、アイスガード7のトータルバランスが際立つ。たとえ雪道であっても、「ただ我慢して走れる」だけではなく、モデル固有の魅力を失わせないのがいい。マカンであればポルシェ製“スポーツカー”としての素性の良さを訴えかけるように、とにかくコントロールするのが楽しい。

刻一刻と変わるグリップ力の推移が手に取るようにわかり、テストコースであれば、そのハンドリングマシンを思う存分楽しむことができた。

また、内燃機関(ICE)のBMW『X1 20d』と、BEVであるBMW『iX1』の比較もおもしろかった。重量が2030kgもあって、なおかつゼロ発進から最大トルクを放出するBEVの特性にも、アイスガード7はしっかりと耐えている。時にトラクションコントールの助けを借りながら、滑り出しが穏やかで安心感がある。

絶対的重量はiX1より軽いものの、それでも1,770kgとヘビー級で、なおかつ前に重いディーゼルエンジンを積んだフロントヘビーなX1であっても印象は同じ。両車のパッケージング違いによる素性を如実に訴えかけてくる。と、クルマをコントロールする楽しさを、サーキットでもなければ、夏季のワインディングでもない。極寒の北海道で味わえた。

極めつけはHKSによってカスタムされた日産『フェアレディZ』だ。ホイールは前後19インチのアドバン・レーシングGTビヨンドに取って代わり、フロント9.5J、リア10.0Jもの太いサイズに対して、幅広かつ低扁平サイズを見こしてセンターリブを1本追加したパターンナンバー「IG70A」を装着。具体的にフロント255/40R19、リア275/35R19である。

サイズを攻めようともアイスガード7の美点は健在で、発進する際にはしっかりとリアにトラクションがかかり、操舵に対して鼻先はしっかりと反応する。ラフに扱えば容易に滑り始めるが、それも唐突に破綻する類ではなくコントロールしやすい。アイスガード7の性能と、豊富なサイズ設定は、冬場の積雪地帯では眠らせておく類だったチューニングカーをこうして持ち出すことに成功した。

◆クルマ好きを満足させるスタッドレスタイヤ、サイズ/種類の違いであらゆるユーザーの要求に対応する
アイスガード7は13インチから21インチまで、数多くの純正装着サイズを網羅するほか、フェアレディZやハイエースにあるように、好きものがこだわりそうなサイズが潜む。アイスガードSUVにしたって15インチから上は23インチまである。豊富なサイズ設定もまたアイスガードシリーズの特徴だ。

横浜ゴムが有するフラッグシップブランドにして、数多くのクルマ好きを支えるアドバンの血筋が流れているともいえる。どんなに極寒の地でも、クルマ好きの心を“熱く”させてくれるのがアイスガードシリーズであり、アイスガード7やアイスガードSUVは、秀でた技術によってもたらされるライドフィールがそれを如実に訴えかけてくる。

TTCHで、日々、冬季路面と闘っているエンジニアたちは「よりちゃんと曲がる、よりちゃんと止まる」ために切磋琢磨している。理想像の追求は果てしないだろうが、その過程で芽生えたこれらの果実は、人びとの生活と社会インフラを支えるとともに、クルマ好きを満足させるものだった。

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