2030年までにVWの売る70%を純EVに
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】フォルクワーゲンID.4 欧州で次々発表 純EVのクロスオーバー 全112枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
見ることを避けてきた現実を知るように、フォルクスワーゲンID.4への初試乗は恐怖心半分のドキドキ体験だ。大げさに聞こえるかもしれないが、本当のこと。
ID.4は、フォルクスワーゲンが掲げる電気自動車のサブブランド、ID.に属する2番目のモデル。ID.3との共通性を感じるデザインが与えられた、背の高いクロスオーバーだ。
純EVのクロスオーバーは、既に複数種が英国でリリースされている。フォードやヒュンダイのほか、レクサスやプジョーからも。
では、なぜそんなにドキドキするのか。理由は、今回試乗したフォルクスワーゲンID.4が、今後10年ほどの英国を含む欧州市場で、どんな純EVより強い存在感を示すだろうと予想できるから。
ボディサイズは、ボルボXC60よりひと回り小さい。見た目は、人気のクロスオーバー感にあふれている。伝統と定評のある、フォルクスワーゲンからのクルマでもある。
さらにフォルクスワーゲンが純EVに掲げる野心は、ほかのどのメーカーよりも強い。2028年までに70種の電気自動車を計画し、2030年までにフォルクスワーゲンが売るクルマの70%を純EVにすると発表している。その可能性は巨大なものだ。
ID.4の内容が優れているなら、ID.ブランドの可能性も予見できる。ディーゼルエンジンの不正問題で汚れたイメージを、挽回することにもつながる。
203psの電気モーターと77kWhのバッテリー
ID.4の見た目は好みが分かれると思うが、カーブを描くボディの内側にあるハードウエアは、ID.3と同じMEBプラットフォーム。ホイールベースとトレッドを広げた程度の違だという。
そう遠くない未来に、アウディからもQ4 eトロンというMEBを採用したモデルが登場する。スコダなど、ほかのフォルクスワーゲン・グループも続くだろう。
現在英国で正規に購入できるID.4は、今回試乗したファースト・エディションのプロ・パフォーマンスのみ。203psの電気モーターをリアに載せ、77kWhのリチウムイオン・バッテリーをフロアに搭載する。
航続距離は498kmがうたわれ、0-100km/h加速は8.5秒でこなす。148psか170psの電気モーターと、52kWhのバッテリーを載せたID.4も、2021年末には英国へ導入される見込み。
フロント側にもう1基の電気モーターを載せ、300馬力以上を発揮する四輪駆動のID.4 GTXも計画中。クーペボディのID.5も控えている。
インテリアは、ボディのデザイン以上に従来のフォルクスワーゲンとは一線を画す。ダッシュボードのエリア分けは、基本的にはゴルフと通じるものがあるが、デザインはミニマリズム。ID.3と同様に。
ボタンやスイッチと呼べる部品は、ほとんど見当たらない。ティグアンから直接乗り換えると、衝撃を受けるほど。
シンプルで特別なリラックスできる空間
試乗車の場合、5.2インチのモニター式となるメーターを包む白いプラスティックカウルも新鮮。まるで医療機器のように無味乾燥にも感じられる。メーターの横には、ギアセレクターが伸びている。
シートは見た目が良いだけでなく、座り心地も快適。ドアパネルには有機的なカーブが与えられている。シンプルなダッシュボードの造形と相まって、特別感ある雰囲気だ。実際に座ってみると、とてもリラックスできる空間だと思う。
グラスエリアが広く、前方視界に優れていることも影響しているだろう。でも、気になった部分もあった。
パワーウインドウのスイッチもなくタッチセンサーで操作するのだが、ドライバーが窓を開閉するには前後どちらの窓か選択する必要がある。なぜ、個別に4つのセンサーを設けなかったのだろうか。
ダッシュボードには間接照明が埋め込まれ、クルマの状態を光で教えてくれる。ナビやバッテリーの充電、電話の着信などの状況が、複数の色と点滅で表現される。役に立たないとはいわないが、正直少し気が散ってしまう。
とはいえ、全体的な人間工学の部分は優秀。リアシートは、期待を上回るほど足もとの空間が広い。メルセデス・ベンツEクラス並みだと思う。初めてとなる純EVのSUVで、フォルクスワーゲンはパッケージングのノウハウを獲得したと感じさせる。
そう関心しながらクルマを発進させてみる。運転の第一印象は、活気があるとはいえないものの、充分といったところ。魅力的とまでは思わなかったが、非常に直感的に操れる。
感覚的に運転できる電気自動車
ただし多くのドライバーは、強力な減速のワンペダル・ドライブに近いものか、惰性走行できるものか、どちらかの回生ブレーキの特性を好む傾向がある。ID.4の回生ブレーキには2つのモードがあるが、どちらでもない。
多くの電気自動車と同様に、ID.4もどこ家電のように感じる部分がある。一方で知覚される質感は高く、運転感覚は素直。淡白な中にも長所がある。
操縦系のレスポンスはしっかり調整されており、動的性能は立ち上がりからシャープ。走行中の熟成感も高い。デザインも未来的で興味深い。気持ちを温めてくれるだけの個性も感じられる。
試乗車は20インチのアルミホイールを履いていたが、滑らかに路面に追従し、マナーが良いという点もID.4の評価をさらに高める。シンプルで感覚的に運転できる電気自動車だ。
現時点の純EVを見渡すと、英国価格5万ポンド(750万円)以下まで範囲を広げても、ID.4ほど付き合いやすいモデルは見当たらない。広々とした車内を持つ控えめなクロスオーバーを、多くの人が好きになるだろう。
筆者が関心を寄せているのが、スコダが開発を進める純EVのエンヤック。スペックはID.4に近く、英国での価格は安いはず。ドライビング体験も、ID.4をシンプルにしたものになるだろう。
ID.4は、将来のフォルクワーゲンの可能性を表明している。ディーゼルエンジンのイザコザで萎縮した気持ちを、とき解くように。ドキドキした気持ちは、期待へと変わった。
フォルクワーゲンID.4 ファースト・エディション・プロ・パフォーマンス(英国仕様)のスペック
英国価格:3万7800ポンド(567万円)
全長:4584mm
全幅:1852mm
全高:1612mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:8.5秒
航続距離:498km
CO2排出量:−
車両重量:2124kg
パワートレイン:AC同期モーター
バッテリー:82.0kWhリチウムイオン
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:−
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