McLaren GT
マクラーレン GT
マクラーレン GT 初試乗! 独自の解釈で再定義した新たなるグランドツアラー
乗り心地に改革をもたらしたマクラーレン
かれこれ8年半くらい前のこと。ボクは1台のスーパーカーに試乗して衝撃を受けた。これは一大画期になると、確信した。
初めて訪れたテクニカルなサーキット(アウトドローモ・アルガルベ)でいきなり試すことになったそのマシンは、600psのMR(ミッドエンジン・リヤドライブ)で、しかもところどころに雨の滲みが残っているという路面コンディションだった。普通なら怯んでなかなか攻め込めないクルマとコンディションだったにも関わらず、笑いを堪えることができなくなるほど果敢に攻め楽しむことができた。あんな経験は後にも先にもない。
驚きはそれだけに留まらなかった。サーキットを出て一般道を試乗してみれば、その日イチバンの衝撃が待ち受けていたのだ。荒れ果てたポルトガルの片田舎の舗装路を、それはまるでドイツ製スポーツサルーンのように気持ちよく走るではないか。そんなスーパーカー、今までなかった。否、あえて挙げればアウディR8がそうだったが、それはアウディだ。
世界最高のレースチームが造り上げた悲願の純正ロードカーは、我々の想像を超えていた。そして、スーパーカー界に“乗り心地改革”をもたらしたのだ。マクラーレンMP4-12Cである。
4番目のシリーズとなる「GT」
マクラーレンのその後の発展は、みなさんもご存知の通り。MP4-12C登場時からアナウンスされていた戦略=3つのシリーズ、上から順にアルティメット、スーパー、スポーツの“松・竹・梅”を完成させ、現在では年産5千台規模のミッドシップカーメーカーへと成長した。累計販売台数も2万台を突破している。
そんなマクラーレンがトラック25計画に基づき、スーパーカー界にまた新たな提案を試みた。4番目のシリーズとなる「マクラーレン GT」の登場だ。
英国車がGTと名乗る場合、それは島国を脱出しフランスやスペイン、イタリアといった風光明媚なヨーロッパ大陸を駆け抜けるグランドツアラーを意味する。ベントレーのコンチネンタルシリーズなどは、その最たる存在だ。
英国製GTとはどんなクルマのことを言うのか。たとえば貴方がロンドン郊外の屋敷に住んでいたとしよう。妻とふたり、週末の荷物を積み込んでドーバーを目指す。イギリスの高低差はさほどないが心地よい曲率の続くカントリーロードを気持ちよく駆け抜けるハンドリング性能が必要だ。
40km程度のドーバー海峡をカートレインで渡れば、フランス北端の街カレーである。そこからはオートルート、一応制限速度は130km/h、をかっ飛ばして南下。交通量の少ないオートルートで目的地に向かうためには、類い稀な巡航パフォーマンスが必要だ。目的地は、たとえば“男と女”のドーヴィルはどうだろう。
マクラーレン流「GT」の定義
つまり、レースの名門ブランドらしい基本のスポーツ性能を損なうことなく、“快適で実用性の高いラグジュアリー・スーパースポーツを造る”という、いかにも英国車らしくて新しい4番目のシリーズをマクラーレンは提案したというわけだ。
ではなぜ、今となっては世界で唯一(年産1000台以上のブランドで)となった2シーターミッドシップカーしか造らないメーカーが、快適で実用性の高いモデルを必要としたのか。多くのスーパーカー好きが理解に苦しむところかもしれない。いっそランボルギーニのようにSUVを出せばいいじゃないか。フェラーリだってそうするみたいだし?
けれども、もし貴方がマクラーレンのクルマ造りに大いなる共感を抱いているオーナーであるならば、GTシリーズというこの新たな提案を称賛するに違いない。マクラーレンはメタルシャシーのクルマなど造ったことはないし、ファンもそれを望んではこなかった。カーボンボディを駆使するマクラーレンにしか造れない快適なGTができるのであれば、それに越したことはない。
たとえば硬派な600LT スパイダーを仕舞ったガレージのその脇に、メルセデスAMG SL63やベントレー コンチネンタルGTではなく、新型マクラーレンGTを置いたほうがシアワセ、と感じるマクラーレンファンは少なくないだろう。
720系をベースにリファイン
基本的にその中身は、現行型スーパーシリーズ(720系)のメカニズムやシステムをGT専用に“ややコンフォート”に向けてリファインしたもの、と考えていい。たとえば、RTM成型のカーボンモノコックボディはモノセルII-T(Touring)で、サイドシルを下げて乗降性を高め、またリヤにカーボン製ブリッジ構造を加えて電動ガラスゲートの基点としている。
エンジンもスーパーシリーズと同系統ながら、M840TEと呼ばれる別チューニング仕様である。低慣性のターボチャージャーを使用することで最高出力を極めない代わりに実用域におけるトルク特性を重視するチューニングとした。また、吸気ダクトとサージタンクの高さを抑え、排気系システムも別設計とすることで、エンジン上部、すなわち電動ガラスゲートの下、に420リットルものラゲッジスペースを稼いでいる。
そのほか、プロアクティブ・ダンピング・コントロール・サスペンションや、電動油圧式ステアリングシステム、7速SSGデュアルクラッチトランスミッションの各種制御も、よりコンフォート性重視にチューンされた。
優雅さを感じるミッドシップマシン
スタイリングを眺めていれば、このクルマのキャラクターは透けて見えてくる。これまでのどのマクラーレンよりも、上品でラグジュアリーな見映え質感を実現しているからだ。
650S以降のモデルはすべて、その空力性能の高さを誇示する独特なスタイリングをまとってきた。けれどもGTは違う。ミッドシップスポーツカーであることを強くアピールしてみせたものの、デザインはシンプルかつエレガントな志向で、優雅ささえ漂わせてみせた。
南仏の暖かな陽射しのもと、初めてマクラーレンGTの脇に立ってみたが、まずはそのボディサイズに目を見張った。スーパーシリーズに比べて明らかに幅が広く見えるし、長く、そして背も少し高い。フロントまわりはユニークなスタイルで、ノーズはハンマーのように水平に切られており、最低地上高を稼いだ。
圧巻はリヤセクション。優雅なルーフラインがグラマラスなリヤフェンダーラインとボディエンドで美しく融合する。淡いメタリックカラーが似合うのは、ラインのひとつひとつが玉のように美しい弧を描いているからだろう。
開閉しやすく、ステップインもラクなディヘドラルドアを開けてコクピットにもぐり込めば、室内も“マクラーレン”とは思えないほど洗練されている。正にブリティッシュ・モダン・ラグジュアリーの文脈というべきで、デザイン、マテリアルともに汗臭さは微塵もなく、それゆえアルカンターラよりオールレザーが似合うインテリアだ。
街中では、まるで最新の英国製スポーツサルーン
英国を抜け出し南仏まではるばるやってきたという体で、サントロペの豪奢な別荘をスタートした。GTにもスーパーシリーズと同様にハンドリングとパワートレインのモード選択ダイヤルがあり、アクティブ=起動すれば各々の好みのキャラクターを選ぶことができる。躊躇うことなくコンフォートを選んだ。
V8エンジンの目覚めは静かだ。ドライバーをけしかけるようなサウンドや振動はまるでない。発進も極めてスムーズ。心地よくアップシフトしていく。十二分のトルクを上手に使っているという印象である。
サントロペの街中では、まるで最新の英国製スポーツサルーンを駆っているかのように走る。静粛性も高く、カーボンボディに特有の微振動も抑えられている。ときおり、ことりことりと鳴るのは相変わらずだが、それすらも弱めの響きだ。
郊外に入ってもまだコンフォートモードがいい。変速もクルマ任せのオート。90~100km/hあたりで無理せず力まず落ち着いたまま楽しむドライビングの何と気持ちのいいことか。デリシャスなドライブフィールとはこのことを言う。汗をかくことなく、鼻歌混じりで、軽く流していてもけっこうな速度域をキープできる。この心地よさは、生粋のハンドリングマシンでないと味わえない。
もうこのままずっとコンフォートモードで走っていてもいい。そんな風にも思えてしまう。
スポーツモードでもジェントル仕立て
それではマクラーレンであることが廃る。というわけで、スポーツモードに切り替え、変速もパドルで行ってみた。
印象的にはいっそう操りやすくなったマクラーレン、である。強くて軽いカーボンボディを核に自在に動く感覚はほとんど変わらない。他のシリーズより若干、左右のステアフィールが異なるように思えるのは幅が広いせいだろう。サウンドはやや逞しくなって、野太く刻むノートが身体に心地よく響いていた。
全開加速を試そうなどとは、なかなか思わないクルマだけれども、あえて試みてみたならば、これはこれで十分に速いと思えるものだった。低回転域からシームレスに速度をあげていく様はスーパーシリーズより確かに大人しいもので、怯むほどの中間加速ではなかったけれども、乗り手の心を踊らせるに十分な速さではある。このあたり、軽量仕立てスーパーカーの面目躍如というべきだろう。
このパフォーマンスならサーキットでも十分に楽しめるはず。そこはやはり、マクラーレンのミッドシップカーなのだ。
グランツアラーという古くて新しいキャラクター
シャシーの魅力がエンジンに優っている。だから、ただ流しているだけでも気分がいい。そんなスーパーカーが過去にあっただろうか?
スーパーカーの魅力といえば、デザインと速さや最高速度(=スペック)だった。そこ(=スーパーカー界)に英国のスポーツカーブランドらしくシャシーの魅力を持ち込んだのがマクラーレンであり、冒頭にも記したとおり“乗り心地改革”を促した。その証拠に、MP4-12C登場以降のフェラーリやランボルギーニがいずれもコンフォート性を重視している。
そして今、ミッドシップ2シーターのスーパーカー界にグランツアラーという古くて新しいキャラクターをマクラーレンは持ち込んだ。カーボンモノコックボディのマシンしか造らないマクラーレンならでは、の発想と結果であろう。
これならいっそ、エンジンじゃなくていいかも?? そう思わせるだけの魅力が、マクラーレンGTのカーボンシャシーにはあるのだった。
REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
【SPECIFICATIONS】
マクラーレン GT
ボディサイズ:全長4683 全幅2045 全高1213mm
ホイールベース:2675mm
トレッド:前1671 後1663mm
乾燥重量:1466kg
車両重量:1530kg(DIN)
前後重量配分:42.5:57.5
ラゲッジ容量:前150 後420リットル
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:456kW(620ps)/7500rpm
最大トルク:630Nm/5500~6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
ステアリング:電動油圧パワーステアリング
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
ローター径:前367 後354mm
キャリパー:前後4ピストン
タイヤサイズ(リム幅):前225/35R20(8J) 後295/30R21(10.5J)
最高速度:326km/h
0 – 100km/h加速:3.2秒
0 – 200km/h加速:9.0秒
燃料消費(WLTP/複合):11.9km/L
CO2排出量(WLTP):270g/km
車両本体価格:2645万円(消費税8%含む)
【問い合わせ】
マクラーレン東京 TEL 03-6438-1963
マクラーレン麻布 TEL 03-3446-0555
マクラーレン名古屋 TEL 052-528-5855
マクラーレン大阪 TEL 06-6121-8821
マクラーレン福岡 TEL 092-611-8899
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