ブレーキパッドはカスタム入門にピッタリのパーツ。エンジンオイルと同じく消耗品だが、正直エンジンオイルよりも銘柄を変えた差が感じやすい。明確に効きが変わる。ペダルのタッチも変わる。
スポーツ走行やワインディングをある程度のペースで走るならもちろん、普段乗りだけでもパッドの銘柄を変えることで扱いやすさが大きく変わるのだ。
ストリートからサーキットまで!ブレーキパッドの選び方完全ガイド~カスタムHOW TO~
ブレーキパッドはローターと摩擦することで熱を発生し、摩材は徐々に削れていく。ブレーキをかけるほどローターとパッドの温度が上がる。その温度によってパッドの素材にはいくつも種類があるのだ。
1:オーガニックorノンアス系
モノとしては同じで、メーカーごとに呼び名が違うだけ。主な成分は繊維と樹脂で金属成分が少ないパッドのことをいう。金属もいろいろなものが配合されるが、特に鉄が少ないか、入っていないもののことを指す。国産車の純正ブレーキパッドはほぼこの摩材。
鳴きにくく、ダストも少なく、効きもマイルドで街乗りにマッチする。適正温度は低めで高い温度になると成分中の樹脂が燃えてガス(煙)が発生。ローターとパッドの間にガスが入ることでパッドが浮いてしまい、ブレーキが効かなくなるフェード現象を起こしやすい。もともとは繊維としてアスベストが使われていたが、現在はもちろんアスベストは使われていないのでノンアスベスト系とも呼ばれる。
2:ロースチール
ある程度、金属成分や鉄分が含まれているパッド。主にスポーツパッドと呼ばれるものだが、その中でもどちらかというとストリートユース寄りのモデルが多い。オーガニック系をベースにやや金属が含まれていて、ダストは少なめ。効きもマイルド。それでいてある程度スポーツ走行にも対応すると、ターゲット層が広いのが特徴。価格もそれほど高くないことが多い。
本格的なサーキット走行では温度的に厳しくなることが多い。それでも元々ブレーキに厳しくないオートポリスとか鈴鹿サーキットのようなコースや、ブレーキ容量に余裕があるクルマだとサーキット走行でも問題ないことも多い。欧州車でもとくにドイツ車の多くはアウトバーンを代表とする高速道路でのフルブレーキングに備えているようで、ノンアス系ではなくロースチールなどが使われている。国産車でもトヨタ『GRヤリス』は純正ブレーキパッドがスポーツ走行対応でダストが多め。エンドレスだとTYPE R、プロジェクトμだとHC+、ディクセルだとSタイプなど。
3:セミメタリックorカーボンメタリック
街乗りからサーキット走行まで使えるモデルの、どちらかというとサーキット寄りの性能を持つのがこちら。
普段乗りから使用できるが、ダストは多め。クルマやキャリパーとの相性によっては、鳴きが発生することもある。カーボンなどが含まれていることが多く、ある程度温度を上げて使うとローターに皮膜を張って、高温まで安定した効きを実現してくれる。価格は高いが、定期的にサーキット走行をするならこれ一択。エンドレスならMX72、プロジェクトμならHCM1、ディクセルならZタイプあたりがこのカテゴリー。
4:焼結orシンタード
ほぼ金属成分で極めて高い温度まで効きが持続するのがこちら。サーキットでも岡山国際サーキットやモビリティリゾートもてぎなど、ブレーキに厳しいコースでの耐久レースなどに使われるパッド。温度が数百度まで上がらないとそもそもきちんと効かない。それ以下の温度だとローターもパッドも異常に摩耗するし、鳴きやジャダーなどの振動が起きることもある。サーキット専用パッドで、とくにレースでなければ必要ではない。
このような種類に大きく分かれるが、ポイントは背伸びをして選ばないこと。「サーキットはごくたまに走るだけだけど、せっかくならサーキット対応のセミメタリックにしよう」と選んでほぼ普段乗りとなると、パッドは減る、ダストは多い、鳴きが発生するとデメリットばかりを感じやすい。年に数回しかサーキットに行かないなら、ロースチール材を選んでサーキット走行時は数周したらクーリング走行をしたほうが、普段の走りのクオリティ・オブ・ライフが高まるだろう。
サスペンションはどうせなら高いモデルを選ぶと多くの場合は高性能なので満足が上がったりするが、ブレーキパッドにおいては、適正温度域で使わないと扱いにくさばかりが目立ってしまいやすい。ディクセルではSタイプがそのあたりを明記していて、1250kg以下のクルマでサーキット走行が年に1~2回の人にオススメというコンセプトでロースチール材で作られている。
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