現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 愛車を手放した瞬間、それはもう「別の何かに変わっている」という残酷な事実

ここから本文です

愛車を手放した瞬間、それはもう「別の何かに変わっている」という残酷な事実

掲載 更新 65
愛車を手放した瞬間、それはもう「別の何かに変わっている」という残酷な事実

それまで生活をともにしてきた愛車との別れのきっかけや理由は人それぞれ。

筆者の場合、子どもが産まれたのを機に「おそらく、生涯買うことはない(買うつもりはない)」と思っていたミニバンに乗り換えたことがきっかけでした。家族やベビーカー、その他たくさんの荷物を積んで移動できることはもちろん、車内も広い。さらに電動スライドドアがあれば狭い駐車場でも乗り降りが楽だし、子どもが勢いよくドアを開けて、となりのクルマにドアパンチ!…といったトラブルも回避できる。

疲れ知らずの20代のうちに…。夜な夜な走るのが楽しいと思える時間はそう長くない

必要に迫られて手に入れたとはいえ、ミニバンが便利な乗り物であることを改めて実感しました。遅まきながら、日本の路上にミニバンがあふれている理由がようやく分かったように思います。自分の好みより、家族のことを優先したクルマ選びが必要なときもある…。こうして、ミニバン食わず嫌いだった筆者はあっさりと「これはアリ」という思考に切り替わったのです。

フォルクスワーゲン ゲート事件の真っ只中に購入したゴルフ7

ゴルフ7を購入したのは2015年秋、忘れもしないフォルクスワーゲン ゲート事件の真っ只中でした。土曜日の午後にもかかわらず、点検待ちのお客さん以外は閑散としたショールーム。商談しているのは筆者のテーブルだけ…そんな状況でした。ちょうど半期の決算月ということもあり、担当セールスさんは「在庫車であれば…」という条件付きながら、現行モデルの新車とは思えない破格の条件を提示してきたのです。「この条件なら何とかなるかも…」。当時の筆者は独身。お伺いを立てる相手もいなかったので「ローン(の審査)がとおったら」という条件つきで審査したところ、まさかのクリア。これも何かの縁かと思い、また破格の条件にも乗せられ、その場の勢いで購入を決めてしまいました。

以来、3年半、距離にして66529kmをともにしたゴルフ7。所有年数に対して過走行なのは「日常使い + 仕事の移動」によるもの。所有した期間は短かったけれど、行動をともにした距離と時間はそれなりのものになっていました。ちょうどこの頃、公私ともにさまざまな変化があった時期に所有していたので、歴代の愛車遍歴のなかでもとても愛着のあるクルマとなったのです。

まさか自分がミニバンを所有することになろうとは…

それまで所有していたフォルクスワーゲン ゴルフ7から、ゴルフ トゥーランに乗り替えたのが2019年5月。短期間で乗り替えることになったので、新車のゴルフ トゥーランは予算オーバーのため断念。そこで、3年落ちの認定中古車を選ぶことに。ちなみに、前愛車のゴルフ7と、現愛車のゴルフ トゥーランは同じセールスの方から購入しました。このセールスさんとの付き合いがなければ、他メーカーのクルマ(ミニバン)を選んでいた確率は極めて高いと思います。

ゴルフ トゥーラン納車日の前日の夜は、これまでの感謝の気持ちを込めて、時間の許す限りゴルフ7を洗車してから送り出すことに。別れの前日、いつも以上にすみずみまで洗車をするのは、自分にとってちょっとしたセレモニーであり、気持ちの区切るための「儀式」でもあります。

そして納車当日。ディーラーでゴルフ トゥーランの納車に関する手続きを済ませ、これでゴルフ7とはお別れ。手放しておいてナンですが、その日のうちにディーラーの認定中古車の1台として売り出されていたページを見つけたときは複雑な気持ちでした…。

ちなみに、ゴルフ トゥーランの定員は7人。つまりサードシートが装備されています。しかし、ディーラーで受け取った時点でサードシートを格納して以降、本日にいたるまで1年3ヶ月、1度も使ったことがありません。なぜなら、サードシートが使える状態にしていると、ベビーカーをはじめとする荷物を積むスペースがほとんどなくなってしまうのです(もちろん、いざというときにあると便利な装備だという認識に変わりはありません)。少なくともゴルフ トゥーランのサードシートは、2+2クーペのリアシートのように「いざというときにあると便利な装備」というのが率直な感想です。

前愛車のゴルフ7が売れたかどうか、中古車検索サイトでチェックする日々…

自分でも女々しいな…と思いつつ「中古車検索サイトのお気に入りリスト」のひとつに元愛車が加わることに。毎晩、売れていないことを確認すると、ほっとしたような、もしや過走行で人気がないのかなといらぬ思案をしたり…そんな日々がつづきました。そしてある日の晩、お気に入りリストから元愛車が消えていたのです。どうやら、無事に売約済みとなった模様。このとき「もうこれで会うこともないだろうな…」という、一抹の寂しさを感じたことも事実です。

認定中古車として売り出したので、ディーラーに里帰りしたときにバッタリ会えるかもしれないと…と思っていたのですが、それは叶いませんでした。それが1年後、まさかの展開に…。

別れから1年後、法定点検のサービス代車として再会することに

ゴルフ7との別れから1年後、偶然の再会はある日突然やってきました。ゴルフ トゥーランを法定点検に入庫させるべく、フォルクスワーゲンディーラーへ。そこにサービス代車として用意されていたのが、元愛車であるゴルフ7。実は、サービスアドバイザー(一般的にはサービスフロント)さんの粋な計らいで、セカンドオーナーさんの代替で出戻ってきたのち、サービス代車として使われている元愛車を割り当ててくださったのでした。

ナンバーは変わっていても、ちょっとした生活傷や、手を加えた部分など…。それは、間違いなく自分が所有していたゴルフそのもの。少なくとも、乗り込むまではそう思っていたのです。

真っ先に変わったと感じたのは「車内の匂い(臭い?)」

サービスアドバイザーさんからキーを受け取り、いざ車内へ。ゴルフ トゥーランの着座位置に慣れてしまうと、ハッチバックタイプのゴルフがずいぶんと低く感じます。ドアを閉めた瞬間、即座に「あ、車内の匂い(臭い?)が変わった」。そう感じたのです。それがセカンドオーナーさんのものなのか、サービス代車していろいろな方が乗っているからなのかは分かりません。慣れ親しんだクルマでありながら、もう別の何かに変わったことを実感する瞬間でもあります。どこか複雑な気持ちのまま、ひとまず限られた時間のなかでの再会を楽しもうとディーラーを後にしたのでした。

3時間ほどのドライブのあいだに起こった心境の変化

法定点検に要する時間は約2時間。プラス1時間いただき、計3時間ほどゴルフ7とのドライブを楽しみました。久しぶりのゴルフ。これほど動きが軽いとは!ゴルフ トゥーランの車両重量が1560kgなのに対して、ゴルフ7(1.2Lモデル)は1240kg。カタログの数値上で実に320kgも差があります。加えて重心の高さや全長差など、同じゴルフの名を冠していながら、街乗りでも挙動がまったく違うことを再認識したのでした。

広場にクルマを停めて改めて眺めてみると、前オーナーさんが手を加えたところは皆無の模様。加えて、筆者が購入時に選んだオプションや後付けのパーツなどもそのままのようでした。クルマには意思なんてないと思うけれど、仮にあった場合、ファーストオーナーである筆者との再会をどう思っていたのでしょうか…。知りたくもあり、内心、知るのも怖い。

周辺を少しドライブしているうちに、気がつくと返却時間が迫っていました。当初の再会できる喜びの気持ちはどこへやら。複雑な気持ちを抱いたまま、ガソリンスタンドで給油を済ませ、ディーラーへと引き返すことにしました。果たして、これがこのゴルフ7との最後のドライブとなるのか、それとも…。

愛車を手放した瞬間、それはもう別の何かに変わっているという残酷な事実を知る

無事に法定点検が終わり、ディーラーにゴルフ7を返却して現在の愛車であるゴルフ トゥーランに乗り替えたとき、着座位置の高さとどっしりとしたクルマの動きにホンの一瞬だけ戸惑いました。が、それも一瞬のこと。つい先ほどまで乗っていたゴルフ7の感触があっけなく「上書き保存」されていることに気づいたのです。

1台のクルマとじっくり接することで深い愛着が生まれるけれど、手放したときの反動も大きい。売らずに済めばいいけれど、今回のようにそうはいかないときもある。愛車を手放して他の方の手に渡った瞬間から、それは別の何かに変わってしまう。それに加えて、所有していたときの記憶が少しずつ風化していく…。今回、その残酷な事実を身をもって思い知らされたのでした。

余談:その後、スタッフの方からお聞きしたところによると、このゴルフ7の購入希望者が現れ、いまはサードオーナーさんのところで暮らしているそうです。

[ライター・撮影/松村透]

こんな記事も読まれています

F1ハースとの協業で得られる技術的メリット。WECとの違いとパイプライン【トヨタ/TGR加地部長インタビュー/前編】
F1ハースとの協業で得られる技術的メリット。WECとの違いとパイプライン【トヨタ/TGR加地部長インタビュー/前編】
AUTOSPORT web
マセラティ公式の「スーパーカー消しゴム」グッズ発売、“直線番長レース”で大人も夢中に
マセラティ公式の「スーパーカー消しゴム」グッズ発売、“直線番長レース”で大人も夢中に
レスポンス
「うわっ…!」“西日”がまぶしい! 午後のドライブで突然のピンチに!? 注意したい晩秋特有の“現象”に有効な「対策」とは
「うわっ…!」“西日”がまぶしい! 午後のドライブで突然のピンチに!? 注意したい晩秋特有の“現象”に有効な「対策」とは
くるまのニュース
急転直下のキャデラックF1参戦。マリオ・アンドレッティにとっても謎?「個人的な理由もあったようだが、突然まとまった」
急転直下のキャデラックF1参戦。マリオ・アンドレッティにとっても謎?「個人的な理由もあったようだが、突然まとまった」
motorsport.com 日本版
[15秒でわかる]ヒョンデ『アイオニック9』…柔軟な座席配置を実現
[15秒でわかる]ヒョンデ『アイオニック9』…柔軟な座席配置を実現
レスポンス
いすゞ「“2階建て”キャンパー!?」世界初公開! タフな「カクカク」ボディが超カッコイイ! 6人寝られる「NTB エクスペディション ストライカー」愛知で実車展示
いすゞ「“2階建て”キャンパー!?」世界初公開! タフな「カクカク」ボディが超カッコイイ! 6人寝られる「NTB エクスペディション ストライカー」愛知で実車展示
くるまのニュース
F1シート喪失の周冠宇、2025年はフェラーリのリザーブドライバー就任?「彼らは僕にかなり興味を示している」
F1シート喪失の周冠宇、2025年はフェラーリのリザーブドライバー就任?「彼らは僕にかなり興味を示している」
motorsport.com 日本版
最強ディフェンダー「オクタ」初展示! 驚愕スペックとプロトタイプの全貌とは
最強ディフェンダー「オクタ」初展示! 驚愕スペックとプロトタイプの全貌とは
レスポンス
F1、カタール航空のSAF(持続可能航空燃料)プログラムに参画。”空のネットゼロ”実現にも貢献へ
F1、カタール航空のSAF(持続可能航空燃料)プログラムに参画。”空のネットゼロ”実現にも貢献へ
motorsport.com 日本版
【MotoGP】現役引退のアレイシ・エスパルガロ「才能では劣っていると感じていたけど、努力で勝った!」
【MotoGP】現役引退のアレイシ・エスパルガロ「才能では劣っていると感じていたけど、努力で勝った!」
motorsport.com 日本版
“不死鳥”ウィケンス、IMSAのGTDクラスに参戦! インディカーでのクラッシュで下半身不随もレースへの情熱は燃え続ける
“不死鳥”ウィケンス、IMSAのGTDクラスに参戦! インディカーでのクラッシュで下半身不随もレースへの情熱は燃え続ける
motorsport.com 日本版
日産、全国車椅子マラソンを12月開催へ…パラリンピック選手も参加
日産、全国車椅子マラソンを12月開催へ…パラリンピック選手も参加
レスポンス
トヨタに「超スゴいクラウン」登場! 300馬力超えに斬新「黒すぎデザイン」ד匠”の表面仕上げボディがカッコイイ! 「所有欲満たす特別なクラウン」どんなモデル?
トヨタに「超スゴいクラウン」登場! 300馬力超えに斬新「黒すぎデザイン」ד匠”の表面仕上げボディがカッコイイ! 「所有欲満たす特別なクラウン」どんなモデル?
くるまのニュース
宮田莉朋、FIA F2初開催カタールはライバル勢に“コソ練多し”目標はトップ10入り/第13戦プレビュー
宮田莉朋、FIA F2初開催カタールはライバル勢に“コソ練多し”目標はトップ10入り/第13戦プレビュー
AUTOSPORT web
ブレーキだけで1台分500万円も!? 高性能車に採用される「カーボンセラミックブレーキ」はなにが違う? 摩擦力と耐熱性に優れた理想のブレーキでした
ブレーキだけで1台分500万円も!? 高性能車に採用される「カーボンセラミックブレーキ」はなにが違う? 摩擦力と耐熱性に優れた理想のブレーキでした
Auto Messe Web
スズキ、子どもたちに宇宙の魅力発信 12/8にスズキ歴史館でイベント開催
スズキ、子どもたちに宇宙の魅力発信 12/8にスズキ歴史館でイベント開催
日刊自動車新聞
F1由来の最新ターボシステムを採用!「メルセデスAMG GT 43 クーペ」が日本デビュー!
F1由来の最新ターボシステムを採用!「メルセデスAMG GT 43 クーペ」が日本デビュー!
Webモーターマガジン
激レア車が集結!オーテック湘南里帰りミーティング2024レポート
激レア車が集結!オーテック湘南里帰りミーティング2024レポート
レスポンス

みんなのコメント

65件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

691.2792.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

10.0804.0万円

中古車を検索
ゴルフ Rの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

691.2792.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

10.0804.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村