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マセラティ・グランツーリスモ vs メルセデスCL500 vs ポルシェ911 vs ジャガーXK 新車時の評価は? 前編

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マセラティ・グランツーリスモ vs メルセデスCL500 vs ポルシェ911 vs ジャガーXK 新車時の評価は? 前編

もくじ

前編
ー 神はイタリアにあり
ー その名に恥じぬGTなのか
ー なぜM6は参加していないのか
ー vsメルセデス・ベンツCL:洗練性は大きく劣らず
ー GTとして十分な広さ
ー 美点を曇らせるほどの欠点あり

4ドアのメルセデス-AMG GTに「R」か 同社CEOも示唆 画像88枚

後編
ー vsポルシェ911:苦戦は必至。ところが……
ー 想像以上に寛容な挙動
ー 不満はパワーや挙動でなくブレーキに
ー vsジャガーXKR:GTの真骨頂に迫る
ー 一長一短、甲乙つけがたし
ー いよいよ判定の時
マセラティの善戦にも覆せぬ結論

神はイタリアにあり

もし神様に出身国なんてものがあったとしたら、それはイタリアに違いない。

国そのものはもちろんのこと、その地の建築、ワイン、食事、クルマ、衣服、女性、気候などを思い浮かべれば、わたしの言わんとするところがわかっていただけるだろう。

なかでも、もっとも美しいのが言葉である。例えば1950年のF1世界選手権で初代チャンピオンの栄冠を獲得したのはイタリア人ドライバーで、その名をドットーレ・ジュゼッペ・ファリーナという。実に優美な響きだが、英語に直訳すると「ドクター・ジョー・フラワー」に成り下がってしまう。しかもフラワーは花ではなく、小麦粉の方。なんとも味気ないではないか。

そんなイタリアの自動車メーカーのなかで、その美しい母国語の響きを最大限に、どこよりもブランドの強みとして活かしているのがマセラティである。考えてみてほしい。もしジャガーがニューモデルの名前をXFではなく「フォードア」にしていたとしたら、とてもじゃないが高級車のイメージは浮かんでこないはずだ。

だが、マセラティがイタリア語で付けた「4ドア」という名前(つまりクアトロポルテ)には、響きの優美さに誰もが皆うっとりしてしまう。

はたまた英語で「グランドツーリング」というと野暮ったく感じられるから、われわれはそれをGTと略している。ところがマセラティが新しいクーペに「グランツーリスモ」という名前を与えると、それはすぐに優雅なクルマを思い起こさせるもっとも印象的な言葉のひとつになるのである。

その名に恥じぬGTなのか

その名前以上に美しいのが、グランツーリスモのボディラインだ。その造形はあまりにも魅力的すぎて、安全な交通の流れに支障をきたしかねない。

グランツーリスモはクアトロポルテの短縮版プラットフォームをベースに作られている。そのためクーペとしてはかなりボディが大きいが、流れるような曲線で構成される見事なデザインの妙により、とてもそうは見えない。

しかしながら、このクルマに関しては、まだ確かめなければならない問題が残っている。姿形とサウンドと名前が恐ろしく魅惑的なのは認めよう。

だが、歴史を振り返ると、マセラティによるGTクーペの成功例はフェラーリによるオフロードモデル並みにありえない存在なのだ。

スタイリングとスピードの点で満足のいくモデルは枚挙にいとまがないが、スペシャルな演出と優れた能力、実用性、そして速さを見事に融合させ、GTの傑作車と呼ばれるにふさわしいオールラウンドなスキルを備えたモデルはついぞ現れたことがない。

われわれが今回、このような残酷なテストを企てたのはそのためである。

ここまでせずに、ライバルモデルを引き連れて、ハードな走り込みと長距離巡航を行程に組み込んだテストに出かけるだけで済ます手もあった。だが、われわれはグランツーリスモについて、そうしたいつもの手法でわかること以上の真実が知りたかった。

今回のテストには、全部で3つのラウンドが用意されている。それぞれのラウンドごとにその分野でもっとも手強いであろうライバルを招き、グランツーリスモと戦わせる手はずだ。もし3つのラウンドすべてでそれぞれのスペシャリストにグランツーリスモが敗れたとしても、それはそれでかまわない。どの分野でも十分に高い能力を備え、総合的な評価ではライバルを退けてトップに立てるクルマだと証明できればいいのだ。

われわれはまず手始めに、高速道路M4号線を巡航するテストで、1530万円のマセラティを1550万円のメルセデスCL500と比べることにした。

なぜM6は参加していないのか

本題に入る前に、お断りしておきたいことがある。

われわれは今回のグループにBMW M6を入れるかどうかで真剣に悩んだ。未練がましく、2日間にわたった今回のテストの全行程に同行させるほど悩んだ。けれども最終的にわれわれはM6を入れなくて正解だったと思った。



スペックのうえでは、M6はほかの4台すべてに勝る資質を備えているように見えた。パワー、気筒数、ギア段数のいずれもがライバルを凌ぎ、加速性能でも明らかに優位だった。

ところが現実には、テストに参加した4台に比べると洗練性に欠け、つまらないモデルのように感じられた。

スピードは速いが、M6はドライビングが魅力的なクルマではなく、乗り心地にも不満があり、ステアリングがあまりにもフィール不足だったのだ。

ルックスの魅力にしても十分ではないし、ほかのクルマとともにトリッキーな山道を走ったときは、いちばん扱いにくく感じられた。5.0ℓV10と7段SMTは、1370万円の4ドア・サルーン版、つまりM5では素晴らしい出来に思えたが、1610万円のクーペにも同じ評価を与えることはできなかった。

また、M6は過去のテストで、すでに911カレラSとジャガーXKRの両方に敗北を喫している。もしわれわれがM6をグランツーリスモと戦わせていたら、M6がそこでも敗北していたのは間違いない。

第1ラウンド 高速道路

vsメルセデス・ベンツCL:洗練性は大きく劣らず

グランツーリスモには、過去のモデルに欠けていたものを完璧に追求しようとするあまり、いくつかの基本的な部分に目が行き届かなかったところがあるようだ。その結果、一般的にはむずかしいはずの部分が完璧に仕上がっている反面、安価な買い物グルマでもきちんとしているところのデキが悪かったりしている。

まず素晴らしいのは、GTを名乗るクルマにとってもっとも重要な2本の柱、すなわち乗り心地と洗練度である。われわれの知る限り、このグランツーリスモはマセラティとしては過去ベストの仕上がりになっている。そう、クアトロポルテよりも優れているのだ。

グランツーリスモはクーペの後継車に位置づけられるが、マセラティはそのクーペよりも足まわりをソフトに仕立ててみせた。普通に考えれば快適性を高めるのが目的のように思われるが、実際はアルファ8Cで初めて使われた450psの4.7ℓV8を積む、さらにスポーティなバージョンを投入する余地を残しておくためである。

その足まわりの味付けが実に見事で、しなやかでありながら、それでいて頼りなくフワついた感じが少しもない。なめらかに滑るような感触では、グランツーリスモよりも重くてホイールベースが長く、エアサスペンションを備えるCLにはさすがにおよばないものの、極端に神経質なヒップの持ち主でもない限り、乗り心地を理由にグランツーリスモを嫌う人はいないはずだ。

同様に、メルセデスCLのように不気味なほど静かというわけではないが、グランツーリスモの4.2ℓV8のサウンドは耳に心地よく響きながら、それでいて巡航速度では決してうるさく感じない。ロードノイズも風切り音もきちんと抑え込まれている。

GTとして十分な広さ

他誌で読んだ記事とは食い違うかもしれないが、グランツーリスモは完全な4シーターではない。けれどもそのリアシートは、911やジャガーXKのように飾り同然というわけでもない。小学生くらいまでの子どもふたりなら、なんの不満もなく心地よく過ごせる程度の快適性を持ち合わせている。頭上と足元はCLのほうが少しだけ広いが、体格差からすればその違いは微々たるものだ。



CLの優位に気づくのは、トランクを開けたときである。グランツーリスモも、そのトランクは911やXKに比べれば割と広いが、CLのトランクは、ベースとなったSクラス・サルーンからそう大幅に削られているわけではないからだ。

以上が素晴らしい部分だ。ツーリング性能にとってもっとも重要な、乗り心地、洗練度、居住性などの評価において、グランツーリスモはこのクラスの王者と誰もが認めるメルセデスCLを相手に、予想以上の善戦を果たしたのである。これならCLのシリアスな競争相手と見なしていい。

続いて不満な部分について。グランツーリスモには、そのほかの素晴らしい仕事をぶちこわしにするほどの、些細に思えても見過ごすことのできないふたつの重大な手抜かりがある。



美点を曇らせるほどの欠点あり

まずひとつは、長身、といっても巨人というわけでなく、身長180cm以上ほどのドライバーだと、ドライビングポジションをうまく合わせられない点だ。

これにはシートポジションが高すぎることと、シートの後方へのスライド量が不足していることが影響している。おかげでバックレストを極端に寝かせないと、ステアリングホイールと身体との距離を適正に保てないのだ。これは初歩的かつ基本的な部分での過ちであり、もちろんメルセデスCLではそんな不満など出てこない。

もうひとつの失策は、シートそのものである。最近のGTでこれほどデキの悪いシートは記憶にない。問題はそのシートバックにある。硬すぎるのとフラットすぎる形状とのせいで、快適性とサポート性がともに不足しているのだ。

それ以外にも不満がないわけではないが、距離を走るうちにさほど気にならなくなる類のものだ。具体的には、ナビの使いにくさと人間工学的な面での不満がひとつかふたつである。

素晴らしく整然としたCLのコクピットほど居心地のいいドライビング環境ではないが、十分に許容できるレベルにあるし、イタリアンカーの個性として享受してもいい。だが、シートとそのポジションの問題に関しては、厳しいようだが目をつぶることはできない。

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