この記事をまとめると
■スバル・クロストレックとフォレスターの2台を雪道試乗した
普通のAWDとはちょっと違う! SUBARUのシンメトリカルAWDは何がどうスゴイのか?
■200mmという余裕ある最低地上高で深い新雪をものともしないクロストレックが頼もしい
■クロストレックに比べてフォレスターはさらに高い車高や剛性感あるシャシーでより安心感が高い
スバルAWDで酸ヶ湯温泉の混浴風呂を目指す
スバルの強みといえば「シンメトリカルAWDシステム」の良さを活かした雪道での走破性が高いことだろう。メーカーもその点を認識しており、今回は最新モデルの「クロストレック」と世界中で人気の高い「フォレスター」の2モデルに雪道試乗する機会を与えてくれた。試乗ルートは真冬の青森市内から豪雪で知られる酸ヶ湯温泉までの往復路だ。
酸ヶ湯温泉周辺は「八甲田山雪中行軍遭難事件」でも知られる深雪の難所。いまは道路も整備されAWDシステムにスタッドレスタイヤを装着していれば、さほど難易度は高くないはずだ。
そもそもスバルがAWDシステムを乗用車に搭載するきっかけとなったのは、東北電力からの開発依頼がきっかけだったという。東北電力は真冬も八甲田山のような雪深い山間部の送電線の管理を行なわなければならない。東北電力の初代会長を務めた「白洲次郎」は、英国で知ったランドローバー車の悪路性能を知り、国内に導入して任に当たらせていた。しかし、当時は容易く手に入らない車両であり、ジープも多く使われていたそうだが、その乗り心地の悪さに従業員が耐えられず、国産で乗用車ベースの4輪駆動車が作れないか検討したという。
その際に、スバル車の縦置き水平対向4気筒エンジンFF車なら、後輪にプロペラシャフトを伸ばせば簡単に4輪駆動となるのではと宮城スバルに相談したという。そこで宮城スバルのメカニックがスバル1000バンの改造に着手。
リヤアクスルにブルーバードP510のものを流用し、室内を貫通させて4輪駆動化した。
それを当時の富士重(現スバル)のテストドライバーであった小関典幸氏がテスト走行をすると、その雪上性能の高さに驚愕し、富士重工として正式に開発・生産をなうことが決定されたという。これは、1970~72年頃の逸話としていまも語り継がれている。
筆者はその白洲次郎の遠い親戚となり、親族からトヨタ・ソアラの開発やベントレーの話を聞くことはあったが、東北電力とスバル車についてはまだ聞いたことがなかったので、今度、親族と集まることがあればお聞きしてみたいと思う。
話はそれたが、そんな伝説的な過程から生まれたスバルAWD車。まずは最新のクロストレックAWDから試乗してみる。
装着しているタイヤはヨコハマ・アイスガードG075で225/60R17の標準サイズである。
市街地ではアスファルトが露出していてスタッドレスタイヤ特有のノイズが発生するが、室内へのノイズ進入はかなり抑えられていてNVH性能が優れていることがわかる。
いとも簡単に深い雪を踏破するスバルAWDのすごさ
山岳地帯に入っていくと、さっそく圧雪路面となって難易度が高まっていく。しかし、運転フィールは乾燥舗装路とほとんど変わりない。圧雪路となってノイズは発生しなくなり、逆に雪面がさまざまなノイズを吸収し静けささえ感じられる。
標高が高まると圧雪が氷結し、表面は固く、また轍もできている。しかし、そんな路面でも直進性は高く保たれたままで、静かで突き上げも少なく快適性は高いままだ。ボディの骨格が頑丈で、車体パネルの接合剛性が高いのでボディ振動が抑えられ、内装材などが軋む音も発生しない。
もうひとつはクロストレックなど最新モデルから採用されるようになったデュアルピニオンステアリングの効果が大きい。ステアリングコラムの保持剛性が高まり、ステアリング操作の正確性に極めて優れている。
その一方で、路面からの外乱を打ち消して不快な振動や反力を伝えてこないというのもうれしい。デュアルピニオンステアリングシステムは最近多くの車種に採用されているが、一度経験してしまうと以前のシングルピニオン仕様には戻れないと感じてしまうほど好感触なのだ。
クロストレックのもうひとつの美点は200mmもある最低地上高にある。当然ながら悪路走破性が高く、深い雪でも踏破できる。管理されているように見える圧雪路もクロスレックだから普通に走れるのだが、車高の低い車両であればところどころでフロアを擦って難儀していたかもしれない。
クロストレックはハイブリッドでモーター駆動を可能としていて、その低回転からも発せられる高トルク特性が登り勾配のきつい場面でも余裕のある動力性能を発揮している。
酸ヶ湯温泉周辺では積雪量が急増し轍も深くなるが、走りやすさは不変だった。到着してドアを開け、足を降ろしたときに改めて深い雪道を走ってきたのだなと実感した。
酸ヶ湯温泉に浸かり冷えた身体を温める。とはいってもシートヒーターも装着された車内はいたって暖かく、厚着のままでは汗をかくほどだった。
そして帰路は「フォレスター」に乗り換える。
同じくシンメトリーAWDを採用するフォレスターも雪道は得意だ。しかも世界中の悪路ユーザーから信頼を獲得しているのは最低地上高が220mmもあることが一因だ。
クロストレックから乗り換えると、一層雪深い場所へ踏み入るときの安心感が違う。車体の一輪が浮き上がってしまうような段差の大きなところでも不安がない。やはり車体剛性が高く、ガッチリしたボディの佇まいのよさが活きている。
万一スタックしても(ほとんど一般道ではありえないが)ドライブモードで「Snow/Dirt」や「Snow/Mud」を選択すれば、電子制御ブレーキやトラクションコントロールオフなどを起動させ、脱出をアシストする。これらは低速での作動が基本だが、砂漠から雪国まで幅広く対応できる。
フォレスターの室内はレザー張りで高級感に溢れ、装備も充実している。とくに後席シートヒーターや室内スペース、荷室の広さには定評がある。
今回は2モデルの試乗だったが、ほかのスバルAWDにも同様にスバルのDNAは脈々と受け継がれている。雪国なら「スバルAWDの一択だ」というユーザーが多いのも頷けるのだった。
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みんなのコメント
そうなんですよね、他社だと億劫になる雪道走行が、スバル車だと逆に楽しくなっちゃうんですよ!