初代は初めて(フルローンで)買った新車
今や中古車価格も高騰して気楽に手に入れることは出来なくなったが、筆者が自動車媒体の編集者になって初めて(フルローンで)買った新車が、『三菱ランサーエボリューションI』、そして2台目が翌年の『ランサーエボリューションII』である。
【画像】三菱ランサーエボリューション全10世代を振り返り! 全116枚
当時は「こんな派手で速いクルマで一般公道を走っていいのか!?」と不安になったほどインパクトは強烈。その後はありがたいことに仕事で全モデルに試乗できたが、『ランエボIX MR』の切れ味鋭い走りも印象的だった。ここではエボIからエボXまで、ランエボの進化の過程を振り返ってみることにした。
ランエボことランサーエボリューションは、世界的なラリーへ積極的に参戦していた三菱が、ラリーマシンのホモロゲーションモデルとして1992年に発売。以降、ラリー参戦終了後も進化を続け、本流モデルが10代目まで続いたほか、派生モデルも登場する人気銘柄となった。
今や欧州を中心に、400ps級モデルも存在する2.0Lターボ4WDカテゴリーだが、かつては日本車の牙城であり、その先鞭をつけたのがランエボであることは間違いない。量販実用車をベースに、メーカー自ら競技にも耐えるようチューニングした車両を『エボモデル』などと呼ぶようになったのも、ランエボに由来するところが大きいだろう。
ランエボの核心的な技術要素といえば、ひとつは電子制御を駆使した4WDシステム、もうひとつが4G63型1997cc直4エンジンだ。4G63は1979年、東京モーターショーに参考出品された『ランサーEXラリーターボ』に搭載されたG63Bとして登場。その後、スポーツモデルから実用車まで幅広く搭載されたが、頑丈なスチールブロックは1980~90年代の技術でも300ps級のチューニングを可能にした。
ランエボ用ユニットは250psでスタートし、ランエボIVで当時の自主規制値である280psに到達している。ただしランエボXでは、ダイムラー・クライスラーなどと共同開発したワールドエンジンのバリエーションである4B11型へ変更された。
三菱の技術の粋を集め、世界的に日本車の優秀さを示したランエボ。それではモデルごとに、その歴史を振り返ってみよう。
三菱ランサーエボリューションI(1992年)
1992年9月、初代ランエボが発売された。ランサーEX以来、6年ぶりにWRCへ投入されたランサーは、改造範囲の狭いグループAを戦うべく、1.8Lまでしか設定のないベース車に、5シーズンを戦ったギャランVR-4譲りの4G63ユニットと4WDシステムを移植。
そのためベース車とは、フロントバルクヘッドより前方がほぼ変更されている。街乗り向けのGSRと競技ベースのRSが設定され、スペックは250ps/31.5kg-m。当初は型式認定に必要な2500台の限定販売を予定していたが、人気の高さを受け販売台数は7628台に達した。
三菱ランサーエボリューションII(1994年)
1994年1月、改良モデルのエボIIが登場。10psアップしたほか、初代の弱点克服のために大幅に改修された。シャシーはメンバーの交換や鍛造アームの導入、ホイールベース延長やトレッド拡幅、タイヤサイズ変更を実施。駆動系はトランスミッションの1~2速のギア比を下げ、リアに機械式LSDを採用した。外観では、フロントエアダムエクステンションと、リアスポイラー基部のウィッカーと呼ばれる小型スポイラーが追加されている。
三菱ランサーエボリューションIII(1995年)
1995年1月に発売されたエボIIIは、エクステリアを大幅に変更。大開口のフロントバンパーやブレーキダクト付きエアダム、車名を型押ししたサイドスポイラー、ウイングタイプのリアスポイラーなどを装着し、冷却性能と空力性能の向上を図った。エンジンは圧縮比をアップし、ターボラグ緩和のための2次エア供給システムを採用。270psを発生する。1996年にはエボIIIで、トミ・マキネンが初のWRCドライバーズ王者に輝いた。
三菱ランサーエボリューションIV(1996年)
ベース車が全面刷新し、1996年8月登場のIVでランエボは第2世代に入った。エンジンは搭載方向を180度反転し、トランスミッションのインターミディエイトギアを廃して高効率化。最高出力280ps、最大トルク36.0 kg-mに達した。GSRには、アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)と呼ばれる電子制御デフを採用。後輪左右の駆動力配分を調整し、旋回性能を高める。ランエボのハイテク化の端緒となったモデルだ。
三菱ランサーエボリューションV(1998年)
3ナンバー化され、17インチホイールや大径ブレーキ、フロント倒立ダンパーが装備されたランエボVは、1998年1月デビュー。エンジンは、タービンの改良やブースト圧アップ、ECUの16ビット化を行い、トルクを38.0 kg-mに引き上げた。外観は、前後ライトがランサー後期型のものとなり、開口部を拡大したフロントバンパーや新形状のボンネット、角度調整式リアスポイラーを採用している。
三菱ランサーエボリューションVI(1999年)
1999年1月、ランエボVIが登場。新形状のフロントバンパーは、フォグライトの小型化やナンバープレートの助手席側へのオフセットで開口面積を拡大。エンジン出力に変化はないが、冷却性能の向上で耐久性を高めた。リアスポイラーは、2段ウイング形状とした。足まわりは、先代よりややソフトになったが、RSでは先代同様のハードタイプが選択できた。また、軽量なチタンアルミ合金タービンが、RSに採用されている。
三菱ランサーエボリューションVIトミ・マキネン・エディション(2000年)
2000年1月登場のランエボVIトミ・マキネン・エディションは、マキネンの4年連続WRC王座獲得を記念したモデルで、左右非対称フロントバンパーと大口径テールパイプが特徴。GSRは、ハイレスポンスタイプのチタンアルミ合金タービンやターマック仕様サスペンションを装備したほか、最大トルク発生回転数を引き下げた。また、RSと同じフロントストラットタワーバーやクイックレシオのステアリングギアを採用。GSRの外板色にパッションレッドを選ぶと、オプションのワークスマシンをイメージしたデカールが選択できた。
三菱ランサーエボリューションVII(2001年)
ベースがランサーセディアに移行し、第3世代となったランエボVIIは2001年2月登場。エンジンはトルクが39.0 kg-mにアップし、駆動系各部を強化。また、センターデフが高い操舵応答性とトラクションを両立する電子制御多板クラッチ式のACDとなり、AYCとの統合制御でハンドリング向上を図った。2002年2月には、ランエボ初のAT車であるGT-Aを追加。エンジンは272ps/35.0 kg-mを発生した。
三菱ランサーエボリューションVIII(2003年)
2003年1月に登場したランエボVIIIは、オリビエ・ブーレイが三菱車共通の特徴としてデザインした富士山型グリルを採用。MTは、従来の5速に加え6速も設定された。トルクが40.0 kg-mにアップし、AYCは、左右駆動力移動量を約2倍としたスーパーAYCへ進化。また、量産4ドアセダンでは世界初のフルカーボンリアスポイラーを装備した。2004年2月には、発展型のMRを投入。量産車初のアルミルーフなどで約10kg軽量化し、トルクを0.8 kg-m増強。ビルシュタインダンパーをGSRに標準装備、RSにオプション設定した。
三菱ランサーエボリューションIX(2005年)
2005年3月に登場したランエボIXは、バリエーションの多いモデルだ。中間機種のGTを加え3グレードとなったほか、9月に追加されたワゴンはGTとGT-Aの2本立て。さらに、2006年8月には、セダンGTを除く4機種のMR仕様が発売された。セダン全車とワゴンのMT車には、可変バルブタイミング機構のMIVEC搭載エンジンを採用。トルクはGSR系が40.8 kg-m、セダンのGTとRS系が41.5 kg-m。ワゴンはGT系が40.0 kg-m、GT-A系が272ps/35.0kg-mだ。
三菱ランサーエボリューションX(2007年)
ランサーエボリューションを名乗るものの、ベース車が日本ではギャランフォルティスと名付けられ、独立車種となったランエボX。エンジンはオールアルミユニットの4B11型となり、5速MTと6速DCTを設定した。日本仕様の出力は280~300ps/43.0 kg-m、英国では限定車ながら440ps/57.0kg-m仕様も登場。四輪制御は、ACDとAYCに加え、ASCやABSも統合制御するS-AWCを採用した。2007年4月に発売され、2015年8月のファイナルエディションまで継続販売された。
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みんなのコメント
ノーマルでもブーストアップのツアラーVとなら
対等に走れるだけの速さがあったんだけど
安いセダンをベースに無理矢理作ったって感じで
質感に関してはどうしようもなく低かった
一般道ですら怖いと感じる過敏なステアリング
一瞬のアクセルオフでもエンジンがしゃくって
挙動を乱してしまう事もあった
(ガンさんはこれを、エンジンマウントが柔らかい
と評したが実際のマウントはしっかりしてる)
運転が上手くなるタイプの車じゃなかったな
コツを掴んだら速く走れるとは思うけど