■180km/hメーターは「昭和の遺産」だった?
クルマに装備されるスピードメーターは、速度が出すぎていないかを確認するという大切な役割を持ちます。
そんなスピードメーターですが、国産車(普通車)ではほとんどが180km/hの表示です。一体なぜなのでしょうか。
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日本では一部の高速道路で最高速度が120km/hの区間がある程度で、180km/hのメーター表示を活用する場面はサーキット走行をしない限りありません。
しかし、多くの輸入車では200km/h以上の値を示せるようになっていることがよくあります。
スポーツモデルともなれば300km/h以上まで刻まれているものも珍しくありませんが、国産車では未だにほとんどの車種が180km/hが上限となっていることに理由はあるのでしょうか。
日本自動車工業会の担当者はスピードメーターについて以下のように話します。
「昭和50年代から60年代にスピードリミッターに関する議論がなされているため、その頃かと思います。180km/hの規制は自工会による規制ではなく、あくまでも各社の判断による制限なのです。
議論を行った当時(昭和50年代から60年代)の規格に基づいたものにはなりますが、高速道路で6%勾配(最大勾配)を走行した場合を平坦走行性能に換算すると、180km/hになるためです」
当時はクルマの性能が日を追うごとに向上し、出せる速度も上昇していました。これに対して安全面から一定速度以上出せないようにするスピードリミッターの導入が検討され、実際に設定されたのが1970年代でした。
これと並行してメーターに関してもさまざまな議論がなされたといいます。
先出の担当者の話によれば、180km/hという速度は、最高速度100km/hだった当時の高速道路において、上限6%(現在は12%)と定められた勾配を走行する際に求められる性能が、平坦路での速度に換算すると180km/hと同等になることから、という理由で決定されたようです。
一方で、あくまで各社が自主規制として180km/hに設定していただけで、法律や協会によって表示値に厳しい規制があったというわけではありません。
そのため、輸入車の多くが当時でも200km/h以上の表示としていたことが多く、海外製の日本車(いわゆる逆輸入車)では正規販売されるクルマであっても240km/h表示のメーターパネルを装備したままのクルマもありました。
さらに当時は販売店オプションやチューニングショップなどで、200km/hを超える表示の輸出向けメーターパネルなどが「フルスケールメーター」として販売されていたこともありました。
この自主規制が今でも引き継がれており、現在新車で販売中の多くのクルマでも変わることなく180km/hのメーターとなっているようです。
これについて、一部のクルマ好きからは、180km/h以上出せる性能があるにも関わらず、表示では制限されてしまっていることについてむず痒い思いをする人も少なからずいます。
また、「40年以上前の自動車規格に基づいた数値を今も使わなくてもいいのでは」という意見もあるようです。
とはいえ一昔前と違い、2000年代中ごろから国産車でも徐々に200km/hオーバーを表示できるモデルが増えてきました。
2006年に登場したレクサス「LS」や、2008年登場の日産「GT-R」では260km/h以上のメーターパネルを装備。
現在ではレクサス「RC」などの高級クーペやマツダ「ロードスター」、スズキ「スイフトスポーツ」などのスポーツカーでは200km/hを超えたメーターを装備していることから、昔とは違いある程度許容されてきています。
さらに近年では、先進運転支援システムの標準装備化など、クルマ自体が多機能になったことに伴い、メーターもデジタルメーターの普及が進みました。
スピードメーターは液晶パネルと一体化し、アダプティブクルーズコントロールなどの車両情報とともに表示。雰囲気を高めるため、アナログ風の計器デザインをもつクルマも多いですが、多くはデジタル表示となりました。
かつて、200km/hを超えるメーターにハイパフォーマンスの期待を寄せて感動していたことは、もはや過去のものとなりつつあるようです。
※ ※ ※
なお、2019年にはスウェーデンのボルボが「2020年以降に販売する全車の最高速度を180km/hに制限にする」と発表。メーターも180km/hが上限となっています。
日本特有と思われた180km/hメーターですが、意外な広がりを見せています。
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