この記事をまとめると
■「シューティングブレーク」と呼ばれる2ドアのワゴンモデルが数多く誕生している
市販されなかったのが残念すぎる! 86をワゴン化した「シューティングブレーク」が理想的な1台だった
■最初にシューティングブレークを名乗ったのはロールス・ロイスだった
■最近は5ドアワゴンにもシューティングブレークを名乗るモデルも登場している
「狩猟用のワゴン」という意味で馬車の時代に生まれた言葉
こと実用性で割り切ってみると、クルマのドアは多ければ多いほど便利です。すると、2ドアというのは何かにつけて不便というレッテルが貼られがちで、走行性能を優先したスポーツカーやスタイルを重視したクーペに採用されることがほとんどかと。
ところが、世のなかにはシューティングブレークなどと呼ばれる2ドアのワゴンが数多く生まれています。はたして実用性はあるのか、はたまたスタイルが超イケイケなのか、なかなか微妙なポジションを攻めているのではないでしょうか。
シューティングブレーク(Shooting Brake)とは、その名の通り狩猟用のワゴンといった意味で、もともとは馬車の時代に生まれた言葉。狩りをする人と、その荷物や狩猟犬を載せる馬車、すなわちフレームのみのオープンボディだったことが伝えられています。
クルマを使う時代になると、最初にシューティングブレークを名乗ったのはやっぱりロールス・ロイス(1910年)で、狩猟用というより2ドア、ふたり乗り、荷物スペース多め、くらいのニュアンス。このロールスが名付けたというのが重要で、後に登場するイギリス製2ドアワゴンはたいていシューティングブレークというシャレたネーミングが与えられたものです。
我々、日本人にとってもっとも馴染み深いのは、やっぱりジャガーXJ-Sシューティングブレークではないかと。クーペをベースにルーフを延長し、リヤの荷室容量をアップ。たしかに天高、縦横ともに広がっているため「なるほどライフルだのショットガンも積めそうだ」と納得させられたものです。
ちなみに、ジャガー本社の製造でなく、リスターなど社外のコーチビルダーの作品であり、無論、大金持ちがオーダーしたとのこと。この大金持ちとか英国貴族が乗るというイメージもXJ-Sだからこそ根付いたといえるかもしれません。
また、アストンマーティンをベースにしたシューティングブレークも同様で、実用性はともかく、2ドアワゴンのカッコよさをこれでもかと見せつけてくれたのです。
5ドアモデルにも「シューティングブレーク」がある
当然、イギリス車だけでなく世界中のメーカーがシューティングブレークの商業的な可能性に気づくことになり、ひところは結構な数のモデルが生まれています。例えば、ホンダ・アコード・エアロデッキなどはシューティングブレークと名乗りこそしませんでしたが、XJ-Sに負けず劣らずスタイリッシュなもの。ややもすると間延びしたシビックになってしまいそうなところを上手にまとめ、ブーム的な人気まで勝ち得ていました。
エアロデッキほどの人気は出なかったようですが、日産EXAキャノピーもまたシューティングブレークを再解釈したモデルといっていいでしょう。キャノピー部のガラスエリアを広くとったところなどは、アストンマーティン・ラゴンダ・シューティングブレークに共通したアイキャッチで、現在でも通用するデザインに違いありません。
デザインという視点からいえば、BMW Z3クーペやミニ・クラブマンもルーフを後方に延長したスタイルから、シューティングブレークと呼ぶこともあるようです。
こうして並べてみると、やっぱり2ドアワゴンというのは実用性よりもスタイルを優先していると気づかされます。とにもかくにも、最初に植え付けられた貴族的なイメージが効いていることだって否めません。「実用性だと? 馬のエサにもならんよ」などと強がっているのが目に浮かぶようです(笑)。
ところが、本来の2ドアワゴンでない5ドアワゴンにもシューティングブレークと紐づけさせたモデルも登場しています。それって普通のワゴンじゃね、と突っ込みたくなるのがポルシェ・パナメーラやジャガーSタイプ・エステートといったセレブ向けワゴン。シューティングブレークをイメージさせる販売戦略とはいえ、実用性を犠牲にしてでもスタイルを作り上げてきた2ドアワゴンたちに失礼じゃないかと(笑)。
もっとも、クルマ業界こそ世知辛いものですから、見当違いなネーミングであっても、売れるに越したことはないのでしょう。
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