現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【名車への道】’93 ランチア ハイエナ ザガート

ここから本文です

【名車への道】’93 ランチア ハイエナ ザガート

掲載 1
【名車への道】’93 ランチア ハイエナ ザガート

デルタをベースに名門カロッツェリアが仕立てた希少2ドアスポーツ

——さて、2022年の1回目です。何か特別なモデルを紹介したくないですか?

過去記事はこちら

松本 確かに最初だし、素敵な車がいいよね。今、カーセンサーEDGE.netを見ているんだけど、イタリア車ってほんと華があると思うんだよね。アルファ ロメオ ジュニアザガート、マセラティ スパイダーザガート、アルファ ロメオのモントリオールとかさ?

——今回はそれらに負けないぐらいの希少車を用意しましたよ。前にお邪魔したことがありますが、世田谷のシノダオートモービルさんに変わった車があったんですよ。松本さん、お気に召すかな? ザガートのハイエナ? っていうんですけど。知ってます?

松本 本当に? それは恐ろしくレアだよ。一度だけ実車を見たことあるんだけど、写真で見るよりもギュッと凝縮感があってさ。同じ系統のデザインだったアルファ ロメオ SZ(5ベースの新しいタイプ)よりもキビキビしてて、往年のザガートを彷彿とさせる軽快なフォルムなんだよ。

——やっぱり探してみると面白い車が流通しているんですね……。あ、この車ですね。あれ? これ何かの車に似てますよね? なんだろう。

松本 この車のコンポーネントはランチア デルタHFインテグラーレのエボルツィオーネなんだ。だからファーガソンタイプのフルタイム4WDを積んでるんだよ。

——あー。え? デルタHFインテグラーレって4ドアですよね? この車、2ドアですけど……。

 松本 カロッツェリアザガートにとってはそんなのはお茶の子さいさいなんだよ。まさかと思うけどカロッツェリアザガートは知ってるよね?

——はい……ある程度は……ですけど。

松本 ホント、ちゃんと覚えておいてよ。このカロッツェリアを知らないと会話に加われないからね(笑)。

——念のため、もう一度説明をお願いします……。

松本 カロッツェリアザガートは、傑作と言われたフィアット 600ベースのGT モデルであるフィアットアバルト 750ザガートとか、アルファ ロメオ SZ、TZ、弩級のモデルだとアストンマーティン DB4 GTザガートなんかを作った会社なんだ。1950年代にはフェラーリをワンオフで作ったりしてたね。会社を作ったウーゴ・ザガートという人は、航空機技術に精通した人物でアルミ合金を多用して強度を上げる作り方を知っていた人と言われているんだ。

——ほうほう。

松本 まさに、憧れのカロッツェリアなんだよ。分からないかなぁ、このすごさが。

——わ、分かりますよ。

松本 ちなみに、僕は20年くらい前にこのカロッツェリアザガートへ行ったことあるんだよ。

——本当ですか?

松本 まだ近代的になる前の感じでね。写真でしか見たことなかったカロッツェリアの仕事場が幸運にも覗けたんだよ。小さなクレイモデルを置くテーブルに、赤と白のテーブルクロスを広げて自家製のパニーニと瓶に入ったジュース類を振る舞ってくれてね。そんなすごい会社なのに、とても気さくな人たちばっかりだったよ。カロッツェリアザガートの3代目であるアンドレアさんと一緒に歓談しながら楽しいランチタイムを過ごしたりしたよ。

——またすごい話ですね、それも。

松本 なんか無造作に、埃を被ったトロフィーが置いてあったんだけど、見たら1960年代のタルガフローリオのモノだったりしてびっくりしたよ。それほど大らかなカロッツェリアなんだ。こういう自由な雰囲気だから、小ロッドの素晴らしい作品が世に送り出せたんだと思うよ。

 ——このハイエナザガートはどんな車なんですか?

松本 この車は経緯よりも詳細の方が大事だから生い立ちはあえて割愛するけど、クラシックカーに詳しいオランダの実業家がスケッチ見て作ろう! と狼煙(のろし)を上げたのがきっかけだったんだ。そして75台限定で作ることになった。そういえば昔、横浜にザガート・ジャパンっていう輸入元があって、何度か他のザガートを見に行ったな。

——これだけ大きく作り替えるのって、かなり大変なんですよね?

松本 そうだね。このハイエナを作るにあたって、かなり苦労したそうなんだ。なんといってもフィアット側はストリップアウトしたデルタ インテグラーレのシャシーだけはできないって主張していたらしく、仕方なくディーラーからランチア デルタHFインテグラーレを購入してきて、それをバラバラにして作ったんだよ。

——もったいない話ですね……。

松本 この車はプラットフォームとエンジン、動力伝達系はインテグラーレのものを使って、キャビンのほとんどはアルミ合金の板から叩き出して作られているんだよ。このあたりは昔ながらの作り方だね。FRPで型に樹脂や繊維を張って作る方式と違って、テクニックとセンスが問われるんだ。いわばアルティジャーノ(職人)ここにあり、みたいなモデルなんだよね。

——ちょっと他では見られないフォルムですもんね。

松本 スポーツカーとして軽量化にも配慮してあってね、ドアの内張りやダッシュボードはカーボンコンポジットで作られているんだ。しかもボディ剛性を高めるためにリアハッチが開かない、いわゆるモノフォルムで作られているんだよ。実用性よりも性能とデザインを重視したんだね。あと、オリジナルのランチア デルタHFインテグラーレよりも150kgも軽く作られているんだ。

——限定生産75台ってかなり少ないですよね?

松本 そうだけど、実際には75台は作られず、24台と言われているんだ。本当にレアモデルだよ。しかも作っているのはフィアット、アルファ ロメオやマセラティ、そしてランチアの黄金期を支えて、イタリアの輝かしいスポーツカー史を作ったカロッツェリアだからね。今、ハンドメイドの車にどれだけ価値があるか、流通価格を見れば分かるでしょ?

——確かにそのとおりですね。

松本 唯一無二の歴史ある少量カロッツェリア、ザガート社が作ったハイエナザガートはちょっとやそっとではお目にかかれないモデルだし、価値が上がるのはむしろ当たり前だと思うな。

 

ランチア ハイエナ ザガート

ランチア デルタ HFインテグラーレをベースに、名物カロッツェリアのザガートが仕立てた2シータークーペ。ボディには、ザガートが得意としていた軽量なアルミが用いられている。75台を予定していた生産台数は、最終的に24台のみに。撮影車両は正規輸入された3台のうちの1台となる。※カーセンサーEDGE 2022年3月号(2022年1月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています文/松本英雄、写真/岡村昌宏

【取材協力】シノダオートモービルカーセンサーEDGE.netはこちら

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

日産「崖っぷち」からの大逆転なるか? 800億円赤字、工場閉鎖…「技術の日産」再興でスバル化戦略? e-Powerの未来どうなる
日産「崖っぷち」からの大逆転なるか? 800億円赤字、工場閉鎖…「技術の日産」再興でスバル化戦略? e-Powerの未来どうなる
Merkmal
東京ガス、EV充電サービス「EVrest」に新料金メニュー…充電器ごとの柔軟な設定が可能に
東京ガス、EV充電サービス「EVrest」に新料金メニュー…充電器ごとの柔軟な設定が可能に
レスポンス
【RQ決定情報2025】スーパーフォーミュラの新チームをサポートする『KDDIレースアンバサダー』のメンバーが発表
【RQ決定情報2025】スーパーフォーミュラの新チームをサポートする『KDDIレースアンバサダー』のメンバーが発表
AUTOSPORT web
ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」をガチで比べるとどっちがいいの?
ホンダe:HEVと日産e-POWER 元エンジニアが判定「長所」と「短所」をガチで比べるとどっちがいいの?
ベストカーWeb
「マイクロバス」はトヨタの商品名だと知ってた? 60年以上むかしのトラック「ダイナ」ベースのバスがとってもおしゃれ! 昭和懐かしのクルマを紹介します
「マイクロバス」はトヨタの商品名だと知ってた? 60年以上むかしのトラック「ダイナ」ベースのバスがとってもおしゃれ! 昭和懐かしのクルマを紹介します
Auto Messe Web
ユーザーがクルマの「リコール」を放置すると車検に通らない場合も! そもそも「リコール」ってどんな場合に出されるもの?
ユーザーがクルマの「リコール」を放置すると車検に通らない場合も! そもそも「リコール」ってどんな場合に出されるもの?
WEB CARTOP
ママチャリとロードバイクが合体!? トップチューブレス設計のスポーツバイク「ママチャリロード2」発売
ママチャリとロードバイクが合体!? トップチューブレス設計のスポーツバイク「ママチャリロード2」発売
バイクのニュース
ホンダ「WR-V」一部改良! 高級インテリア採用&精悍すぎる「ブラックスタイル」登場! 値上げ実施も“全車250万円台以下”をキープ!
ホンダ「WR-V」一部改良! 高級インテリア採用&精悍すぎる「ブラックスタイル」登場! 値上げ実施も“全車250万円台以下”をキープ!
くるまのニュース
2025年2月の新車販売ランキング、スペーシアが2位浮上 N-BOXはトップ変わらず
2025年2月の新車販売ランキング、スペーシアが2位浮上 N-BOXはトップ変わらず
日刊自動車新聞
テストでは最多周回を走り込んだメルセデス。弱点の克服を実感「開幕戦には完全な準備ができたマシンを持ち込む」
テストでは最多周回を走り込んだメルセデス。弱点の克服を実感「開幕戦には完全な準備ができたマシンを持ち込む」
AUTOSPORT web
ジャガーは何をやろうとしているのか 1900万円の新型EV、狙いは? 独占インタビュー
ジャガーは何をやろうとしているのか 1900万円の新型EV、狙いは? 独占インタビュー
AUTOCAR JAPAN
レクサス最新「“5人乗り”コンパクトSUV」に注目! リッター「28キロ」走る“最安&最小”な「LBX エレガント」がスゴイ! “豪華内装×特別カラー”など気になる仕様とは?
レクサス最新「“5人乗り”コンパクトSUV」に注目! リッター「28キロ」走る“最安&最小”な「LBX エレガント」がスゴイ! “豪華内装×特別カラー”など気になる仕様とは?
くるまのニュース
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
タカラトミーが Juju 選手とパートナー契約…スーパーフォーミュラマシンに「TOMICA」のロゴ
レスポンス
2025年2月の外国メーカー車販売、前年比3.6%増の1万8601台 2カ月連続プラス VW増加で底上げ
2025年2月の外国メーカー車販売、前年比3.6%増の1万8601台 2カ月連続プラス VW増加で底上げ
日刊自動車新聞
【中国】約200万円! トヨタ新型「bZ3X」25年3月発売に反響多数! 「RAV4より広くて快適そう」「価格安すぎ」「先進運転支援システムが気になる」の声も! 新たな「bZシリーズ」登場!
【中国】約200万円! トヨタ新型「bZ3X」25年3月発売に反響多数! 「RAV4より広くて快適そう」「価格安すぎ」「先進運転支援システムが気になる」の声も! 新たな「bZシリーズ」登場!
くるまのニュース
トヨタ「アルファード」でスポーツVIPを表現! 愛車に「リンファード」と名付けた理由は給油口を見れば納得…実は家族愛あふれる1台でした
トヨタ「アルファード」でスポーツVIPを表現! 愛車に「リンファード」と名付けた理由は給油口を見れば納得…実は家族愛あふれる1台でした
Auto Messe Web
黒いトヨタのエンブレムがカッコいい! ヤリス&ヤリス クロスに特別仕様車「Z“URBANO(ウルバーノ)”」が登場。
黒いトヨタのエンブレムがカッコいい! ヤリス&ヤリス クロスに特別仕様車「Z“URBANO(ウルバーノ)”」が登場。
くるくら
「運転者管理システム」の運用3月22・23日全国一斉停止、マイナカード移行作業で免許証更新業務もストップ[新聞ウォッチ]
「運転者管理システム」の運用3月22・23日全国一斉停止、マイナカード移行作業で免許証更新業務もストップ[新聞ウォッチ]
レスポンス

みんなのコメント

1件
  • インテリアは、ダッシュパネルからコンソール、そしてドアのインナーパネルに至るまで総カーボンファイバーとなっているが、この製造過程に問題が発生したことから、結局24台がラインアウトしたに留まったといわれている。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

520 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

99 . 8万円 4785 . 2万円

中古車を検索
ランチア デルタの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

520 . 0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

99 . 8万円 4785 . 2万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村