エンスーの心に刺さるデザインや性能、名車とは完成度の高さのみにあらず
——松本さん、ずっと探していた車がようやく見つかりました!
松本 それは良かったけど、車はなに?
——クリオ V6(日本名 ルーテシア ルノー スポールV6)です!
松本 いいじゃない! 採算度外視で作ったモデルといえばこの車だよね。
——松本さん、そういう車好きですよね。
松本 そうだね。例えば、アウディ TTの初期型に2シーターモデルがあって、日本に少しだけ輸入されたんだ。そういう変わったスポーツモデルはやっぱりいいよね。
——ルノーってそういうモデルが得意なイメージがありますね。
松本 ルノーはすごいメーカーだよ! モータースポーツやスポーツモデルの開発には、宣伝費や広告費までも投入しているといわれているからね。そんなメーカーはルノーくらいなんじゃないかなぁ。
——R.S.とか、尖った車もありますもんね。
松本 印象深いのは1980年代の縦置きユニット、FFレイアウトのルノー 5(サンク)かな。そのデザインを継承しながら、ラリーで勝てるスーパースポーツカーを作るように当時の副社長が指示してね。そして出来上がったのが、小さなモンスター、ルノー 5 ターボなんだよ。
——伝説のマシン、まさにモンスターって感じですよね。
松本 ターボは縦置きのミッドシップターボでね、世界ラリー選手権に勝つために作られたホモロゲモデルなんだ。言うまでもないけど、デザインはベルトーネのチーフだったマルチェロ・ガンディーニ。これは有名な話だよね
——この企画には欠かせない巨匠ですね。
松本 リアが幅広くてかっこいいんだよこれが。ターボ2となって、結局1985年までに3000台ほど生産されたんだ。
——ルノーの歴史に欠かせない名車ですよね。
松本 個人的にはその5ターボの考え方の流れを継承しているルノーのスーパーモデルが、このクリオ V6だと思うんだよ。
——こちらの車両がそうですね。小さいけどやっぱり存在感がすごいですね。そもそもどういう車なんですか
松本 まず、1999年から2003年までルノースポールが作ったクリオ V6 Trophyという車があったんだよ。これはシーケンシャルトランスミッションでね。たしか当時、日本にも何台か輸入されていると思うよ。その1台をサーキットで走らせるというので、ツインリンクもてぎに行ってその走りを見たけど、オーバーステアが強くてドライバーは大変そうだったね。
——何台くらい作られたんですか?
松本 クリオ V6 Trophyは159台が生産されたんだけど、市販化ということで、ジャガーの耐久レースで一気に名を上げたTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)がスウェーデンに生産ラインを作って量産化したんだ。TWRは日産 R360のル・マンカーも作ったところでね。レーシングカーや一品モノを作るノウハウはすごかったらしいんだけど量産は? って感じだったらしいんだよ。そこが作ったのがクリオ V6なんだ。
——なるほど、すごいところが作ってるんですね……。
松本 クリオ V6 の生産台数は1500台以上、実際には2000台前後ともいわれているんだ。設計だけど、今はアルピーヌの工場で有名なフランスのディエップだね。当時、このクリオ V6を写真で見て、まず1995年に作られたエスパスF1を思い出したんだよね。これは、元祖MPVというルノーエスパスの2代目の風貌に、ルノーのF1のエンジンをミッドシップにレイアウトして、4座のバケットシートを取り付けたモデルなんだ。このデザインを行ったのがクリオV6フェーズ1のデザインをしたアクセル・ブルーン氏なんだよ。
——なんか低くて長いミニバンみたいな車でしたよね?
松本 そうそう。彼はデザイナーだけど、エンジニアリングにも精通した人物なんだ。本人はアルピーヌA110に乗っていてね、コンパクトなミッドシップレイアウトが、スポーツカーの基本と思っていたんだ。当時、ルノー トゥインゴのホイールベースを見て、これはフェラーリ 308と5mmと違わないと、スポーツモデルのクリオ V6の設計を進めたんだ。これがクリオのルノースポール V6フェーズ1の原画となったんだよ。
——名車には偉人が関わっていることが多いですもんね。
松本 そうだね。彼は1980年代の伝説的なラリーカーであるルノー 5MAXIターボをオマージュして、1997年にスケッチを完成させたんだ。彼の構想と実際のクリオ V6が違ったのはドアだね。本当はランボルギーニ カウンタックやムルシエラゴのように跳ね上げ式にしたかったようだね。
——さすがにそれはできなかったのか……。ちょっと残念ですね。
松本 まあ、あくまで乗用車だからね。で、TWRが作ったクリオ V6はその後、フェーズ2へと進化したんだ。
——個人的には、フェーズ1がやっぱり好きだなぁ。
松本 そうだね。しかし、こんな採算の取れないスポーツモデルを量産したことに価値があると思んだ。デザイナーのコンセプトが忠実に再現されているクリオ V6 フェーズ1は性能ではフェーズ2に劣るけど、ジャジャ馬ぶりはエンスージアストにたまらない勲章だと思う。完成度が高いからといって名車になるとは限らないからね。
——もうこういう車は登場しないんでしょうね。
松本 そうだね……。コンセプトといい、エンスージアストの心にグッとくるデザインや性能を有する、クリオ V6 フェーズ1を所有してこそ、語ることができる話はいっぱいあるんだろうなぁ。ホント、こんなモデルはルノーしか作れないと思うよ。
ルノー ルーテシア ルノースポール V6
ルーテシアをベースに2シーター化、後席に3L V6エンジンを横置き搭載。ミッドシップレイアウトの後輪駆動としたハイパフォーマンスモデル。撮影車両は、2003年までTWRの工場で生産された前期型(フェーズ1)となる。 ルノー ルーテシア ルノースポール V6の中古車を探す▼検索条件ルノー ルーテシア ルノースポール V6× 全国※カーセンサーEDGE 2021年7月号(2021年6月24日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています文/松本英雄、写真/岡村昌宏
【取材協力】Coolman CarカーセンサーEDGE.netはこちら
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「車中泊トラブル」なぜ後を絶たない…!? 「ご遠慮ください」案内を無視する人も… 背景にはキャンプと「混同」も? 現状はどうなっている?
海自のミサイル艇と中国海軍の主力艦が「にらみ合い」!? 中国艦を “真横”から捉えた画像を防衛省が公開
大阪→熊本で「ロングラン夜行列車」運行へ JR西の“客車”が九州に乗り入れ 所要は15時間超え!?
トヨタ新「クラウン」初公開! 全長5m級の「ワゴンSUV」! パワフルな「RS」ベースの汚れにくい”「マットメタル」仕様…「エステート ザ・リミテッドマットメタル」が販売店でも話題に
どんだけ金食い虫なんだよ! 自衛隊に配備目前「F-35戦闘機のコスト」調べてみた 納税者なら知っておくべき?
スバル新型「フォレスター」最安グレードが「400万円ちょい」!? 豪華装備モリモリ&初の本格ハイブリッド搭載! 値上げしても“意外とオトク”な訳とは?
「車中泊トラブル」なぜ後を絶たない…!? 「ご遠慮ください」案内を無視する人も… 背景にはキャンプと「混同」も? 現状はどうなっている?
「WR-V」一部改良に賛否。好意的な声の一方「値上げでは」との批判も…なぜここまで評価が分かれるのか?
日産新社長は開発部門出身!! 日産が生まれ変わるために「すぐやるべきこと」とは?
ついに公正取引委員会がトヨタモビリティ東京に対し独禁法違反にあたる えげつない「抱き合わせ販売」をやめるよう警告!! ユーザーの怒りが通じた!!!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント