■石川真禧照のK-CAR徹底解剖
日本で唯一というか、世界を見渡しても排気量が0.658ℓで、小さなボディーのオフロードカーはこのクルマしかない。スズキ「ジムニー」は、スズキが1970年に発売したスモールサイズのオフロードカー。初代は1970年から1981年、2代目は1998年まで、3代目は2018年までそれぞれ生産されていた。現行モデルは実に20年ぶりにフルモデルチェンジした4代目。1970年にデビューし、今年まで53年間で3回目のニューモデルとなる。1モデルが平均で17年も製造・販売されているクルマは珍しい。もちろん、その間に細かな進化は遂げている。
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実際に、2018年に登場した4代目も2021年にはオートライトシステムを全車に搭載、4速AT車にアイドリングストップが追加されている。直近は2022年6月に5速MT車にもアイドリングストップが追加され、インパネスイッチのレイアウトを変更している。今回は、最新モデルの5速MT車に試乗した。「ジムニー」は初代からマニュアルミッション仕様が用意されている。
マイナーチェンジで、5速MT車にもアイドリングストップが搭載
シートポジションを合わせる。クラッチペダルはやや重めの踏力で、反発力は渋滞路での連続走行でも耐えられる重さを保っている。シフトレバーのストロークは前後、左右方向ともやや長めだが、リバースへの入れづらさはなかった。ハンドルはロックからロックまで4.0回転と多い。シートポジションはレバーでスライド。背もたれはシート横のダイヤルを回して、好みの位置を決める。ハンドルは高さを調整できるが、前後方向は固定式だ。
やや高めの着座位置にセットする。頭上のスペースは全高が1725mmあるので、十分に広い。さらにフロントウインドウの角度がAピラーを立たせたことと、ドアウインドウも立たせたことで、空間が広くなった。圧迫感はない。
今回のマイナーチェンジで、5速MT車にもアイドリングストップが搭載された。その作動は、ブレーキを踏み、クラッチを切ってギアをニュートラルにして、停止すると、アイドルストップするという仕組み。再びクラッチペダルを踏み込むと、エンジンが再始動する。この採用で、WLTC燃費は16.2km/L~16.6km/Lに向上したという。
1速にシフトし、クラッチをミートさせてスタート。ハンドルの向こう側にあるエンジン回転計は9000回転スケールで、7000回転からレッドゾーンに設定されている。3気筒DOHCエンジンは3000回転をオーバーしたあたりから音が大きくなり始めた。5000回転をポイントに各ギアで加速を試す。1速25km/h、2速40、3速60、4速で95km/hに達する。エンジン回転の上昇スピードが早く、ドライバーは忙しくクラッチとシフトを操らなければならない。100km/h巡航は5速3700回転、4速では5200回転になる。この速度でのロングドライブはタフでなければ辛いかもしれない。
一方で、低回転での動きだが、トルクは1800回転あたりからアクセルレスポンスがある。60km/hが5速2200回転なので、街中でも5速ギアは十分に使える。エンジン音は3000回転あたりから大きめになるが、マニュアルミッションのギアノイズは2000回転あたりから高まってくる。
全体に重め、ハンドル保持に力を必要とするある程度の腕力が要るクルマ
ハンドリングと乗り心地だが、操舵力は直進性が強く、低速域では切り込む時に抵抗がある。カーブでもきりこむと、戻しが強く、重めだ。全体にハンドル保持に力を必要とする。ある程度の腕力が要るクルマだ。
乗り心地も低速では硬さや上下動のキツさは少ない。中・高速では上下動が発生するが進路を乱されるほどの動きではなく、これなら長時間のドライブも耐えられそうだ。タイヤはブリヂストンの「デューラーH/L」で175/80R16を装着していた。
リアシートは、フロントドアから乗り込む形となる。着座位置はやや高めで、ヘッドスペースは身長170cmクラスがギリギリだ。足元は、つま先がフロントシートの下に入るが、広くはない。背もたれはリクライニングする。前に倒せば床面とほぼフラットになる。
右ヒンジのリアゲートは開けても荷物スペースはほとんどない。2分の1ずつ倒せる後席スペースが荷室だ。試乗して、AT車との比較だが、街乗りが中心ならAT車。MT車はマニアックな「ジムニー」ファンのためのホビーカーという印象だ。
■関連情報
https://www.suzuki.co.jp/car/jimny/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博
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