この記事をまとめると
■全日本ラリー選手権第3戦「ツール・ド・九州」が開催された
1.2リッター&FFのプジョー208が格上の4WD相手に大暴れ! 軽量を武器に全日本ラリーで「ジャイアント・キリング」を成し遂げた
■今回は小型ハイブリッド車だらけのJN6クラスに注目
■2023年はドライバーおよび車種ラインアップが充実している
経験豊富なドライバーが名を連ねる
全日本ラリー選手権・第3戦「ツール・ド・九州」が4月14日~16日、佐賀県唐津市を舞台に開催。各クラスで激しいタイム争いが展開されていたのだが、筆者が最高峰のJN1クラスとともに注目していたのが、JN6クラスだった。
JN6クラスは1800cc以下のAE車両(電気モーターまたは電気モーターとエンジンを併用して動力とする車両)を対象にしたクラスで、トヨタ・ヤリスやトヨタ・アクア、ホンダ・フィット、ホンダ・ハイブリッド、ホンダ・CR-Zなどハイブリッドモデルがエントリー。集うドライバーの顔ぶれも、長年にわたってJN5クラスで活躍してきたFFコンパクトの帝王、天野智之(アクア)を筆頭に、2022年のJN6クラス王者、海老原孝敬(フィット)、JN5クラスで活躍してきたベテランの鷲尾俊一(CR-Z)、中西昌人(CR-Z)、清水和夫(ヤリス)など、経験豊富なドライバーが名を連ねてきたことも2023年のポイントだと言えるだろう。
JN6クラスは改造範囲が狭く、ロールゲージやダンパー、ブレーキパッド、コンピュータを除けばほぼノーマルの状態。競技車両といえども、もっとも市販モデルに近いマシンとなっていたことから、これまでは地方選手権からステップアップしてきたニューカマーや女性ドライバーの受け皿的なクラスとなっていたが、前述のとおり、2023年はドライバーおよび車種ラインアップが充実したことによって、シリーズのなかでも激戦のクラスになってきたのである。
「JN6クラスは『ハイブリッドクラス』という、明確なアイデンティができたので、新しいフィールドとして好奇心がありました」と語るように、2023年よりJN6クラスへの参戦を開始した天野は、ハリブリッド車両のドライビングについて、「ブレーキの回生がポイントになるんですけど、長いブレーキを使うとタイムロスすることもあるので、回生したエネルギーでタイムアップできる部分とブレーキングでタイムが落ちるぶんをトレードオフしなければいけない。そこのマネジメントが難しいので、いままでとは違う考え方が必要ですね」と分析する。
さらにマシンに関しても「エンジン排気量が1500ccのコンパクトということで、JN5クラスのマシンとセッティングやエンジンの使い方は共通性があるんですけど、JN6クラスは車両重量が重いのに内装を外せないので軽量化ができないし、ブレーキもキャリパーの変更など強化ができないので難しいですね」とのことだ。
お馴染みの清水和夫さんもヤリスで参戦!
一方、昨年までCVTのヤリスで、JN5クラスを戦ってきた清水も「CVTモデルもMT車と同等のレベルまで走れるようになってきたし、ハイブリッドクラスができたのでJN6クラスに参戦したんですけど、ブレーキの回生でいかに運動エネルギーを電気に戻すか、ブレーキングも工夫しないといけないので、ドライビングの幅が広がって面白い」と語る。
まさにエネルギー回生を意識したブレーキングは、WRCのRally1ハイブリッドに通じるものがあるようで、全日本ラリー選手権のJN6クラス車両はWRCのトップモデル、Rally1ハイブリッドの縮図版と言えなくもない。しかも、参戦コスト的はリーズナブルで、前述の清水によれば「燃費が良くて、JN5クラスで走っていたCVTモデルの2倍。それにロールゲージもJAF規定でいいし、改造範囲も足まわりぐらいなので、ベース車両を中古で安く入手すれば、300万円ぐらいで全日本ラリーに参戦できる」とのことで、手軽にチャレンジできるところもJN6クラスの魅力だと言えるだろう。
規定的には1800ccまでOKとなっていることから、トヨタ・プリウスでも参戦できるほか、日産ノートでも参戦可能。しかも、天野によれば「ツール・ド・九州はレグ1から雨で、車両重量が重たいハイブリッドモデルはウエット路面で苦戦しましたが、ドライのターマックは速いと思います。伸び代はあるので、上のクラスのマシンも食えると思いますよ」とのことだ。
事実、ツール・ド・九州でJN6クラスを制した天野は、JN4クラスおよびJN5クラスなど数多くの格上モデルを凌駕。そのコーナリングスピードは明らかに速く、マシンの熟成が進めば、さらなるパフォーマンスアップが期待できるだけに、今後もハイブリッドのJN6クラスに注目したいものだ。
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