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【ヒットの法則32】BMW M6クーペはM社の技術を結集して開発されたレース用ベース車両だった

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【ヒットの法則32】BMW M6クーペはM社の技術を結集して開発されたレース用ベース車両だった

2004年12月中旬、突然写真が公開され、その存在が明らかになったM6クーペ。その国際試乗会が2005年4月にスペインで行われている。645CiをベースにM5のV10エンジンを搭載したスーパースポーツクーペは、「M5のクーペ版」ともとれる成り立ちだが、その正体はモータースポーツ参戦を視野に入れたさらに先鋭的なモデルだった。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年6月号より)

「知る人」をゾクッとさせる凄み、M6には存在感がある
ドイツのぐずついた天気とは裏腹に、南スペインのセビリアには抜けるような青空と20度を超える初夏のような陽射しがあった。507psのV10エンジンを搭載するニューモデル、M6をテストするには最高の条件である。

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セビリア郊外にあるリゾートホテルのファサードに並んだM6には、まさにスタートを待っているサラブレッドのような精悍さがあった。

メルセデス・ベンツの子会社であるAMGからBMW M社の社長に就任したウルリッヒ・ブルンケにとって、M6はM社で初めて世に送り出すニューモデルである。「Mモデルの伝統である徹底的な見直しを行って完成させた!」と言うだけあって、そのアピアランスは「知る人」をゾクッとさせる凄みを持っている。

ポイントは「知る人」という点である。たとえば、スチールよりも4.5kgも軽量化されたカーボン製ルーフもフツウの人にとってはプラスチックにしか見えないだろう。スタンダードの6シリーズの2倍の冷却気を必要とするV10エンジンのために設けられたキドニーグリルの下のエアインテークや、最高のロードホールディングを確保するために装着された前255/40R19、後285/35R19サイズのタイヤにしても、ただのデコレーションに見えるかもしれない。

しかし、Mの名が与えられたモデルに装着されているパーツはすべて意味のあるもので、不要なものなどなにひとつない。いたずらに大きなウイングを装着することなど考えられないのだ。

インテリアもエクステリアと同じだ。「控えめな違い」が室内の空気を支配している。7速SMGのセレクトレバーやカーボンのセンターコンソール、スポーツシートを除けば、M6は645Ciや630Ciとほとんど変わるところはない。

しかし、明らかにM6には存在感がある。ドライバーがスターターキーを回しながら(これはM6に相応しくない。独立したスタートボタンが欲しい)正面を見ると、スピードメーターは330km/hまで刻まれ、タコメーターのレッドゾーンは8250rpmからとなっているのを確認するはずだ。

試乗会場からの通常のスタートに際しては、まず自動的に400psが選択されている。SMGをフルオートマチックにしてスロットルをわずかに踏みこむと、1715kgのM6は金属的なサウンドを響かせながらスペインのカントリーロードへ向けて俊敏な加速を開始する。

最初のセクションは、プライベートサーキット「アスカリクラブ」までの125kmほどの行程。この道は今年の春にポルシェ911カレラ カブリオレで走ったことがあるので、ナビの設定をしなくても道に迷うことはない。

やがて、カントリーロードに入り交通量が激減したのを見計らって、パワー規制を解除してみる。電子制御のダンパーコントロールをスポーツに、SMGをマニュアルモードに、シフトスピードも最速にして再スタートする。

エクストラパワーの107psを得たM6は、まさにアスファルトを掻きむしるような勢いでワインディングロードを飛ばす。シフトアップあるいはシフトダウンは、ステアリング背後のパドルで短く鋭く、そして確実に行うことができる。とくにシフトダウンに際して与えられるダブルクラッチによる自動スロットルワークは大変気持ちがいい。必要もないのにギアの操作をしてしまうほどだった。

その加速の凄まじさは飛行機が超低空飛行するようなフィーリングである。BMWのデータによれば0→100km/hまではわずか4.6秒。そのままスロットルを踏み続ければ、いとも簡単に200km/hの壁を超える。

もちろん公道上なのでスピードを出すわけにはいかない。それでも、フロント374φ、リア370φの大径ベンチレーテッドブレーキは強力で安定したマイナスGを生み出してくれるので、万一の時も安心だ。ディスクローターはスチールなので「暖機」を気にする必要もない。

M5と同じメカニズムだが、より軽快に感じられる
ほどなくプライベートサーキット「アスカリクラブ」に到着する。1周5kmほどのテクニカルコースで、M6の真の実力を試そうというわけである、

M5で初めて採用されたローンチコントロールによって猛然とスタートしたM6は、左コーナー直前でブレーキングし、アペックスへ向かう。わずかなステアリングの動きでシャープにノーズが思った方向へ向かう。この時点でM5よりもおよそ11cm短いホイルベースの恩恵を感じる。続く左右のコーナーではヒラリヒラリとした軽快きわまるハンドリングを見せたが、これにはルーフの軽量化による重心位置の低下が効いているようだ。

当初は3周に限られていたサーキット走行だが、参加者のほとんどはコースマーシャルの目を盗んで周回を重ねていく。誰もが楽しくてやめられなくなっていた。そういう私も同乗者のイタリア人記者が電話をしている間に、彼の分まで走ってしまった。

M6の価格はドイツで税込み10万6500ユーロ、日本円にしておよそ1500万円である。これは645Ciよりも3万4500ユーロ(約470万円)も高い。これはけっして安価ではない。

ただ、507psのV10エンジンを搭載し、トランク容量450Lの実用性とカーボンルーフを持つ4シータースポーツクーペということを考えると、高くはないだろう。

さらに、他のモデルと較べると面白い結果が出る。420psのポルシェ911ターボよりは2万2176ユーロ(約300万円)も安く、ランボルギーニ ガヤルドと比較すると3万5600ユーロ(約480万円)も差が出る。これはあくまでもドイツでの話だが、日本でもこれに似た結果が出るに違いない。

M6はスポーツカーファンを悩ませる存在になりそうだ。サーキットからセビリアのホテルまでの帰路では、道路が非常に空いていたこともあり、底知れぬパワーを体験することができた。しかし、M6の最高速度は250km/hに制限されている。エンジンパワー、洗練された空力特性、安定したサスペンション、ブレーキなど考慮すると、M6の本来の実力は少なく見積もっても320km/hのパフォーマンスはあるはずである。

この日のディナーで、250km/h規制の問題が話題になった。というのは、アウディがリミテッドバージョンと称して999台のRS6の最高速度を280km/hまで引き上げたというニュースが伝わったからである。さらに最新のRS4においても同じようなリミテッドエディションが販売される可能性が指摘されている。

こうした動きの裏には、実はオーナーの手に渡った高性能モデルのほとんどがチューナーの手によってリミッターが解除されているという事実がある。自動車メーカーにとっては、簡単で、かなりの収益になるチューニングビジネスを黙って指をくわえて見ているわけにもいかないということだろう。ブルンケ社長はこうした限定版速度無制限バージョンについてのコメントを控えているが、このテーマはいずれ避けて通れない問題になるはずだ。

今後登場が噂されるM6 CSLでは250km/hのリミッターが解除されるのだろうか。スーパースポーツが次々とデビューする彼の地では、日本の交通行政の常識を超えた議論が高まっている。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年6月号より)

ヒットの法則のバックナンバー

BMW M6クーペ(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4871×1855×1377mm
●ホイールベース:2781mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:V10DOHC
●排気量:4999cc
●最高出力:507ps/7750rpm
●最大トルク:520Nm/6100rpm
●トランスミッション:7速DCT(SMG)
●駆動方式:FR
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:4.6秒
※欧州仕様

[ アルバム : BMW M6クーペ(2005年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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