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10分チャージで20km走行可能!EV向けの出張充電サービス「電気の宅配便」がつくばで実証実験を実施

掲載 更新 13
10分チャージで20km走行可能!EV向けの出張充電サービス「電気の宅配便」がつくばで実証実験を実施

EV充電器や大容量蓄電池などの事業を展開するBell Energy株式会社(以降、ベルエナジー)が、ポータブル急速充電器を使った電気自動車(以降、EV)向け出張充電サービス「電気の宅配便」を発表した。2024年度内の事業化を目指し、茨城県つくば市内で2023年9月19日より実証実験がスタートしたところだ。

ベルエナジーは2003年の設立以来、太陽光発電用パネルの基板設計や部材の調達などを手がけてきた技術商社。約6年前から海外メーカーと業務提携し、街中のEV充電スポットに設置されるような急速充電器や、クレジットカード払いに対応した決済端末付き普通充電器など、海外製品を日本仕様にローカライズした製品が好評を博している。そんななか、EVユーザーが充電スポットに出向くのではなく、急速充電器を搭載した専用車がクルマ側に出向いて充電するという画期的なサービスに着手したのだ。

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充電スポット以外の場所でもEVの急速充電が可能に

EV向け急速充電器「Roadie V2」

「電気の宅配便」について深掘りする前に、EV充電がどんなものかおさらいしておこう。スマホの充電と同じように、EV充電にも「普通充電」と「急速充電」があり、家庭用のAC200V・100Vのコンセントで行われる普通充電だと、車を満充電にするのに長時間かかってしまう。一方、街中のディーラーや商業施設などの充電スポットにある急速充電器であれば、商用電力を引っぱってくることで高出力を実現し、短時間でEV充電を行うことができる。

では、普通自動車の〝ガス欠〟ならぬ、EVの〝電欠〟を想定するとどうだろうか。ホームセンターなどで手に入るアウトドア用ポータブルバッテリーを使えば出先でEV充電することも可能だが、蓄電池容量が小さく、こちらも普通充電のため長時間かけてもわずかしか充電されない。

ここで一筋の光明となるのが、「電気の宅配便」の実証実験に使われる日本初のモジュール式ポータブルEV急速充電器「Roadie V2(ローディー)」というわけだ。「Roadie V2」は「どこでも急速充電」をコンセプトに、外部入力設備不要、完全スタンドアローン設計のEV急速充電器となっている。すでに法人からの引き合いは多く、日本国内での販売・受注台数は100ユニットを突破したそうだ。

「『Roadie V2』を使うと、10分の充電で約20kmの追加走行が可能です。これはレスキューの現場において大きな強みだと考えていまして、直近ではロードサービス会社のJAF様に納品した実績があります。電源の取りづらい場所でも急速充電ができるとあって、自動車メーカーの研究現場などでも活用されています」(Bell Energy株式会社 モビリティ事業部 川井宏郎氏、以下同)

保険会社による電欠対応の実証実験も愛知県でスタート

愛知県の「BEVユーザー向け充電サービス」実証実験イメージ(PRタイムスより引用)

9月11日より、愛知県内ではあいおいニッセイ同和損保、MS&ADグランアシスタンス、タケヒロレッカー、ベルエナジーの4社共同で「Roadie V2」を使った実証実験もはじまっている。愛知県での実証実験では、トヨタ・レクサスBEV(※)を対象とした「電欠発生時の現場駆け付けサービス」と「予約充電サービス」を行っているという。
※Battery Electric Vehicleの略で、ガソリンを使わず電気のみをエネルギー源とするEVのこと。

「電気自動車が電欠した場合、現在はユーザーが保険会社に連絡すると、ロードサービス会社が現場に駆けつけ、最寄りの充電スポットまでレッカー移動させるといった対応が取られています。愛知県の実証実験は、保険会社のサービスとしての電欠時の現場充電がどれぐらい需要があるのか、実運用も含めて検討するためのものといえます」

EV・充電環境関連のメディアを運営するENECHANGE株式会社が行った「EVやEV充電の利用に関するアンケート」によれば、EVオーナーの75%以上は自宅にEV充電器があるという。それだけ普及しているのであれば、いくら充電に時間がかかるとはいえ、夜に充電を始めれば朝には満充電になる。また、遠出するにしても適宜充電スポットに寄れば済む話であって、そうそう電欠することはないのでは?と思ってしまうが…。

「EVの場合、充電器のスペックによって充電される量が違うので、単純に東京から大阪まで行くのに、『途中名古屋で1回充電すればいい』と思って行ったとしても、充電スポットにある充電器が古く、高出力充電器でない場合、充電効率が悪く、想定していたより充電回数が増えてしまうことがあるんですよ」

初期のEVはバッテリー容量が小さかったため、EV充電器のスペックが低くても問題はなかった。しかし、近年大容量バッテリーや大型のEVが増えるにつれ、EVのスペックに旧型の充電器が追いつかなくなっている。そのような充電器に当たった場合は、充電にかかる時間も長くなってしまう。

一方で、まだ圧倒的に旧型のEV充電器の方が多いものの、新しい急速充電器への入れ替えも徐々に進んでいる。そんな過渡期ゆえの弊害もあるという。

「古いEV充電器がいまどんどん撤去されているため、地図アプリを頼りに充電スポットに行ってみたら、情報が更新されていなくて充電できなかった…なんてトラブルも耳にします。EV充電器の世代交代の時期に差しかかり、このような電欠は今後増えていくのではないでしょうか」

イベント時の貸出や、レンタカーショップのEVフリート管理も視野に

「Roadie V2」は、リチウムイオンの蓄電池を3.35kWh単位でユニット化し、ニーズに合わせて増設が可能。また、特定車両の必要がなく一般車両や軽自動車でも運送できる。蓄電池ユニット自体の充電は一般のAC100V電源が使えて、約4時間で満充電となる。蓄電池ユニットは一度に4台まで積み重ね可能で、EV急速充電器の標準規格「CHAdeMO(チャデモ)」の充電ユニットにより、出力最大20kWというパワフルさだ。

そのスペックと取り回しの良さから9月1日よりレンタル事業も開始されたが、具体的にはどのような層をターゲットとしているのか。

「『CHAdeMOユニット』は23.2kg~、蓄電池ユニットは1つ33.4kgあります。4ユニット載せたら100kgを超えて燃費に影響するため、一般ユーザーが自分のEVに載せて走行するといったことはあまり想定していません。それこそ、今後は各自動車メーカーから新しいEVがどんどん出てくるので、展示会などのイベントでのレンタル需要を狙っています」

「Roadie V2」の蓄電池は4ユニット分だと13.4kWh。日産リーフだとバッテー容量の大きいもので60 kWh、日産サクラで20 kWhとなっているため、これだけでEVを満充電にすることは難しく、あくまでも電欠向けに開発された製品である。それと同時に、より大容量の「Roadie V3」の開発も進めている。

「『Roadie V3』の蓄電池ユニットは合計70kWh、最大出力は62kWあるため、1時間の充電でEVを満タンにすることも可能です。『電気の宅配便』のローンチでは、電欠以外の幅広いニーズに対応できるように『Roadie V3』を使いたいと考えています」

さらにBtoBにおいては、レンタカーショップも顧客になり得ると睨んでいるという。アメリカのハーツレンタカーを例に挙げると、テスラを数百台規模で導入している店舗があり、自店の充電設備だけでは充電が追いつかず、近隣のテスラ専用のスーパーチャージャーへとスタッフが運転してピストン移動させていた。そこで『Roadie』を開発したスパークチャージ社が、ハーツレンタカーと契約を結びEV車両の充電を管理しているそうだ。

「EVの台数が多くなると、毎回人が充電するとなると大変だし、充電設備も足りないはず。都度スポットで依頼を受けるというより、包括的な契約を結ぶことで、夜に『電気の宅配便』がレンタカーショップに出張し何%まで充電する、といったサービスにつなげられたらおもしろいんじゃないかと思っています」

「電気の宅配便」でEVユーザーのニーズを掘り起こす

「電気の宅配便」のEV急速充電器搭載車両

つくば市での実証実験では、事前予約してくれたユーザーにヒアリングを行い、電欠以外のニーズを探っていくという。

「電欠需要を除くと、EV出張充電は、一般ユーザーとしては結構ニッチなマーケットのサービスだと思っています。今のところ事業化するにはコストが高くついてしまいますが、たとえば外出前、自分が家で準備している間に1時間の充電で満タンにしてほしい、そこに価値を感じてくれるユーザーもいるかもしれません。料金は都度払いがいいのか、サブスクがいいのかなども含めて、ユーザーの声をたくさん集めたいので、ぜひ積極的にサービスを利用していただきですね」

プロジェクトマネージャーの川井氏に「電気の宅配便」の今後の展望について聞いた。

「我々の『ローディー』に限らず、よりよいポータブルのEV急速充電器が出てきたら、そういったものも巻き込みながら、『電気の宅配便』というブランドを広めていきたいと考えています。そして、ユーザーが感じているEVの不便さを少しでも解消していきたいです」

今回の実証実験は茨城県つくば市内にエリアを限定しているが、今後はその結果を踏まえて、一緒に取り組んでくれるパートナー企業を募集しながら東京など他の地域でも実証実験を行っていきたいとのこと。

ちなみに茨城県つくば市での実証実験は、11月30日(木)まで。EVユーザーの生活を変えるかもしれないサービス・製品を体験できるチャンスなので、自家用車で近隣を訪れる機会のある人はぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

「電気の宅配便」実証実験の概要

・実証期間
2023年9月19日(火)から11月30日(木)

・実証実験の対象車両
自身が所有している、国内で販売されている電気自動車(EV)が対象。(一部、充電に対応していない車両がございます。事前にお問い合わせください。)本実証では、プラグインハイブリッド(PHEV)は対象外です。
※実証実験参加については、利用規約に同意頂き、アンケートのご協力をお願いします。

・実証実験駆けつけ対象エリア
茨城県つくば市(全域)※ご自宅等がつくば市外である場合、ご自宅等での本サービス利用はできませんが、つくば市内に駐車された場合は本サービス利用可能となります。

・サービス内容
今回の実証実験では、Roadie V2の蓄電池4ユニット分を車両に充電いたします。サービス提供時間は約60分です。※充電を開始する際は、立ち会いが必要です。

・予約方法
ベルエナジーのホームページにある、電気の宅配便利用予約サイトより予約。

取材・文/清談社・松嶋 千春

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みんなのコメント

13件
  • ncx********
    EVセールスの鈍化は目に見えていて、
    さらに全固体が出回れば必要なくなるような事業
    商売って怖いですね
  • mea********
    電欠したときの次の充電スポットまでの分ならそれでいい。
    JAFもガス欠したら入れてくれるのガソリンスタンド までの分だし。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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