ボリューム感のあるボディサイズは持て余す?
都会よりもワイルドサイドで光る個性。レガシィ・アウトバックの車名が示すように、アウトバックはもともとレガシィから派生したモデルだ。ステーションワゴン型のボディを持つレガシィ・ツーリングワゴンをベースに、背を高くして悪路走破性を高めたクロスオーバーSUVである。
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ところがややこしい(?)ことに、2019年にモデルチェンジして7代目に移行したレガシィは国内に導入されていない(6代目からはセダンのみの設定)。北米専用モデルだ。だから、2021年10月にモデルチェンジして6代目になった新型のアウトバックを目にしても、レガシィの派生モデルという印象は受けない。レガシィが身近ではなくなったのだから当然だろう。
全長×全幅×全高:4870mm×1875mm×1675mm ホイールベース:2745mm 車両重量:1710kg 前軸軸重990kg 後軸軸重720kgトレッド:F1570mm/R1600mm 最低地上高:213mm最小回転半径:5.5mアウトバックは全長4870mm、全幅1875mm、全高1675mmの立派な体格を持ったクロスオーバーSUVだ。初めての出会いは駅前のロータリーだったが、実際、なかなかのボリューム感である。しかし、センターラインのある道路を運転している限り、大きさは意識しないし、乗り込んですぐ、乗り慣れたクルマのように運転することができた。
インプレッサやレヴォーグなど、スバル車に共通する特徴で、アウトバックも視界がいい。そのために、交差点の右左折(とくに左折時)でストレスを感じることがない。あるべき場所に操作レバーやスイッチがあるので、説明を受けなくても、使いたい機能を意識せずに使いこなすことができる。
センターディスプレイはレヴォーグと同じく縦型。視界の良さはスバル車の大きな美点だ。ただし例外がひとつある。オートビークルホールド(AVH)だ。試乗後に確認して、「ああ、そうだった」と思い出した。インパネ中央にある縦長の大型ディスプレイ(11.6インチ)を見てピンとくる人も多いだろう。2020年に発売された2代目レヴォーグと同じではないかと。実際同じで、もっといえば最新のアウトバックはシャシーもレヴォーグと同様、新世代のスバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)に刷新されている。
AVH(一般的にはオートブレーキホールド)は、信号待ちなどでの停止時に、ブレーキペダルから足を離しても車両側でブレーキをかけ、停止状態を保持する機能だ。電動パーキングブレーキ(EPB)とセットで装備するのが一般的で、EPBのスイッチの後方などにセットで配置するのが定番である。
ところが、アウトバックには「P」のマークがついたEPBのスイッチの近くにAVHのスイッチがない。「おかしいな」「あるはずなんだけどな」と思いつつ、信号待ちで律儀にブレーキペダルに足を載せ(当然だ)、2日間を共に過ごした。そして試乗後に、「そうだ、レヴォーグと同じでディスプレイをタッチして操作し、オンにしなければいけないんだ」と思い出した次第。AVHのスイッチは、あるべき場所にあったほうがユーザーに歓迎されると思うのだが(オンにして使うのが身に染みついた人にとってはとくに)。
ステアリングギヤ比は、13.5:1
後席の居住性も高い。シートサイズはたっぷり。ナッパレザーの本革シート身長183cmが前後に乗ると後席の膝周りの余裕はこのくらい。アウトバックの大柄なサイズは「気にならない」と前述したが、唯一気になった場面は、高速道路のサービスエリアで駐車枠に止めたときだ。1875mmの全幅は見せかけの数字ではなく、室内側から開ける際も、外からアプローチする際も、ドアを開ける際には隣のクルマに当たらないよう気を使う(ということは、隣のクルマに乗っている人たちも同じ思いをしているということだ)。
それ以外のシーンでは、余裕のあるディメンジョンをありがたく感じる。2745mmのホイールベースは前型と同一だが、後席の居住スペースは拡大しており、リヤのレッグルームは前型比で6mm拡大している。身長184cmの筆者が運転席でドラポジをとった状態で後席に座った場合、ひざ前には足を組めるほどのスペースが残る。
ラゲッジルームのサイズと作りはさすがスバル
後席を倒せばこの大容量のラゲッジスペースが出現する。左右にあるレバーを引けば簡単に後席は倒れる。これは使いやすい。広かった荷室スペースはさらに広くなり、荷室長は前型比+24mmの1086mmだ。荷室の開口幅が広くなったためアクセスしやすいし、パワーゲートが付いているので開け閉めが楽だ。リヤゲートの六連星オーナメント部のセンサーに肘など体を近づけることでリヤゲートを開けることができるハンズフリーオープン機能を付加し、使い勝手を高めている。後席は荷室のレバーを引くだけでパタンと倒れるなど、ただ広いだけでなく、使い勝手の高い荷室になっている。
エンジンは1.8ℓBOXER4ターボ
形式:水平対向4気筒DOHCターボ 型式:CB18 排気量:1795cc ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm 圧縮比:10.4 最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm 最大トルク:300Nm/1600-3600rpm 燃料供給方式:筒内直接噴射 使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 燃料タンク容量:63ℓレヴォーグと同じエンジンだが、ボンネットフードに孔はない。吸気を導く吸気口はこうなっている。前型アウトバックは2.5L水平対向4気筒自然吸気エンジンを搭載していた。新型はレヴォーグが初出しとなったCB18型の1.8L水平対向4気筒直噴ターボエンジンを搭載する。最高出力は前型比+1kW(2ps)の130kW(177ps)/5200-5600rpmだ。注目は最大トルクで、前型比+65Nmの300Nm/1600-3600rpmを発生する。235Nm/4000rpmだった前型に対し、低い回転域で大きなトルクを発生するのが特徴だ。
WLTCモード燃費は12.6km/Lから13.0km/Lに向上している(高速道路を多用した今回の試乗では、334km走った時点で燃費計は13.4km/Lを表示していた)。これに、最新のリニアトロニック(チェーン式CVT)を組み合わせる。アウトバックの諸元やキャラクターに合わせて最適化されてはいるものの、ハードウェアはレヴォーグと基本的に同一だ。
アイサイトはロングドライブの疲労を確実に軽減してくれる。今回は2名+それぞれ1泊分の荷物を積んだ状態でのドライブだった。力加減は必要充分という印象。もたもたしてストレスが溜まることもないいっぽうで、度肝を抜く加速を披露するわけでもない(試乗車の車重は1710kg)。
印象的だったのは、巡航時の静粛性の高さだ。いったん巡航スピードに達すると、一般道だろうと高速道路だろうと、エンジンやトランスミッションに由来するノイズはほとんど耳に届かず、ずっとつけていたエアコンを消したときのような、静かな環境になる(加速時の、トランスミッション起因のノイズが気にならないレベルなのも、レヴォーグと同様でポイント高し)。
車内が極めて静かなので、ロングクルーズ時は疲労軽減に効くし、大らかな車体の動きがまた、ロングクルーズに向いていると感じさせた。動きがソフトで上屋がグラグラ揺れると、体の姿勢を無意識に保持しようと筋肉を使うために疲れてしまうし、人によっては酔ってしまうだろう。アウトバックは体幹がしっかりしているので、外乱の影響を大きく受けず、ブレが少ない印象だ。「しっかり」と「しなやか」が同居した乗り味である。実際には大小さまざまな突起やうねりを乗り越えながら走っているのだが、まるで大空を滑空しているような、フラットな移動が体験できる。この大らかな乗り味は、アウトバックの大きな魅力だ。
タイヤサイズ:225/60R18銘柄はブリヂストン ALENZAを履くリヤサスペンションは、ダブルウィッシュボーン式。フロントサスペンションはマクファーソンストラット式。衝突安全性や運転支援システムもやはり、ひと足先に新型に移行したレヴォーグに準じており、時代の先端を走っている。高度運転支援システムのアイサイトXは標準装備だ。もしものときに被害を最小限にとどめてくれる機能に信頼がおけるし、自動車専用道路での運転支援機能は使いやすく、頼りがいがある。それもあってアウトバックは、なおさらロングクルーズに向いたクルマとの印象を強くした。
スバル・アウトバック Limited EX全長×全幅×全高:4870mm×1875mm×1675mmホイールベース:2745mm車両重量:1710kg乗車定員:5名最小回転半径:5.5mエンジン型式:CB18形式:水平対向4気筒DOHCターボ排気量:1795ccボア×ストローク:80.6mm×88.0mm圧縮比:10.4最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm最大トルク:300Nm/1600-3600rpm燃料供給方式:筒内直接噴射使用燃料:無鉛レギュラーガソリン燃料タンク容量:63ℓトランスミッション:チェーン式CVT(リニアトロニックCVT)WLTCモード燃費:13.0km/ℓ 市街地モード 9.6km/ℓ 郊外モード 13.7km/ℓ 高速道路モード 14.7km/ℓ車両本体価格:429万円試乗車はメーカーオプション込み470万8000円(本革シート(ナッパレザー)/ハーマンカードンサウンドシステム/サンルーフ
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みんなのコメント
走行性能、安全装備、価格、あまり多くない所もいい。
ちょっと控えめな上品さもあるし、カラーバリエーションも豊富。
広大なアメリカで長年にわたって育まれたクルマ
チマチマしたニッポンの道には、却って勿体ない