この記事をまとめると
■ボルボでは最小サイズとなるSUV「EX30」の販売が日本でスタート
日本での使い勝手抜群なコンパクトサイズ! ブランド史上最小の電気自動車「ボルボ EX30」の日本導入が決定
■街なかで乗るにはちょうどいいBセグメントとなる
■再生素材などを多用し、環境にも配慮しているのが特徴だ
日本で乗るにはベストサイズ!
もし、だ。もし仮にいまがバッテリーEV以外に選択することができない時代で、しかも1台しかもてないなんてことになったら、僕は何を選ぶのだろう? なんてことを考えてみた。もちろんいまはそんな時代じゃないし、そんな時代が来ることはおそらくないだろうと思ってはいるけれど。
クルマとしての楽しさから選ぶなら断然アバルト500eだな、と感じてる。ヒョンデのコナのコスパのよさもだいぶ魅力的だ。でも、いろいろバランスを考えると、このボルボEX30がベストチョイスなんじゃないか? と思えてくる。
ボルボ最新のバッテリーEVにしてボルボ最小のバッテリーEVであるEX30は、同時にバッテリーEV専用として開発された“SEA(Sustinable Experience Architecture)”プラットフォームの上に構築されたボルボ初のモデルでもある。
本国にはいくつかグレードがあって、ツインモーターのAWDモデルやバッテリー容量の小さい普及モデルなどもラインアップされ、それらもいずれ日本に導入されることが予想できるのだが、まず最初に上陸したのは、シングルモーターの上位モデルとなる“EX30ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ”。69kWのリチウムイオンバッテリーを搭載し、272馬力のパワーと343Nmのトルクを発するモーターで後輪を駆動する。航続距離はWLTCモードで560km。急速充電は150kW、普通充電は9kWに対応していて、150kWの急速充電器を使えば10%から80%まで32分程度でチャージが可能だという。このクラスのバッテリーEVのスペックとしては十分以上といえるだろう。
このEX30のボディサイズは全長4235mm、全幅1835mm、全高1550mm。ざっくり、トヨタC-HRやマツダCX-3、フォルクスワーゲンT-ROCやアウディQ2といったサイズ感。Bセグメントに属するクロスオーバーSUVだ。EX30だけの美点というわけじゃないけれど、このくらいのサイズのSUVというのは、日本の路上で日々をともにするのには抜群に使いやすい。EX30を走らせてみて、あらためて“このサイズってホントにいいよな”と感じさせられた。ボルボがBセグメントSUVに参入してきたのは意外といえば意外に思えたものだが、街が小さかったり道が狭かったりする国は日本以外にもたくさんあるわけで、とても正しい選択だと思う。
だが、いくらサイズがちょうどいいとしても、中身が伴ってなければ素直に“このサイズってホントにいいよな”っていう気持ちにはならないものだ。EX30、走らせてみたら予想以上に好印象だったのである。
まず速い。クルマのキャラクターを考えると最初にここを取り沙汰するのもどうかとは思うのだけど、マジメな話、キャラからは想像できないくらいに速いのだ。何せ0-100km/hの加速タイムは5.3秒。後輪で路面を力強く蹴り出して猛然と加速していく様には、予期してなかっただけに軽く唖然とさせられた。同じBセグメントの内燃エンジンのクルマでもそのタイムは出せないし、10年前なら3.5リッター級のGTカー、30年前ならフェラーリV8モデルのタイムを上まわってる。
……そう意味のある比較でもないけれど。まぁとにかくそういう話を引っ張り出したくなるくらいの加速力を味わわせてくれるわけだ。強力なモーターを積んだバッテリーEVの本領発揮、である。
とはいえ、さすがにボルボもよくわかってる。その実力をひけらかすような性格に育て上げたりはしていない。交差点からゆるりとスタートしたいときに神経質な反応を示したりはしないし、街なかをゆったり走りたいときには滑らかな加減速と見事な扱いやすさで応えてくれる。
ON/OFFが切り換えられるワンペダルドライブのときも同じで、ONにして右足だけで発進から停止までをまかなっているときには回生が強めに入るセッティングになっているのだけど、アクセルペダルの操作に対する反応も穏やかにして滑らかだからギクシャクしにくく、とても走らせやすい。
そうしたドライバビリティが心地いいせいか、その気になれば速いのに、無闇に飛ばそうっていう欲望が生まれてきたりもしない。いい意味でヤル気にさせず穏やかな走りを楽しませてくれるあたり、じつにボルボらしいな、と思う。
ボルボならではの環境配慮もバッチリ
そしてハンドリングだ。バッテリーEVのセオリーどおり重い電池を床下に敷き詰めているために重心が低く、前後左右の重量バランスも良好、操舵輪と駆動輪が別々であることも活きていて、SUVらしからぬ安定感とシャープな曲がりっぷりを見事両立した走りを味わわせてくれるのだ。曲がることが楽しいか楽しくないかといわれたら、間違いなく前者。
今回の試乗は東京都内だったこともあってコーナーでの速さを論じるような走り方は控えたけれど、峠道に連れていってもルーズな動きに落胆させられたりすることはなく、スポーティな走り方を楽むことができるだろうな、という予感が強く残る。
そのハンドリングに巧みに貢献してるのが、ほどよく引き締められてるサスペンションだ。試乗車がオプションの20インチタイヤを履いていたこともあって、乗り心地も少々硬めといえる部類。けれど動きがスムースだから、路面の段差を踏み越えるときにも嫌な衝撃となって伝わってはこないし、シートも──僕の体型・体重に合ってたからなのか──形状・硬さともに良好に思えたから、ロングドライブでの疲れは望外に少ないかもしれない。いずれにせよ、乗り味は十分に快適といえる範囲にあると思う。
そうした各部の満足度の高さが、ちょうどいいバランスでコンパクトな車体に無理なく同居してるのだ。ここがちょっと……というところも見当たらない。だから走ったあとに残る印象が、「ものすごくよかった。ホントにいいクルマだなぁ……」なのだ。
ルックスに関しては良し悪しじゃなくて好き嫌いが左右するのでクドクド述べることはしないけど、XC40の天地を圧縮して低く構えさせたかのようなフォルムの塊感、よりクッキリとしたトールハンマー、グリルレスなのに一発でボルボとわかるフェイスまわりなど、僕は嫌いじゃない。
インテリアは、エクステリア以上に好き嫌いがわかれるんじゃないかと思う。フロントシートの目の前にあるダッシュボードまわりが凄まじくシンプルなのだ。スクエア形状のステアリングに埋め込まれたものを除くと物理スイッチがほぼ皆無で、ほとんどの操作をタブレット型のタッチスクリーンで行うことになる。速度計や残り航続距離の表示なども、スクリーンに統合されている。
ドアの内側にはオープナーハンドルぐらいしかなく、パワーウインドウのスイッチは中央のアームレストの前側にフロントシートからの操作用として前窓/後窓切り替え式スイッチが、後ろ側にリヤシートからの操作用として後窓のスイッチが、それぞれマウントされている。電動ミラーの操作は、ステアリングにつくスイッチ類に割り当てられている。
タッチスクリーンの操作ですらサッと乗り込んですぐに覚えられるわけでもないというのに、ウインドウやミラーの操作もこれまでの常識的なものとは操作方法と手順が違うため、慣れるまでは戸惑うことが多々だ。
が、最初は「めんどくさいなぁ……」と感じてたそれらの操作も、それがハーネス類を少なく短く、物理スイッチの部品素材をちょっとでも少なく……というサステナブルな考え方に基づいたものだと聞くと、「おっ?」と感じる。
インテリア各部にも再生ポリエステル、再生ペットボトル樹脂、廃棄コルク、廃棄漁網、廃棄窓枠といったリサイクル素材や植物由来のオリジナル素材などを多用していて、コスト意識より環境意識が高いことに気づくとまた「おっ?」と感じる。
EX30はアルミニウムの25%、スチールの17%、全プラスチックの17%がリサイクル素材でできてるのだとか。それでいて高級感抜群とまではいわないが、かなりの品質感をキープしている。いいことばかりして生きてきたわけじゃないけれど、そういう姿勢で作られてるということには心が動かされるところもある。
“EX30ウルトラ・シングルモーター・エクステンデッドレンジ”の価格は559万円。それでもコスパはいいなと感じるのだけど、加えて2024年度もCEV補助金の実施は決定している模様。上限額は85万円とされていて、2023年度とは補助額の算定方法が変更になるらしいが、おそらく国からの補助金だけで500万円を下まわる金額になることだろう。それに自治体によっては独自の補助金がおりるところもある。それを考えると、EX30、ものすごく魅力的な存在に思えてこないだろうか……?
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