クルマのアンテナ、進化している
text:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)ほとんどの人は、カーオーディオでラジオ番組や音楽を聞きながらドライブしているのではないだろうか。
クルマにラジオが装着されるようになったのは、1930年代のアメリカ車からだった。国産車で最初にラジオを装着したのは、1955年に発売された初代トヨペット・クラウン。
車内でラジオを受信する場合、AMでもFMでもアンテナが必要になる(FMが普及するのは、1970年代の話になるけれど)。
この頃のクルマ用アンテナは、いわゆる「ロッドアンテナ」。ロッド(rod)とは英語で棒や竿という意味で、その名のとおり金属製の棒を手動で伸ばしていくアンテナだ。
車種によるが、ロッドアンテナは前後のフェンダーの上か、ルーフ前端に装着されていた。
ルーフ前端のアンテナはフロントウインドウを開ければ運転中でも伸縮できるのだが、前後フェンダーのアンテナはクルマに乗り込む前に引き出さなければならない。
また、うっかり伸ばしっぱなしで屋内駐車場など高さ制限のある場所に入ってしまうと、アンテナを引っかけて曲げてしまったり折れてしまったり……なんてトラブルも少なくなかった。
そこで1970年代ごろから登場したのが、オートアンテナだった。
ご存知? ロッドアンテナ ただ欠点も
オートアンテナは、ラジオの電源と連動して、アンテナが自動で伸縮してくれる。
オートアンテナの登場当初は「全部伸びる」か「全部縮む」だったのだが、マニュアルで途中の高さで止められるものも登場する。これでラジオを聴いたまま高さ制限のある場所にも入っていけるようになった。
だが、ロッドアンテナを伸ばしたままで高速走行を続けていると、アンテナが微妙にしなっていしまう。そのため、オートアンテナが伸びにくくなったり、逆に縮まらない…なんてトラブルもあったりした。
ところが、こんなロッドアンテナ全盛の時代(いや、それ以前か)の1958年に発売された「てんとう虫」ことスバル360は、カーラジオをオプション設定していた。
ではアンテナは……というと、なんとFRP製のルーフの内部に渦巻き式のアンテナが内蔵されていたのだ。
いまや主流はコンパクトポールアンテナ
20世紀のあいだは、クルマのアンテナはロッドタイプがが主流だった。
だが、見た目や風切り音などのウイークポイントを解消しようと、1990年代あたりから登場したのがフロントウインドウの上側やリアウインドウに貼り付けるフィルムタイプのアンテナだ。
現在でも採用しているモデルはあるが、受信感度が今ひとつとも言われている。そこでブースターが必要となるため、後付けで装着する場合のコストはブースターも含めてかなり高価になった。
21世紀に入って、ヨーロッパ車から登場したのが「コンパクトポールアンテナ」だ。現在では国産車でも軽自動車やコンパクトカーでは大半のモデルがこのアンテナを装着している。
アンテナの長さは20-30cmくらいで、伸び縮みはしない。コイル状のアンテナを樹脂製のカバーで覆っている。
アンテナは長い方が感度は良くなるのだが、素材や製法など技術の進化で感度はロッド式と変わらない性能を発揮している。
ただし、そのままだと洗車機やタワーパーキングで引っかかるおそれがあるため、前側に倒せるものや、アンテナ本体だけネジ式で外せるものが多い。
ドルフィン/シャークフィンに 今後は?
現在、最も進化したアンテナが2001年に発表されたBMWの4代目7シリーズに装着されたヒレ上のアンテナだ。
その形状から「ドルフィンアンテナ」とか「シャークフィンアンテナ」と呼ばれている。
最新のドルフィンアンテナでは、ラジオだけでなく、リモコンキーの電波、カーナビゲーションのGPS、テレマティクスなど、さまざまなワイヤレス通信を受信する「インテリジェント・アンテナ」となっている。
では、この先クルマのアンテナはどう進化していくのだろうか。
デザイナーや技術者からすれば、デザインに影響し、空力や騒音の面でも問題になるアンテナはない方がいい。
そう考えれば、アンテナは低く目立たなくなり、将来的には外からは見えないウインドウアンテナの進化形になっていくはず。
例えばコンチネンタルなどのサプライヤーでは、さまざまなアンテナをモジュール化したものを開発中だ。こうした新世代のアンテナはボディ内に組み込まれ、アンテナとしては突起しなくなる。
つまり、クルマのボディ全体がアンテナのようになっていくのではないかと思われる。
番外編:バブル象徴? ブーメランアンテナ
さて、話を1990年前後のバブル景気のころに戻そう。
バブルを象徴するアイテムのひとつが「自動車電話」だった。
そしてクルマに電話を装着した証しとして、トランクリッドには自動車電話用アンテナが目立っていた。
少し太めの黒い樹脂製のアンテナで、先端にはオレンジ色のマーカーが付けられていた。
当時、このアンテナ付きのクルマ=自動車電話装着車に憧れるものの、予算的に無理だからアンテナだけを取り付けて見栄を張る、なんて人も多く見かけた。
また、自動車電話用アンテナやカーTV用アンテナとして、トランクリッドの中央にブーメラン型のアンテナを装着するのも流行した。
アメリカのストレッチリムジンあたりが装着したのが始まりのようだが、黒い自動車電話用アンテナ同様、これもバブルを象徴するアイテムとして、メルセデス・ベンツのSクラスやトヨタ・セルシオといったセダンのトランクリッド中央にそびえていた。
クルマでも電車でも、どこでも手軽にスマホが使えるようになった現代。もはや、黒いアンテナもブーメランアンテナも、まず見かけることはなくなってしまった。
それでも、ごくたまに中古車販売店に並んだクルマや、街を走っている古いリムジンにブーメランアンテナが付いている光景を見ることがある。そんなときにバブルの頃を思い出すのは、もはや年配層だけか。
ブーメランアンテナは、まさにバブルの象徴のひとつだったのだ。
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