2011年春、欧州でメルセデス・ベンツCクラス セダン/ステーションワゴン(W204)がフェイスリフトを受けたが、そのタイミングでノッチバックの本格的なクーペ「Cクラスクーペ」が欧州市場でデビューした。ここではスペインのセビリアで開催された試乗会から、C250 クーぺとC63AMG クーぺの試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年7月号より)
購入層を一気に35歳付近にまで下げようという狙い
日本とドイツの自動車市場で、もっとも大きく違うのは新車の購入年齢層だと思う。まずドイツで新しい車を買う人、買える人の平均年齢は経済的な条件を考えると45歳以上だ。そしてこれがメルセデス・ベンツなどでは、一気に10歳は上がってしまう。いわゆるオヤジといわれる範疇である。さらに2ドアクーペでは60歳近くなるはずだ。ここまでくるとオヤジを通り越して、「オジイさん」と言われそうだ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
それでも子供たちが手を離れ、定年間近、あるいは退職して長い間連れ添った奥さんと一緒に気兼ねなくクーペでツーリングというのは、確かに余裕が感じられ、カッコいい。
しかしメルセデス・ベンツも、そこに甘んじているわけにはいかない。オーナーの若返り策は必要で、若い人たちにもアピールするモデルは必須である。そこで、これまでのEクラスクーペに加えて、Cクラスをベースにした2ドアノッチバッククーペをプログラムに加えた。できれば購入層を一気に35歳付近にまで下げようとしている。
チーフデザイナー、ゴーデン・ワーゲナーが指揮したデザインは基本的にはCクラスの延長だが、ルーフをリアアクスルの後方までなだらかに流し落とし、高さを41mm低めてスポーティなクーペプロポーションを作り上げている。とくに凝った演出はないが、古典的な形でおそらく20年経っても飽きがくることはないだろう。
インテリアもスポーティな雰囲気を作り上げるために、セダンとは異なるデザインが与えられている。とくに目立つのがスポーティなシートで、ヘッドレストが一体化されている。さらにリアにもセパレートシートが用意されている。
またドライバーとのもっとも重要なインターフェースとなるステアリングホイールは、CLSで紹介されたマッシブなアルミスポークを持ったスリースポークタイプが採用されている。インストルメントパネルは中央に巨大なスピードメーター、そしてその右にタコメーター、また左にはコンビネーションメーターを従えた古典的なメルセデス流レイアウトになっている。
感心したのはクーペというカタチをとっていながらキャビンは広く、フロントシートには余裕があり、さらにリアシートは大人ふたりが無理なく乗ることができるほどの余裕があること。またトランク容量は450Lで、ほぼセダン並みの荷物を搭載できる。
セダンとは異なるスポーティな挙動を見せたC250クーぺ
さてスペインのセビリアで開催された試乗会で、筆者が最初に選択したのはC250ブルーエフィシェンシーと呼ばれるモデルだった。搭載エンジンは第3世代のピエゾ・ガソリン直噴システムを装備した4気筒ターボで、排気量は1796cc、最高出力は204ps、最大トルクは310Nmを発揮する。組み合わされるトランスミッションは7Gトロニックプラス、従来から存在していた7速オートマチックにアイドリングストップ機能を搭載したニュータイプである。
実を言えば当初、このCクラスクーペに対してはあまり期待していなかった。というよりも単なる「2ドアのCクラスではないか」と、ちょっと高を括っていたのだ。
ところが走り出して、セダンとは異なるスポーティな挙動に、少々驚いてしまった。サスペンションは前後ともにマルチリンク、そこにアジリティコントロールと名付けられたシステムが存在する。それはサブチャンバーを持ったダンパーが大きな役割を果たしている。このダンパー内に設けられたバルブが開閉することにより、路面からの入力スピードとストロークに応じてダンピングフォースがプログレッシブに変化するのである。
おかげで4本のタイヤは決して路面を離れることなく、非常に確かなロードホールディングを約束してくれる。またロックtoロック2回転半のメカニカル可変システムを持ったステアリングフィールは正確で、しかも可変システムのおかげで、きついコーナーに飛び込んでもハンドルから手を離す必要はない。またスポーティだが直接の突き上げなどは見事にいなし、どんな路面でもメルセデス・ベンツらしい乗り心地は常に約束されていた。
さて、メルセデスに乗って感じるのは、やはり「安全」である。コンビネーションメーター内にはドライバーの疲労を感知するアテンションアシスト、前車との車間距離を監視・コントロールするディストロニック、そしてレーンデパーチャーウォーニングなどが、このエントリークーペにもしっかりと装備されており、効果的にドライバーへ安全運転を促す。
ところで燃費だが、オンボードコンピュータによれば307kmを平均75.1km/hで走り、燃料消費は100kmあたり13Lジャスト、つまり、およそ7.7km/Lということになる。メルセデスの公表によれば、100kmあたり7Lだから、かなり悪いことになってしまった。しかし今回のテストは高速道路では110km/hを保って走ったものの、後半の3分の2はアップダウンの多い山間の峠道で、かなり過酷な走行パターンだった。それゆえにこれ以上悪化することがないことはまず確かである。このクーペの日本への導入は、早ければ今年の秋になるだろう。
サーキットでC63AMGクーペのパフォーマンスを堪能した
今回のCクラスクーペ試乗会でのハイライトは、なんといってもハイパフォーマンスバージョンであるC63AMGにも試乗する機会が設けられたことだ。それも公道だけでなく、セビリア郊外にあるモンテブランコ・サーキットでのスポーツ走行も含まれている。
C63AMGクーペに搭載されるM156型エンジンは、AMGが2006年に初めて自社開発したV8で、排気量は6208cc、最高出力は457ps、最大トルクは600Nmを発生する。組み合わされるトランスミッションも、AMGがメルセデスの7Gトロニックをベースに独自に開発した湿式多板クラッチを持った7速シーケンシャルタイプで「AMGスピードシフトMCT7」と呼ばれているものだ。
こうした技術を象徴するかのように、C63AMGクーペのエクステリアは、スタンダードクーペとは一線を画している。ダイヤモンドホワイトと呼ばれる白いボディと黒いグラスルーフの組合せを持ったモデルは、とくにダイナミックでエクスクルーシブな印象を与えている。
近寄ってきた人を圧するのは、ボンネットのパワーバルジ、そして大きく広がったフェンダー。そこからはみ出しそうにいっぱいに収まった19インチのスポーツタイヤが路面を掴んでいるようだ。また、リアにまわると左右2本の突き出たマフラーカッターとディフューザー風のリアフィニッシャーが迫力を見せている。
一方インテリアでは、リムの下部分が水平にカットされバックスキンがグリップ付近に貼られたステアリングホイール、その正面の320km/hまでスケールの広がったスピードメーター、そし8000rpmまでのタコメーターが、このクルマがただならぬモデルであることを物語っている。
まず一般道を150kmほど走行したが、その牛のようにパワフルなV8エンジンは、どんな回転域からも強烈なトルクを発生し、1730kgのクーペボディを4.5秒で100km/hまで引っ張る。最高速は例によって250km/hだが、約37万円をAMGに払ってハイスピードトレーニングを受けると280km/hまでのご褒美が出る。
シャシは硬め、スポーティなセッティングなので低速でかなりショックを感じるが、一度スピードに乗れば、思いのほか快適な乗り心地なことには驚いた。
一般道を法定速度以内で、目いっぱい走ったときの燃費は100kmあたりで16.4L、AMGの公表データよりも35%ほど悪かった。しかし、これはかなりの過酷な走行での値なので、これ以上の悪化はないはずである。
さて、いよいよサーキット走行、4段階あるドライブロジックを「Sプラス」に設定し、全長4.5kmほどのテクニカルコースで、C63AMGはまさに水を得た魚のようにかっ飛んで行く。一般道でやや硬めに感じたAMGチューンだが、サーキットではドンピシャで、大きなロールを伴うことなくコーナーをクリアすることができた。またベンチレーテッド・ドリルド・ディスクブレーキのおかげで、コーナー直前での思い切った制動も可能だった。
また改めてステアフィールの素直さとインフォメーションの確かさに感動しながら、あっという間に5ラップが終わってしまった。
つまり、このC63AMGクーペは、一般道でのドライブはもちろん、週末でのクラブスポーツイベント程度ならば、そのまま参加できるほどのポテンシャルを併せ持ったスポーツギアであることが証明されたのである。(文:木村好宏)
メルセデス・ベンツ C250 クーぺ ブルーエフィシェンシー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4590×1770×1406mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1550kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1796cc
●最高出力:150kW(204ps)/5500rpm
●最大トルク:310Nm/2300-4300rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●最高速:240km/h
●0→100km/h加速:7.2秒
※欧州仕様 EU準拠
メルセデス・ベンツ C63AMG クーぺ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4707×未公表×1391mm
●ホイールベース:2765mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:336kW(457ps)/6800rpm
●最大トルク:600Nm/5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:4.5秒
※欧州仕様 EU準拠
[ アルバム : メルセデス・ベンツCクラスクーペ(W204) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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