発売当初は優勢だったヴェルファイア
執筆:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
【画像】顔面どう変わった?【アルファード/ヴェルファイアのマイチェン前後を比較】 全61枚
編集:Taro Ueno(上野太朗)
クルマの売れ行きは概して浮き沈みが大きいが、この中でもとくに注目されるのがヴェルファイアだ。
アルファードの姉妹車で、基本的には同じクルマなのに、売れ行きは大きく異なる。
2021年1~7月の1か月平均登録台数は、アルファードが9392台、ヴェルファイアは751台だ。
ヴェルファイアの売れ行きは、アルファードのわずか8%にとどまる。なぜ姉妹車同士でここまで販売格差が生したのか。
今までの流れを振り返ると、初代ヴェルファイアは、2代目アルファードの姉妹車として2008年に登場した。
この時点ではアルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店が扱っている。
ヴェルファイアのフロントマスクは、アルファードに比べると派手で、販売店舗数もネッツ店が多い。そのために登録台数もヴェルファイアが上まわった。
発売の翌年に当たる2009年には、ヴェルファイアは1か月平均で4136台、アルファードは2467台を登録している。ヴェルファイアはアルファードの1.7倍売れていた。
この後もヴェルファイアはアルファードよりも好調に売れて、2015年に現行型へフルモデルチェンジされた。
2016年の1か月平均登録台数は、ヴェルファイアが4082台、アルファードは3089台だから、この時点でもヴェルファイアが多かった。
マイチェンで形勢逆転 決め手は顔面
ところが2018年1月にマイナーチェンジを実施すると流れが変わった。
アルファードの仮面のようなフロントマスクにメッキを散りばめて、存在感が大幅に強まっている。
その結果、2018年にアルファードは1か月平均で4901台を登録して、販売店舗数が少ないのにヴェルファイアの3054台を上まわった。
これが自動車ビジネスの難しさだ。機能は両車ともに共通で、当時は装備内容や価格も同じだったのに、フロントマスクのデザイン次第で売れ行きが大きく左右された。
一般的にライバル車との販売競争に勝った理由、あるいは負けた理由は、推定はできても特定するのは難しい。デザイン、機能、価格など、いろいろな要素が関係するからだ。
それがアルファードとヴェルファイアの優劣は、両車の違いがデザインだけなので分かりやすい。
しかも販売店舗数の少ないアルファードが、ヴェルファイアの売れ行きを上まわったから、デザインの影響力は絶大だ。
クルマにとって、デザインがいかに大切かをハッキリと示す事例であった。
トヨタ販売体制変更で差が拡大
2018年以降も、アルファードはヴェルファイアに比べて好調に売れ続けた。
2019年の1か月平均登録台数は、アルファードが5725台、ヴェルファイアは3054台だ。
比率に換算すると、アルファードはヴェルファイアの1.9倍に達した。
さらに2020年の1か月平均登録台数は、アルファードが7562台に増えて、ヴェルファイアは1500台まで半減した。アルファードの売れ行きは、ヴェルファイアの5倍に達する。
ここまで差が開いた背景にあったのは、2020年5月に実施されたトヨタの全国的な販売体制の変更だ。
従来はアルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店のみが販売したが、2020年5月以降はすべての店舗でアルファードとヴェルファイアの両方を扱うようになった。
その結果、今まではアルファードとヴェルファイアを両方とも販売していなかったトヨタ店とカローラ店でも、フロントマスクの変更で人気を高めたアルファードが好調に売れ始めた。
ネッツ店からも「長くヴェルファイアを使っていたお客さまが、最近はアルファードに乗り替えるようになった」という声が聞かれるようになった。
クラウンユーザーもアルファードへ
それにしてもフロントマスクの変更だけで、ここまで販売格差が広がるのか。
販売店に尋ねると別の理由も聞かれた。
「もともとアルファードを扱うトヨペット店は、法人営業が強かった。そのために企業の重役などがアルファードを使うようになり、政治家が愛用する様子もTVのニュースなどで流れるようになった。その結果、成功した人の乗るクルマとして、アルファードのイメージが向上した」
クラウンを専門に扱ってきたトヨタ店では「新たにアルファードを扱うようになると、クラウンから乗り替えるお客さまが増えた」という。
クラウンはトヨタ店の看板車種だが、2020年における1か月平均登録台数は1848台で、前年に比べると半減した。アルファードの24%にとどまる。
また販売店からは別の見方も聞かれた。
「アルファードはミニバンでは珍しく、以前から海外でも人気が高い。そのために中古車輸出も活発だ。また高価格車とあって、日本のお客さまもアルファードを中古で買おうとするから、数年後に手放す時の売却額も上昇した」
「高く売れることもアルファードが人気を得た理由だ」
中古車市場の人気は変動が大きく、現時点の高い売却額が、今後も継続するとは限らない。
それでも今までのアルファードは好条件で、売れ行きに貢献した。
集約すすめるトヨタの狙いどおりに?
アルファードは、マイナーチェンジによるフロントマスクの変更を切っ掛けに、トヨタの全店で全車を使う販売体制への移行、企業のトップや政治家の愛用、売却額の上昇などによって人気を高めた。
複数の事象が重なった相乗効果でもある。この影響で姉妹車のヴェルファイアは売れ行きを急減させた。
この販売動向を受けて、2021年4月のマイナーチェンジでは、ヴェルファイアのグレードが大幅に減らされた。
今ではアルファードの特別仕様車と同じ仕様しか選べない。2.5Lノーマルエンジンとハイブリッドを各1グレードのみだ。
その結果、直近の2021年7月におけるヴェルファイアの登録台数は410台であった。アルファードの8964台に比べると約5%だ。
これはトヨタにとっては狙いどおりだ。
今後は電動化を含めた環境対応、自動運転など、先進技術への投資も増える。
そうなると各商品の開発費用は抑えねばならない。
そこでマークX、プレミオ&アリオン、ポルテ&スペイドなどは廃止され、全店が全車を扱う体制に変更することで姉妹車も終了する。
この戦略の典型的な成功例が、アルファードの好調とヴェルファイアの不振といえるだろう。今後、ヴェルファイアは廃止の方向に進む。
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みんなのコメント
どうしてオデッセイやステップワゴンが
完敗してるのか書けばw