モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、2004~2006年の全日本GT選手権/スーパーGTのGT300クラスを戦った『マツダRX-7』です。
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『マツダRX-7(FD3S型/2000~2003年)』苦しみながらも高みを目指したロータリーピュアスポーツ【忘れがたき銘車たち】
FD3S型のマツダRX-7については、以前、この連載で2000~2003年までの全日本GT選手権における奮闘をお届けした。そのRX-7をロータリーひと筋で参戦初年度より走らせ続けるRE雨宮の車両は2003年時点で、ライバル車の急速な進化によりポディウムフィニッシュもままならぬほどの苦境に陥ってしまっていた。
そこで、RE雨宮は2004年に向けてRX-7にメスを入れ、大幅なポテンシャルアップを図った。ボディをノーマルのモノコック部分は残しつつ、その前後をパイプフレーム化へ改良する。これにより、規定で許されるギリギリまで車高を大幅に下げることに成功した。加えて、量産車のクロスメンバーが取り外されたことで、エンジン搭載位置を70mmダウンさせるなど、徹底的に低重心化が図られた。
これらはトレンドを取り入れた改造でもあったが、サスペンションのプッシュロッド化、トランスアクスル化は当時常識化していたものの、予算の都合上、見送られた。
エアロも素材をドライカーボン化にするとともに大幅にリニューアルが施された。特にフロントフェンダーは大径のタイヤを履かせたことも相まって、ボンネットラインからフェンダーが大きく盛り上がる迫力のある形状となっていた。
こうして大きく生まれ変わったRE雨宮のRX-7は、スポーツランドSUGOを舞台にした2004年第2戦でデビューを果たす。すると予選でいきなりポールポジションを獲得。決勝では4位に終わったが、デビューレースとしては上々の成績を残した。
第3戦はRX-7の得意とするマレーシアのセパンサーキットラウンド。ここでも予選で2番手という好位置につけると、決勝では2位以下を大きく引き離してトップチェッカー。デビュー2戦目にして、初勝利を飾った。
その後、RX-7はオートポリスで行われた第6戦をポール・トゥ・ウインで制して、シーズン2勝目をマーク。新車導入の効果は絶大だった。
シリーズ名が全日本GT選手権からスーパーGTに変わった2005年は、開幕戦の岡山国際サーキットラウンドこそ2位表彰台を獲得したものの、それ以外のレースでは2回の4位が最上位と苦戦を強いられ、シリーズランキング9位で終わった。そして2006年、いよいよその時が訪れる。
2006年、空力のモディファイを受けたRX-7は、鈴鹿サーキットでの開幕戦で2位に入る。しかし、第2戦の岡山で練習走行中に大クラッシュを喫し、出走することができなかった。その悪い流れを断ち切るように、得意の第4戦セパンでシーズン初勝利を記録する。そして、そこから9位、4位、4位、2位と安定してポイントを獲得し、最終戦を前にランキングトップと5点差の2位につけていた。
迎えた富士スピードウェイを舞台にした最終戦。予選では11番手に沈んでしまう。決勝でもスタートドライバーだった山野哲也が序盤にスピンを喫して、大きくポジションを落とす。これで王座への希望も潰れたか……に思えたが、その後、再び山野が11番手まで順位を回復すると、ドライバーチェンジをした井入宏之がバトンを受け継いだ後は、最終ラップまでに7番手まで追い上げていた。
するとこの最終ラップでトップを走行していた車両がガス欠によってストップ。これで6位に上がると今度はランキングトップだったプリヴェチューリッヒ・紫電が、最終コーナーでひとつ順位を落としてポイント圏外へダウン。これによってRE雨宮のRX-7は紫電と同ポイント、優勝回数も同数ながら2位入賞の回数で上回り、見事初のシリーズチャンピオンを獲得する。
1995年の初参戦から12年目、初志貫徹で戦い続けたRE雨宮に訪れた劇的な歓喜の瞬間だった。そしてRE雨宮は2004年に導入し、2006年にタイトルを獲得したニューシャシーを使い続け、2010年までRX-7ひと筋で戦いを続けていくのだった。
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みんなのコメント
仕方がないとはいえ、市販車と「GTカー」の繋がりが消えた瞬間でもありました。