現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > いすゞ・ベレット1600GT(昭和39/1964年4月発売・PR90型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト024】

ここから本文です

いすゞ・ベレット1600GT(昭和39/1964年4月発売・PR90型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト024】

掲載 3
いすゞ・ベレット1600GT(昭和39/1964年4月発売・PR90型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト024】

この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第24回目は、スポーツカーの指標である時速100マイルに日本車として初めて達した、いすゞ・ベレット1600GTの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

四輪独立懸架で高いコーナリング性能
ヒルマン・ミンクスの後継モデルとして、ベレットがデビューしたのは昭和38(1963)年6月のことだった。まず曲面に囲まれたコンパクトなボディシェル、そして独特な走行特性が人々の心をとらえた。その秘密は後輪のサスペンションレイアウトにあった。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

ダイアゴナル・リンクとコイルを組み合わせ、さらに横置きリーフ・スプリングのコンペンセータを加えたスイングアクスル式により、ベレット独特の「ふんばりの効いた」走行性能が生まれたのである。なお前輪はウイッシュボーン/コイルの独立懸架となっている。

当時まだ少ない四輪独立懸架を採用したベレットに、スポーティ・タイプがバリエーションに加えられるのは、むしろ当然の成行きと言ってよかった。果たして昭和38(1963)年秋の第10回東京モーターショーには1500GTのプロトタイプが発表となった。そして翌昭和39(1964)年4月にはそれとは別のより強力なエンジンを搭載した1600GTがデビューした。

ボディは2ドアクーペで、ホイールベースは2350mmとセダンと同一だが、車高は1350mmと40mm低くなっていた。なお全長は4005mm(セダンは4010mm)、全幅は1495mmである。ちなみに1600GTは同じ年の9月には早くもマイナーチェンジを行い、4灯式ヘッドランプは2灯式プラス・フォグランプへと変わり、前輪にはディスクブレーキが装着されている。

エ ン ジ ン はG160型、 直4OHV、1579cc (83×73mm)で、SUキャブレターを2連装して、最高出力は88ps/5400rpm、最大トルクは12.5kgm/4200rpmを発生した。車重は940kgであるから、馬力当り重量は10.7kg/ps(SAE)とわずかに10kg/psをオーバーしていたが、当時としては良好なものだ。最高速度は160km/hで、日本車ではじめてスポーツカーの指標ともいえる100マイル・ラインに達したのも話題となった。

フェアレディ1500が当時最速の155km/hとなっていたのを考えると、ベレット1600GTの160km/hという数字の持つ意味がよくわかる。

さらに当時の世界に目を向けて見ると、GTと称する量産タイプは、それほど数は多くなかったが、たとえばイギリスのフォード・コンサル・コルティナGTでは、1.5L の83.5ps(SAE)エンジンを搭載、馬力当り重量10.4kg(SAE)とベレットGTと全く同一水準だが、最高速は149km/hだった。

当時としては数少ない正確なステアリング特性
これだけでもベレット1600GTが、世界的にも後発メーカーであるいすゞの意気込みを如実に示した作品だったことがよくわかる。後発の企業は洋の東西を問わず、いつも立ちふさがる大企業の壁に挑戦するため、技術的にもスタイルの面でも、常に一歩を先んじた新機軸を示さなくては立ち行かない宿命を持っている。
 
1600GTには先述の昭和39年9月のマイナーチェンジと同時に、1500GTがラインアップに加えられた。1500GTのエンジンはG150型、直4OHV、1471cc(79×75mm)で、SUキャブの2連装により、出力は77ps/5400rpm、最大トルク12kgm/4200rpmを発生した。

最高速は150km/hである。ベレット1600GT/1500GTは、「ベレG」の愛称で知られ、リアのスイング・アクスル特有のクセのある操縦性を持っていた。それでもラック&ピニオンのステアリングシステムと相まって、当時としては数少ない正確なステアリング特性を示し、その鋭いハンドリングはスポーティ走行の醍醐味を味わわせてくれた。

ただし販売台数はそれほど伸びなかった。それというのも93万円(1600GT)という、車格がより高いセドリック1900あたりとほぼ同じの高価格が影響していたのかもしれない。

たしかに、昭和40年に鳴り物入りでデビューしたスカイライン2000GT(S54)よりも数万円高いのは、大きなハンディキャップではあった。それだけにユーザーはマニアックで個性を重んじる人たちが多かった。つまりトヨタ、ニッサンの多数派ではなく一匹狼とでも言おうか。

ベレット1600GTは細部変更・改良を繰り返し少数ながらも健闘したが、ハイパワー化の波には抗しきれず、ベレットGTRへと進化していく。ともかく、日本の自動車史の中にあって「GT」の名称がこのクルマからスタートしたことは、間違いない。独特のエキゾーストサウンドとともに、人々の記憶に残る1台である。

いすゞ・ベレット1600GT(1964・RP90型)諸元
●全長×全幅×全高:4005×1495×1350mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:940kg
●エンジン型式・種類:G160型・直4OHV
●排気量:1579cc
●最高出力:88ps/5400rpm
●最大トルク:12.5kgm/4200rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.60-14
●新車価格:93万円

[ アルバム : いすゞ・ベレット1600GT はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

もはや熟成の域だよレガシィアウトバック!! さすが4駆のスバル!! やっぱアウトドアにピッタリだった 
もはや熟成の域だよレガシィアウトバック!! さすが4駆のスバル!! やっぱアウトドアにピッタリだった 
ベストカーWeb
[ハイラックスサーフ]の後ろに注目!! 巨大リアウィングの機能がスゴかった
[ハイラックスサーフ]の後ろに注目!! 巨大リアウィングの機能がスゴかった
ベストカーWeb
トヨタ小林可夢偉が見据えるテール・トゥ・ウイン。「優勝以外リベンジとは言えない」と平川亮/ル・マン24時間
トヨタ小林可夢偉が見据えるテール・トゥ・ウイン。「優勝以外リベンジとは言えない」と平川亮/ル・マン24時間
AUTOSPORT web
LMP2新レギュレーション、3度目の導入延期。2027年末まで現行規定を維持へ
LMP2新レギュレーション、3度目の導入延期。2027年末まで現行規定を維持へ
AUTOSPORT web
2025年からのハイパーカー『最低2台義務』が正式発表。イモラはガレージ数を拡張へ
2025年からのハイパーカー『最低2台義務』が正式発表。イモラはガレージ数を拡張へ
AUTOSPORT web
マフラーを横から出しちゃダメだろ! クルマの「サイド排気」って車検に通るの?
マフラーを横から出しちゃダメだろ! クルマの「サイド排気」って車検に通るの?
ベストカーWeb
ル・マン24時間グランドマーシャルとTGR-E副会長で多忙な中嶋一貴。「しっかり役をこなしたい」
ル・マン24時間グランドマーシャルとTGR-E副会長で多忙な中嶋一貴。「しっかり役をこなしたい」
AUTOSPORT web
一体どこが抜け出すんだ!? 2024年ル・マン24時間は開始1時間を過ぎても依然接近戦……11番手発進トヨタ8号車もトップ争いに加わる
一体どこが抜け出すんだ!? 2024年ル・マン24時間は開始1時間を過ぎても依然接近戦……11番手発進トヨタ8号車もトップ争いに加わる
motorsport.com 日本版
ハイパーカーのホモロゲーションサイクルが2029年まで延長。水素クラス導入は2028年へ4度目の延期
ハイパーカーのホモロゲーションサイクルが2029年まで延長。水素クラス導入は2028年へ4度目の延期
AUTOSPORT web
アストンマーティン、2025年WECハイパーカー参戦を確認。2台のヴァルキリーAMR-LMHが登場へ
アストンマーティン、2025年WECハイパーカー参戦を確認。2台のヴァルキリーAMR-LMHが登場へ
AUTOSPORT web
築110年の駅舎には2つのミュージアム! バーストーの街はクルマ好きも鉄道好きも立ち寄る価値ありです【ルート66旅_56】
築110年の駅舎には2つのミュージアム! バーストーの街はクルマ好きも鉄道好きも立ち寄る価値ありです【ルート66旅_56】
Auto Messe Web
[セレナミニ]爆誕!? シエンタにフリードバカ売れなのに日産なぜ出さない!?
[セレナミニ]爆誕!? シエンタにフリードバカ売れなのに日産なぜ出さない!?
ベストカーWeb
2024年のル・マン24時間がスタート! フェラーリがすかさずワンツー奪取……トヨタ8号車6番手
2024年のル・マン24時間がスタート! フェラーリがすかさずワンツー奪取……トヨタ8号車6番手
motorsport.com 日本版
いよいよステーションワゴン登場! BMW i5 ツーリングへ試乗 万能道具感は先代を超えず?
いよいよステーションワゴン登場! BMW i5 ツーリングへ試乗 万能道具感は先代を超えず?
AUTOCAR JAPAN
富士6時間レースは9月に開催。WEC、ル・マンで全8戦の2025年レースカレンダーを発表
富士6時間レースは9月に開催。WEC、ル・マンで全8戦の2025年レースカレンダーを発表
AUTOSPORT web
ランボルギーニ史上初、ル・マン24時間レースのハイパーカークラスに参戦! SC63の2台体制で歴史的なデビューを飾ります
ランボルギーニ史上初、ル・マン24時間レースのハイパーカークラスに参戦! SC63の2台体制で歴史的なデビューを飾ります
Auto Messe Web
登録者数400万人超YouTuber、新車で買った「高級車」公開! ガラスルーフ×白内装の“近未来モデル”に「カッコイイ!」の声集まる
登録者数400万人超YouTuber、新車で買った「高級車」公開! ガラスルーフ×白内装の“近未来モデル”に「カッコイイ!」の声集まる
くるまのニュース
「高級小型スポーツ」がパワーアップ! 直6ターボで480馬力 新型BMW M2クーペ、8月生産開始
「高級小型スポーツ」がパワーアップ! 直6ターボで480馬力 新型BMW M2クーペ、8月生産開始
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

3件
  • sae********
    いすず・・異端児みたいで良かったなあ~。ジェミニディーゼルに長年乗ってました。いいクルマでした。
  • BLACK KNIGHTS
    昔いすずのテストドライバーをしていた方が年上の知り合いでいたけど、ベレGもツインカムエンジンを搭載していたべレGTRも面白かったと、簡単だったけど話していましたっけ。
    それだけなんですが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1640.03258.0万円

中古車を検索
GTの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1640.03258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村