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ボンネットがぽっこりデザインのクルマ、なぜ増えた? 古いと薄く、新しいと分厚い理由とは

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ボンネットがぽっこりデザインのクルマ、なぜ増えた? 古いと薄く、新しいと分厚い理由とは

■ボンネットに厚みを持たせることで保護する対象は?

数年前から顔が大きい(ボンネットの位置が高い)、横から見ると分厚いデザインのクルマが増えています。駐車場に停まっているクルマたちを見比べると、ボンネット周りが薄いクルマは古そうなものばかりで、比較的新しいクルマはみんな顔が分厚い印象です。実はこのデザインの傾向は、国交省が定めた、とある法律(保安基準)が大きく関わっています。ボンネット周りに厚みを持たせることによって、あるものを「護る」(まもる)ことが理由といいます。

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その『あるもの』とは歩行者の頭です。歩行者とクルマが正面からぶつかった時、一般的な乗用車の場合、歩行者の足にバンパーが衝突し、歩行者は足元をすくわれるような形で跳ね上げられ、大抵の場合、重たい頭からボンネットに落ちていきます。ボンネット自体はそれほど堅い素材でできているわけではないので、人が落ちてくるとボンネットの下にある、非常に硬い金属でできているエンジンに頭を強打し、重傷となったり死亡したりという事故につながる恐れがあります。

そこで、ボンネットとエンジンの間に空間を作って、歩行者が頭に受ける衝撃を和らげよう(ボンネット自体が衝撃吸収の役割を果たす)とした結果、ボンネット周りに厚みのあるデザインが増えてきたというわけです。

国交省が導入した「歩行者頭部保護基準」に基づいて、自動車メーカー各社はボンネット周りのデザインや設計、エンジンルーム内の部品の形状などを変えて、対応することになりました。マツダが2003年発売の「RX-8」から採用した「ショックコーンアルミボンネット」も歩行者との衝撃を緩和する機能を持たせた、新しい構造のボンネットです。

■歩行者頭部保護基準導入のタイミングとその理由は?

歩行者頭部保護基準が導入されたのは、新型車で2005年9月以降製造、継続生産車(フルモデルチェンジのタイミングで対応)では2010年9月以降製造のクルマからとなっています。また、対策が困難とされる車高の極めて低いクルマ、SUV、貨物車、キャブオーバー車、ハイブリッド車においては、新型車が2007年9月から、継続生産車が2012年9月からとなっています。頭部保護基準導入の理由を、国土交通省では以下のように発表しています。

「交通事故死者数は年々減少傾向にありますが、歩行者事故は死亡や重傷に至る割合が高く、その死者数は交通事故死者数全体の約3割程度を占めています。その過半数が頭部を損傷して死亡しているため、自動車と歩行者が衝突する事故において、歩行者の頭部が受ける衝撃を少なくし、交通事故による死者数を減らすため本基準を導入することとしたものです。歩行者頭部保護基準の導入により、年間100名程度の歩行者を救うことができると試算しています」(国土交通省自動車交通局技術安全部)

■保護基準導入前と導入後で、ボンネット周りのデザインはどれくらい変わった?

歩行者頭部保護基準の対象車種は「乗車定員10人未満の乗用車」「乗用車から派生した車両総重量2.5トン以下の貨物車」となっており、歩行者の頭部を模した測定機器(頭部インパクタ)をボンネット上の数箇所にぶつけて、頭部インパクタがどの程度の衝撃を受けるかを測定し、その結果をもとに合否判定を行なっています。

結果は自動車アセスメントの公式WEBページで公開されています。ちなみに例であげている画像は2013年の歩行者頭部保護性能評価試験で、トップクラスのレベル5を獲得しているマツダ「アテンザ」のデータです。

歩行者頭部保護基準を適用してデザインされたクルマと、それ以前のクルマとでは、見た目の印象にどれくらい違いがあるでしょうか? 顕著な例として保護基準導入前の8代目(1995年発売)、9代目「カローラ」(2000年発売)と、導入後の10代目(2006年発売)、11代目「カローラ」(2012年発売)で比べてみましょう。9→10代目に変わった際、フロント部分の「厚み」が全く違っていることがよくわかります。

■デザイン重視のクルマではどのような対策をしている?

セダンやコンパクトカーであれば、エンジンフードとエンジンブロックの間に空間を確保する形で対応することはできても、ノーズの高さや長さなどのデザインが「カッコよさ」を左右するスポーツカー等では「厚くすればよい」というわけにはいきません。そこで、デザイン重視の車には「ポップアップリフター」「アクティブボンネット」「ポップアップエンジンフード」等の機構が採用されてきました。

メーカーによって細かい部分では異なりますが「歩行者との衝突、衝撃を感知した瞬間にボンネットが持ち上がって、エンジンブロックとの間に空間を作って衝撃を緩和させる」という目的を持っています。

この機構を国産車では日産「GT-R」(2007年発売)が初搭載し、マツダ「ロードスター」では2012年7月発売の3代目(NC系後期型)から「アクティブボンネット」が全車標準装備されています。この機構のおかげで、歩行者頭部保護基準をクリアしながら、ボンネットの位置が低くスタイリッシュなデザインとすることが可能となりました。

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