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空自の「世界で1機しかない異形機」その詳細が判明! “くちばし”の中身とは? 使い方も丁寧に教えてくれました

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空自の「世界で1機しかない異形機」その詳細が判明! “くちばし”の中身とは? 使い方も丁寧に教えてくれました

「カモノハシ」と呼ばれた機体の詳細が判明

 埼玉県の入間基地において2025年3月8日(土)、一般開放イベントが行われました。会場には引退が迫りつつあるC-1輸送機と、その機体をベースに作られた派生モデルのEC-1電子戦訓練機が展示されました。

【わかりやすい!】これがEC-1の役割と機内イメージです(写真)

 後者は航空自衛隊にたった1機しかないレアな存在で、機首部分には動物のクチバシのように突き出たレドームがあるのが特徴です。独特な外見が動物のカモノハシに似ているとされ、ゆえに同機のニックネームにもなっています。

 なぜ、そのような唯一無二の形状となったのか、それはEC-1が担う役割にあります。任務は、妨害電波(ECM)を発信し、レーダーを妨害することです。人間の目よりも遠くを監視できるレーダーは、現代の空中線において勝敗を分ける重要なセンサーであり、EC-1はそれを妨害・欺瞞することができるのです。

 EC-1は、C-1とは兄弟といえるような間柄ですが、じつは任務がまったく異なるうえに、その詳細は自衛隊の保全上の関係から公にされていませんでした。入間基地では1972(昭和47)年より活動している古株の機体であるにも関わらず、その姿が航空自衛隊の公式ホーム-ページやSNSで紹介されることは最近までありませんでした。

 しかし、原型のC-1自体が老朽化によって数を減らすなか、EC-1もそれに合わせて退役が噂されており、昨年(2024年)からは最後の花道を飾るかのように、航空祭において一般公開されるようになっています。

EC-1の任務は?

 EC-1のようにレーダーや通信を妨害する機体は、一般に電子戦機と呼ばれ、諸外国の軍隊でも運用されています。それらは友軍機が戦闘を行っているときに、敵のレーダーを妨害することで味方が戦闘で優位に立てるよう支援を行うのです。

 しかし、EC-1は名称に「訓練機」と付いていることからもわかるとおり、その任務は国内での訓練がメインとなっています。

 航空自衛隊は全国28か所にレーダーサイトを設けており、これらによって日本周辺の空域を警戒・監視しています。そのようななか、他国の機体が領空侵犯する可能性がある場合は、全国の基地から戦闘機がスクランブル(緊急発進)しますが、その管制においてもこれら地上設置のレーダーサイトで捉えた各種情報がキモとなっています。

 EC-1の任務は、電子戦訓練においてこうしたレーダーサイトなどに妨害を行い、実戦に即した状況を作り出すことにあります。また、地対空ミサイルを運用する高射部隊や、戦闘機に指示を出す地上の防空指令所(DC)の通信も妨害することも可能です。EC-1の任務は訓練において航空自衛隊の防空能力を試すことであり、それは通常の電子戦機と比べてより重要な任務だといえます。

 航空自衛隊がこれまでEC-1を対外的に紹介してこなかったのは、防衛上の重要情報を守るための保全が理由だと思われます。それはこの機体の性能や能力が公表できなかっただけでなく、その任務が日本の防空能力に関わる重要なものだったからなのでしょう。

カモノハシのクチバシの中まで解説

 今回、入間基地で行われたイベントでは、EC-1の機体内部を解説した透視図も展示されました。それによると、EC-1のあだ名「カモノハシ」の由来になったレーダードーム(レドーム)にも、ちゃんとした理由がある模様です。

 レドームの内部には前方方探妨害空中線(アンテナ)と電源装置があり、ここから妨害電波を発信する仕組みとなっています。また、このようなレドームは機首以外にも左右の前後4か所と、機体後部にも1か所設けられており、妨害電波は機体の全周に出せるのがわかります。また、C-1で貨物を積み込む積載スペースになっているところには、電波妨害を担当する乗員が座る制御席とそのための電子機器が搭載されているため、輸送機としての能力は完全に失われているようです。

 電波妨害を担当するのはECM要員と呼ばれる3名の乗員です。EC-1は、妨害電波を単に送信するだけでなく、対象となるレーダーの周波数に合わせて変換し、より効果的に妨害を行い、戦闘機と防空司令所の無線交信の妨害や、相手の電波を欺瞞することで実在しない「偽目標」を出現させることもできます。

 また、機体下部の左右2か所には「チャフ」と呼ばれる電波反射材でできた囮を収納したポッドを搭載することができ、これを空中投下することで電波的な「偽目標」を作り出すことも可能です。

 電波妨害(ECM)は、仕掛けられた側も周波数の切り換えるなどの対抗手段を講じるのが一般的で、これを電子防護(EP)や対電子対策(ECCM)と呼びます。このような攻守のやり取りを電子戦(EW)と呼んでおり、ミサイルなどの目に見える火力の撃ち合いこそありませんが、電波の世界では双方が目に見えない戦いを繰り広げているといえます。

 EC-1の後継機はまだ正式に決まっていません。しかし、防衛省は、電子戦訓練機にとどまらず実戦でも電子戦を行う「スタンド・オフ電子戦機」の開発を進めています。

 公表されたイメージ画像では、EC-1のようなレドームを追加したC-2輸送機ベースの双発機となっていました。電子戦訓練機という名称ではなくなりますが、EC-1が行っていたような訓練は、形や機材を変えて今後も続けられることでしょう。

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みんなのコメント

8件
  • 偏屈おっさん
    昭和47年から飛んでいるように記述されているが、実際は昭和53年から電子機器の基本設計が開始され、昭和54年に試作、昭和55年から基本設計、昭和59年から60年にかけて実用試験が行われ同年に部隊使用承認がおり、実際に飛び出したのはそれからで、昭和47年には全く存在していない機体です。よく調べてから記事にして下さい。
  • zer********
    搭乗者の健康被害防止策については調べてないんですね
    記事にするならば、そこまで調べて記載して欲しいです
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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