日産初開発の軽自動車は上級車並の上質空間をもつ
日産の軽自動車「デイズ」がフルモデルチェンジを果たして進化した。ご存じのとおりデイズは三菱自動車との共同資本による合弁会社である「NMKV」が企画し開発と設計を行っている。旧モデルは三菱自動車が基本的に設計から開発を担って来たが、新型デイズでは日産自動車が主体となって商品企画、設計、開発のほぼ全分野を主導。生産を三菱自動車の水島工場が受け持つという形式に改められたのだ。
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これで日産が思うとおりの軽自動車として商品化することが可能となったわけだが、初めて手がける軽自動車の難しさにも直面したことだろう。しかし、新型デイズの完成度の高さについて開発陣は絶対的な自信を見せる。そこで早速試乗テストを行なったのでリポートしよう。
試乗コースは日産自動車本社のある横浜・みなとみらい発で周辺の湾岸地帯のルートを走る。一部高速道路も走行できた。
ますはターボ付きエンジンを搭載した「ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」からだ。デイズもまたスマートシンプルハイブリッド(いわゆるマイルドハイブリッドシステム)を備え「S-Hybrid」のエンブレムが装着されている。リチウムイオンバッテリーを運転席座席下に備えオルタネーターモーターからベルト駆動でパワーアシストと回生を行う仕組みだ。したがってEV走行が可能ではなく発進には常にエンジン始動が必要だ。
そのエンジンは型式名BR06DE型で直列3気筒のレイアウトを取る。ルノー・日産アライアンスを機能させルノー製のエンジンをモジュール的に採用していると聞く。
エンジン始動はセルモーターにより行ない、アイドルストップからの復帰はハイブリッドモーターで行うという仕組み。組み合わされるトランスミッションは「エクストロニックCVT」で、軽自動車としては初めてDステップ比を採用し、加速時にエンジン回転が常に先行して上昇するのを防止し4段階にステップさせて静粛性にも貢献させることを狙っている。
車体外観は日産のアイデンティティを活かしたフロントマスクが特徴的。ルーフと車体色を分けるツートーンカラーのカラーバリエーションも選択でき個性的な仕上がりを楽しめる。
運転席の印象は、もはや普通乗用車クラス並みの上質さで、9インチモニターやツートーンのダッシュボード、タッチ操作の空調スイッチまわりなどが見栄え良くレイアウトされている。日産開発陣のこだわりとして、ステアリングホイールに完全な円形を採用した。小径小型で操作性がよく、クイックなステアリングギヤ比との相性もよい。電動パワーステアリングは直進をしっかり補舵し、プロパイロット作動時のレーンキープも力強くアシストしている。
エンジンを始動しても室内は極めて静かで、外界の音もシャットアウトされ静寂さが感じられる。その感覚も従来の軽自動車の水準を超えているといえるだろう。アイドリング時の静かさはとくに特筆できる。
走行時のCVTとエンジン音はライバルより大きめに感じる
しかし、走り初めてエンジンの回転が高まると、ややノイジーな印象を受けてしまう。今回の試乗モデルはすべてFF(前輪駆動)モデルが用意され、車体後部のロードノイズなどはよく封じ込まれているが、とくにCVTからのノイズが気になった。説明ではCVTの油圧回路の特性で音が発生しやすいようだが、今後改善が望まれる。
走行性能自体はターボの過給ピックアップと電動アシストトルクがタイミングよく繋がり力強い。アクセルペダルの踏み込み量に対して大きめのトルクが引き出せるのは兄弟車となる三菱の新型「eKクロス」より優れている印象だが、FFと4WDでの違いがあるのかもしれない(eKクロスの試乗会はすべて4WDだった)。
高速道路の合流で全開加速を試みたが、そこではエンジン音も大きめになり静かさが打ち消された。開発陣は静粛性には自信があると言っていたが、筆者の印象としてはホンダN-BOXのほうが静かに思える。停止時や低速走行時が静かなので音量の差が大きくなることがマイナスに作用しているのかもしれない。
ハンドリングを試すほどのコーナーはコース内になかったが、ライントレース性の正確さとロール感の少ない走行姿勢は感心できる。
デイズには三菱eKクロスがオプション設定していたデジタルルームミラーは設定されず、自動防眩ミラー仕様となっているのも興味深いところ。またルーフ前方に緊急エマージェンシーコールボタンが備わる。これは先進事故自動通報システムSOSコールと呼ばれるもので、エアバッグが展開するなど事故を感知すると自働的に通報される機能と、煽り運転に遭遇した時などは手動で緊急通報できるものだ。これは三菱eKシリーズには搭載されず、デイズだけに採用される機能としている。
新型デイズは旧型との対比でホイールベースが65ミリも拡大されており、これで後席の足もと空間は圧倒的に広くなった。数値的には日産の高級車「フーガ」を凌ぐとも言われていて競合車にも負けない広さだ。 また後席フロアを平らにするため床板が上昇している。これで身長120cm前後の子供の足付き性が向上し、また荷物などの積み込みもしやすくなったとのこと。ただ後席にも乗車したが、身長170cmの筆者だと体育座り的姿勢になり、大腿が持ち上がって落ち着かない。「大人は座らないだろう」と割り切りがあったようだが、そこはどうかと思う。
ターボの次はノンターボの「ハイウェイスターX プロパイロットエディション」にも試乗した。ノンターボモデルでもスマートシンプルハイブリッドを搭載しており、市街地でのドライバビリティは文句ない。静粛性も高く快適だが、高速域でのノイズレベルはターボ以上になり、80km/h以上で走り続けるのは気が引けた。
今年はホンダが同クラスのN-WGN(エヌワゴン)をフルモデルチェンジすると言われており、ベストセラーで完成度の高いN-BOXの美点をどこまで引継いでいるのかも注目されている。その時期がきたら各社各モデルを一斉に集め比較評価することを楽しみにしている。
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